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七泊八日
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絵は椿。大きいのから小さいのまで細かく描かれている。
「これに似たのでいい。二日でできんか?」
「29日が誕生日なの?」
「そうなんじゃよ。忘れると口も聞いてもらえんのじゃ……」
「お婆ちゃん怖い……」
「何とかならんか?」
紙を見て、小さい筆を借りて絵を書いていく。端の方に大きな椿。その横に葉などを書いて片側が綺麗に見えるようにと絵を書きみせる。
「このくらいの大きさなら。でも夜は僕、薬飲んだら寝ちゃうから、お昼にしないと。見られないようにしたいし……。神社で彫ってても良い?」
「寒くはないか?」
「うん、雨風来ない場所見つけたから」
「じゃあ頼んだぞ!で、雪翔の誕生日はいつじゃ?」
「僕一月十日だよ」
「ほう。ならば、お礼に欲しいものを買ってあげよう。何かいいか決めておきなさい」
「ありがとう」
道具を借りて早速取り掛かり、下絵を書いた所で晩御飯に呼ばれる。
「あれ? 幸さんは?」
「今日は集会所にお祭りの準備に行ってるのよ。みんな交代で行くんだけどねぇ、そろそろ私から幸さんに交代しようと思ってて……」
「お婆ちゃんどこか悪いの?」
「元気よ?でも、お嫁さんに任せていかないとねぇ」
「そうなんだ。お祭りってどんなことするの?お店とか出る?」
「出ますよ?人間界とよく似てますから楽しめると思います。私達は朝餉の後家を出ますが、三十日の夜にはまたこちらに来ますから待っててください。困ったことがあれば、みんなに頼るといいです」
「わかった。お土産かってきてね?」
「たくさん買ってきます」
晩ご飯は買ってきたフライパンで作った揚のごま油いためと、豆腐ステーキ。もやしの漬物に大根と里芋の煮物。
「あのお鍋凄いのよ?お婆ちゃんでもすぐに使えたわ。蓋があるとやはり早く出来るわねぇ」
「みんな興味津々でしたものね。明日はカレーに挑戦ですって」
「え?みんなあのルー使えるの?」
「写真がついてるから大丈夫だと思うけど、計量カップの使い方は知らないかも……」
明日の夕方は台所に行こうと心に決め、ご飯を食べてから部屋に戻り少しずつ彫りだす。
「キューッ」
「翡翠どうしたの?」
「キューッ!キューッ!」
服を噛んでこっちに来いと引っ張る。
「しーちゃん……」
「夜なので寝るって言ってるのでは?」
「うーん、もう少しだけ彫りたいんだ。周りだけならあと少しで終わるから、お利口さんにしてて?」
「キュッ!」
「金、銀。遊んであげてよ」
「いいよー。ひーちゃん、ほら……お人形だよ?」
「人形?」
「僕達が作ったの。紙に息をね、フーってするんだよ?」
銀の説明ではわからず、金としーちゃんの話を纏めると、式神の一種のような感じのことかなと思い、それよりも、ひーちゃんに反応してしまった。
「ひーちゃんて、翡翠のことだよね?」
「そうだよ!中ではそう呼んでるよ?」
「ひーちゃん、僕わかる?」
そう聞くと足にまとわりついてくるので、分かるんだと思い、残りを彫ってからわからないように片付けて、柔らかい布に包む。
「これに似たのでいい。二日でできんか?」
「29日が誕生日なの?」
「そうなんじゃよ。忘れると口も聞いてもらえんのじゃ……」
「お婆ちゃん怖い……」
「何とかならんか?」
紙を見て、小さい筆を借りて絵を書いていく。端の方に大きな椿。その横に葉などを書いて片側が綺麗に見えるようにと絵を書きみせる。
「このくらいの大きさなら。でも夜は僕、薬飲んだら寝ちゃうから、お昼にしないと。見られないようにしたいし……。神社で彫ってても良い?」
「寒くはないか?」
「うん、雨風来ない場所見つけたから」
「じゃあ頼んだぞ!で、雪翔の誕生日はいつじゃ?」
「僕一月十日だよ」
「ほう。ならば、お礼に欲しいものを買ってあげよう。何かいいか決めておきなさい」
「ありがとう」
道具を借りて早速取り掛かり、下絵を書いた所で晩御飯に呼ばれる。
「あれ? 幸さんは?」
「今日は集会所にお祭りの準備に行ってるのよ。みんな交代で行くんだけどねぇ、そろそろ私から幸さんに交代しようと思ってて……」
「お婆ちゃんどこか悪いの?」
「元気よ?でも、お嫁さんに任せていかないとねぇ」
「そうなんだ。お祭りってどんなことするの?お店とか出る?」
「出ますよ?人間界とよく似てますから楽しめると思います。私達は朝餉の後家を出ますが、三十日の夜にはまたこちらに来ますから待っててください。困ったことがあれば、みんなに頼るといいです」
「わかった。お土産かってきてね?」
「たくさん買ってきます」
晩ご飯は買ってきたフライパンで作った揚のごま油いためと、豆腐ステーキ。もやしの漬物に大根と里芋の煮物。
「あのお鍋凄いのよ?お婆ちゃんでもすぐに使えたわ。蓋があるとやはり早く出来るわねぇ」
「みんな興味津々でしたものね。明日はカレーに挑戦ですって」
「え?みんなあのルー使えるの?」
「写真がついてるから大丈夫だと思うけど、計量カップの使い方は知らないかも……」
明日の夕方は台所に行こうと心に決め、ご飯を食べてから部屋に戻り少しずつ彫りだす。
「キューッ」
「翡翠どうしたの?」
「キューッ!キューッ!」
服を噛んでこっちに来いと引っ張る。
「しーちゃん……」
「夜なので寝るって言ってるのでは?」
「うーん、もう少しだけ彫りたいんだ。周りだけならあと少しで終わるから、お利口さんにしてて?」
「キュッ!」
「金、銀。遊んであげてよ」
「いいよー。ひーちゃん、ほら……お人形だよ?」
「人形?」
「僕達が作ったの。紙に息をね、フーってするんだよ?」
銀の説明ではわからず、金としーちゃんの話を纏めると、式神の一種のような感じのことかなと思い、それよりも、ひーちゃんに反応してしまった。
「ひーちゃんて、翡翠のことだよね?」
「そうだよ!中ではそう呼んでるよ?」
「ひーちゃん、僕わかる?」
そう聞くと足にまとわりついてくるので、分かるんだと思い、残りを彫ってからわからないように片付けて、柔らかい布に包む。
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