15 / 99
新たなる出会い
.
しおりを挟む
「こればかりは仕方がない。小狐でしかも赤ん坊だから、話せんしな……」
冬弥の力で熱はすぐに引いたが、まだグッタリとしているので、桜狐が癒しの力を使って面倒見てくれることになった。
「今日は儂が預かろう。桜狐もな」
「でも……」
「何、儂も小狐は何匹か育てておる。雪翔はゆっくり寝なさい」
布団をかけられ、二人が出ていく時に「キュゥ」と聞こえ、その声が頭から離れずなかなか寝付けなかった。
ウトウトとして朝を迎え、六時になってすぐにリビングへと行く。
ソファに栞の父が座り、膝の上で寝ている翡翠を見つけ、「翡翠」と側による。
「お、おはよう。翡翠どうなったの?」
「静かにせんか。やっと落ち着いて寝たところじゃ。もう大丈夫だろう。朝ごはんもしっかり食べておったぞ?」
「ミルクじゃなくて?」
「歯が生えてきておったから、パンを牛乳で柔らかくしてやったら、ぱくぱく食べておった」
「栄養不足だったのかな?そんなことも気づかなかった」
「何でも初めての時はみんな同じ、気にするな。それよりも顔を洗ってきなさい」
「はい」
顔を洗って戻ると、栞と両祖母が朝ごはんを作っており、冬弥も下宿ではなくダイニングに座っていた。
「下宿は?」
「行ったんですけどね、堀内さんがみんな二日酔いだから今日は海都と二人になるから適当に食べると。なので夕餉まではお休みです」
「みんな飲んでたもんね」
「そうですねぇ。意外とみんな那智に懐いてるのが不思議ですけど」
「ずっと、あのふたりは那智さんが居酒屋でお酒を飲むような人ではないって思ってたみたいだし、仕事もホストと勘違いしてたから。でも、おでんには驚いた」
「あぁ、本人は隠してますけど、那智にとっては思い出深い食べ物なんですよ。美味しかったですねぇ。出汁が効いていて」
「うん。あの、翡翠はまだ桜狐ちゃんに見てもらわないといけない?」
「もういいですかねぇ?離しておきます。それと父達から話があるようですよ?」
何だろう?と思いながら見ると、みんなニコニコ笑っていたので悪い話ではないだろうと、ご飯を運ぶのを手伝う。
この家に来てからはお膳ではなく、お盆で出てくるようになった。
洋風の作りだからだと思うが、そんなに違和感がない。
だし巻き玉子にほうれん草のおひたし、焼き鮭と豆腐とわかめの味噌汁。今日は玉子に大根おろしが付いていた。
「あれ?いつもと玉子の味が違う。味噌汁も!」
「雪翔が教えてくれた玉子焼き、あちらでもみんなするようになってねぇ、私も練習したのよ?」
「味噌汁は母が。私はご飯を炊いただけ……大根もおろしたけど」
「そうなんだ」
美味しいとお代わりをして全部食べて翡翠の所に行くと、既に紫狐が横に座っていた。
「安心しましたー。やはり冬弥様は凄いです!」
「うん、よく寝てるからこのままにしておこう」
「でも朝の森に行くのに連れていかないとまた泣いてしまいますよ?」
「じゃあ、もう中に入れちゃおうか。金銀お願い」
二人にお願いをして、みんなのところに戻ると、デパートにみんなで行くと言う。
「お爺ちゃん達も?」
「こちらのものが見たくね、特に着物屋を」
「儂も前に見たのと違うのか見ておきたいし、婆さん達の荷物持ちじゃ」
「私と栞さんもついていきます。フライパンなど買いたいそうなので。雪翔はどうします?」
「僕も行く!」
冬弥の力で熱はすぐに引いたが、まだグッタリとしているので、桜狐が癒しの力を使って面倒見てくれることになった。
「今日は儂が預かろう。桜狐もな」
「でも……」
「何、儂も小狐は何匹か育てておる。雪翔はゆっくり寝なさい」
布団をかけられ、二人が出ていく時に「キュゥ」と聞こえ、その声が頭から離れずなかなか寝付けなかった。
ウトウトとして朝を迎え、六時になってすぐにリビングへと行く。
ソファに栞の父が座り、膝の上で寝ている翡翠を見つけ、「翡翠」と側による。
「お、おはよう。翡翠どうなったの?」
「静かにせんか。やっと落ち着いて寝たところじゃ。もう大丈夫だろう。朝ごはんもしっかり食べておったぞ?」
「ミルクじゃなくて?」
「歯が生えてきておったから、パンを牛乳で柔らかくしてやったら、ぱくぱく食べておった」
「栄養不足だったのかな?そんなことも気づかなかった」
「何でも初めての時はみんな同じ、気にするな。それよりも顔を洗ってきなさい」
「はい」
顔を洗って戻ると、栞と両祖母が朝ごはんを作っており、冬弥も下宿ではなくダイニングに座っていた。
「下宿は?」
「行ったんですけどね、堀内さんがみんな二日酔いだから今日は海都と二人になるから適当に食べると。なので夕餉まではお休みです」
「みんな飲んでたもんね」
「そうですねぇ。意外とみんな那智に懐いてるのが不思議ですけど」
「ずっと、あのふたりは那智さんが居酒屋でお酒を飲むような人ではないって思ってたみたいだし、仕事もホストと勘違いしてたから。でも、おでんには驚いた」
「あぁ、本人は隠してますけど、那智にとっては思い出深い食べ物なんですよ。美味しかったですねぇ。出汁が効いていて」
「うん。あの、翡翠はまだ桜狐ちゃんに見てもらわないといけない?」
「もういいですかねぇ?離しておきます。それと父達から話があるようですよ?」
何だろう?と思いながら見ると、みんなニコニコ笑っていたので悪い話ではないだろうと、ご飯を運ぶのを手伝う。
この家に来てからはお膳ではなく、お盆で出てくるようになった。
洋風の作りだからだと思うが、そんなに違和感がない。
だし巻き玉子にほうれん草のおひたし、焼き鮭と豆腐とわかめの味噌汁。今日は玉子に大根おろしが付いていた。
「あれ?いつもと玉子の味が違う。味噌汁も!」
「雪翔が教えてくれた玉子焼き、あちらでもみんなするようになってねぇ、私も練習したのよ?」
「味噌汁は母が。私はご飯を炊いただけ……大根もおろしたけど」
「そうなんだ」
美味しいとお代わりをして全部食べて翡翠の所に行くと、既に紫狐が横に座っていた。
「安心しましたー。やはり冬弥様は凄いです!」
「うん、よく寝てるからこのままにしておこう」
「でも朝の森に行くのに連れていかないとまた泣いてしまいますよ?」
「じゃあ、もう中に入れちゃおうか。金銀お願い」
二人にお願いをして、みんなのところに戻ると、デパートにみんなで行くと言う。
「お爺ちゃん達も?」
「こちらのものが見たくね、特に着物屋を」
「儂も前に見たのと違うのか見ておきたいし、婆さん達の荷物持ちじゃ」
「私と栞さんもついていきます。フライパンなど買いたいそうなので。雪翔はどうします?」
「僕も行く!」
1
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
生贄の花嫁~鬼の総領様と身代わり婚~
硝子町玻璃
キャラ文芸
旧題:化け猫姉妹の身代わり婚
多くの人々があやかしの血を引く現代。
猫又族の東條家の長女である霞は、妹の雅とともに平穏な日々を送っていた。
けれどある日、雅に縁談が舞い込む。
お相手は鬼族を統べる鬼灯家の次期当主である鬼灯蓮。
絶対的権力を持つ鬼灯家に逆らうことが出来ず、両親は了承。雅も縁談を受け入れることにしたが……
「私が雅の代わりに鬼灯家に行く。私がお嫁に行くよ!」
妹を守るために自分が鬼灯家に嫁ぐと決心した霞。
しかしそんな彼女を待っていたのは、絶世の美青年だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
下宿屋 東風荘 4
浅井 ことは
キャラ文芸
下宿屋 東風荘4
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
大きくなった下宿に総勢20人の高校生と大学生が入ることになり、それを手伝いながら夜間の学校に通うようになった雪翔。
天狐の義父に社狐の継母、叔父の社狐の那智に祖父母の溺愛を受け、どんどん甘やかされていくがついに反抗期____!?
ほのぼの美味しいファンタジー。
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
表紙・挿絵:深月くるみ様
イラストの無断転用は固くお断りさせて頂いております。
☆マークの話は挿絵入りです。
廻り捲りし戀華の暦
日蔭 スミレ
恋愛
妖気皆無、妖に至る輪廻の記憶も皆無。おまけにその性格と言ったら愚図としか言いようもなく「狐」の癖に「狐らしさ」もない。それ故の名は間を抜いてキネ。そんな妖狐の少女、キネは『誰かは分からないけれど会いたくて仕方ない人』がいた。
自分の過去を繫ぐもの金細工の藤の簪のみ。だが、それを紛失してしまった事により、彼女は『会いたかった人』との邂逅を果たす。
それは非ず者の自分と違う生き物……人の青年だった。
嗜虐癖ドS陰陽師×愚図な狐 切なめな和ファンタジーです。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あやかし婚活姫と霊感従者の恋結び
ちづ
キャラ文芸
あやかしと駆け落ちしたいお姫様と、そんなお姫様に片想いしている従者との平安風ホラーラブコメ。
短編ですのでもしよろしければ。
内大臣家の末娘の結姫は、父親に望まない輿入れを迫られていた。嫌気が差したある日、幼馴染の従者に、幽世で駆け落ちしてくれるあやかしを探してきて欲しいと頼み込む。けれど、従者はずっとそんな姫君に片想いをしていて──
平安和風ファンタジー主従ものです。
半妖のいもうと
蒼真まこ
キャラ文芸
☆第五回キャラ文芸大賞『家族賞』受賞しました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございました。
初めて会った幼い妹は、どう見ても人間ではありませんでした……。
中学生の時に母を亡くした女子高生の杏菜は、心にぽっかりと穴が空いたまま父親の山彦とふたりで暮していた。しかしある日、父親が小さな女の子を連れてくる。
「実はその、この子は杏菜の妹なんだ」
「よ、よろしくおねがい、しましゅ……」
おびえた目をした幼女は、半分血が繋がった杏菜の妹だという。妹の頭には銀色の角が二本、口元には小さな牙がある。どう見ても、人間ではない。小さな妹の母親はあやかしだったのだ。「娘をどうか頼みます」という遺言を残し、この世から消えてしまったという。突然あらわれた半妖の妹にとまどいながら、やむなく面倒をみることになった杏菜。しかし自分を姉と慕う幼い妹の存在に、少しずつ心が安らぎ、満たされていくのを感じるのだった。これはちょっと複雑な事情を抱えた家族の、心温まる絆と愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる