下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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新たなる出会い

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「ごめんね、しーちゃんも一緒にテレビ見よう。頑張ってくれたから、おやつのプリンあげるね」

「ほんとう?」

「うん、今話題のプリンだよ?」

「紫狐あのプリン大好きです!テレビで見た踊りもできます」

そう言って、『ぷるぷるプリンはみんなが大好き』とCMの踊りを踊りながらリビングに向かっている。
動物全対象のプリンは、可愛い犬が前足でつんつんと触る度にぷるぷると揺れる可愛いCMで、巷ではかなりの人気で売り切れ続出と聞いたことがある。

リビングで栞さんにあげてもいいかと聞いて出してもらい、金と銀は小さいから半分こで食べて大人しくしてもらう。

「賢司さんに借りたやつだから、触っちゃダメだからね?」

「はーい!」

テレビをつけて、先に映画の方を見る。

主役はアイドル男性。小説も書いている多彩な人で朝のニュース番組でコーナーも持ってる人だった。

着物も烏帽子も似合っていて、カッコイイなぁとおもったが、脚色はしてあるだろうが、ある程度の情報は得られると思って始まるのを待つ。

「何見るの?」と栞がジュースを持ってきてくれ、賢司に借りたと映画のケースを見せる。

「あれ?この人ってよくテレビで見る人?」

「うん、趣味は料理とか言ってたよ?」

「私この人のコーナー番組好きなの。下宿に来てから見るようになって好きになっちゃったの。料理のアレンジが簡単で、メモしてるのよ」

「そうだったの?」

「冬弥様がいなかった時に、みんなの食事に困ってて、それでたまたま見たら簡単だったから真似して作ったりしてたの」

「そうなんだ。あ!始まる……」

映画は演出にCGが使われていて、見ごたえがあったが、式神や九字を切ったりして妖を倒していく話で、芦屋道満との対決もあり面白かった。

途中、清明の生まれの話なども出たが、それは書物で読めたところなので話はわかる。

幼少時に木で練った陰陽の式を作り使役して、武器にして戦う姿はとても格好良く、思わず見とれてしまう程だった。

その後は雨を降らせるのに各地を周り瓜を流したり、星を読んで占ったりといくつか見ていて、陰陽師って占い師なのかな?と思ってしまったが、戦いシーンはやはり脚色なのだろうと、最後まで見て金と銀を見ると、目をキラキラさせていた。

「面白かったね」

「お札が出なかったよ?」
「違うよ、書くんだよ?」
「袖の中に入れておくんだよ」
「そうだっけ?」

そう話しているので、昴によって取り戻された彼らの中の記憶の中には、そう言ったものがあるのだろう。

「さて、雪翔君ご飯食べて。今日は私もこっちにいたから、グラタンにしたの。本見て作ったから味はわからないけど、見た目は完璧よ?」

「うん」

グラタンにスープ、パンという珍しい内容の食事だったが、味も丁度よく美味しくて、また作って欲しいと言う。

「私達和食が多いでしょう?たまにはこういったものも食べたいんじゃないかなって思ったの」

「作るの大変だったでしょ?」

「見て」と本を見せられる。
10分クッキングと書かれた本には、いくつか付箋がついている。

「10分て書いてあるのに、30分かかっちゃった」

「焼く時間が入ってないのかな?」

「そうよね、でも、作れそうなのは付箋つけておいたから、何か食べたいものあったら言ってね?」

「うん、あれ?このハーブのチキン。前に冬弥さんがよく似たの作ってた。これ美味しいんだ」

「今度これにしましょうか。鶏肉安いといいんだけど」
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