下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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七泊八日

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色々と教えてもらいながら話していたら、京弥が戻ってきたので、お土産を渡す。

「これは、雪翔が作ったんですか?」

「うん。木は棟梁に薄くして貰って彫ったんだ」

「鳥ですね。燕……かな?」

「そう。図鑑見たんだけど、簡単なのしかまだ難しくって出来なくて」

「大切にします」

渡した木札は栞として使えるので、本に挟めるほどの薄さにして貰って彫るのはかなり時間がかかった。

「幸さんにはこれ!」

「あら、可愛らしい!」

髪飾りも手作りで、着物にも合うようにと思って作ったが、喜んでくれてよかったと横を見ると、冬弥が「これで夜ふかしでしたか……」とぼそっと言うのを聞いて、バレた!と下を向く。

撫で撫で撫で撫で……

「え?」

「使用人から兄の嫁にまでみんなのことを気遣える雪翔はいい子です」

すると自分もと翡翠が頭を乗せてきたので撫でると、金と銀はお爺ちゃんお婆ちゃん達みんなを回って撫でてもらっている。

「僕の狐たちはみんな絶対に禿げる!」

「そうだわ!お母さん、うちの竈でどうやってお鍋とか使うつもり?」

「あら、それもそうねぇ。小さいのを作ってもらうわ。こちらにあるのも見せてもらったし」

「それまで使っちゃダメよ?」

「栞さん、それなんですけどねぇ……ガスコンロについていた上の……なんて言いましたっけあれ。忘れましたが鍋置くところのやつですよ。あれ持ってきました」

「それだけだと意味が無いかと……」

「うちの小さい竈の上にちょうど良かったので、それを付ければ鍋おけます。火加減は小さめにしてもらわないといけませんけど」

「どこからそれ持ってきたんですか?」

「前の下宿からです。鍋見てる時に思いついて影に取りに行かせました。予備はまた送ります」

「これで料理も楽になるといいね」

「そうですね。あちらの調味料かなり買い込んでましたから、そのうち毎回送るように言われるでしょうねぇ」

みんなが揃って楽しかったので夜更かししたかったが、薬を飲んで布団に入るとあっという間に眠ってしまい、起きて行くともう栞の両親は帰宅してしまっていた。いつでも会いに行けばいいと言われ、冬弥と街まで行きバッテリーをお願いしに行く。

「この後どこか行くの?」

「行きたいところはあります?」

「特には。この前連れてきてもらったし」

「そうですねぇ……では、浮遊城の家でも見に行きますか?」

「いいの?」

「構いませんよ。城に居る天狐には勝手にすると言ってありますから」

「怒られない?」

「怒るでしょうが、私の家ですからねぇ。怒られる筋合いはないんですよ……」

路地から力を使って城まで行き、七つあるお堂のうちの一つに入ると、この狭いところのどこから出てきたんだろうと思うような長い階段が出てきた。

「押しますから捕まっててください」

車椅子が階段に触れた時つい目を閉じてしまったが、ふわっと風が出てきて外に出たとわかり目を開ける。
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