下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
7 / 99
新たなる出会い

.

しおりを挟む
※※※※※

「最近雪翔は反抗期というやつですかねぇ」

「私たちが結婚したから気を使ってるのかも」

「ヤキモチとかですか?」

「分かりませんけど、いつもすぐ居なくなっちゃうんです」

「ちゃんと話をしないといけませんねぇ」

「はい」

「温泉に誘ったんですよ……そしたら行かないって言いましてねぇ。その時も様子がおかしかったので気にはなってたんです」

「いつもなら行くって言いますよね?」

「ええ。前のことも引きずってると思いますから、ゆっくりとでいいと思うんですけど、気になりますよねぇ」

「しばらく様子みます?」

「そうします。元旦は一日社にいますけど、栞さんの社にも参拝には来るでしょう?」

「はい、なので私も1日社にいないと行けないんですけど、雪翔君が気になって」

「ですよねぇ。あの小狐はどうなりました?」

「雪翔君から話すって言ってましたよ?」

「そうですか」

※※※※※


「雪翔……」

「ん?……あ!」

「どうしました?お昼も食べてないでしょう?」とお握りを渡される。

「ごめんなさい。なんだかとても眠くて」

「あの小狐の事聞きましたよ?名前はなんでしたっけ?」

「翡翠」

「いい名前ですねぇ。初めての女の子だから、金と銀もお兄さんですね。喜んでいたでしょう?」

「面倒みるって……」

「私たち狐の世界では階級があります。簡単に言うと上中下。大まかに分けるとですけど。私や栞さんは上に当たります。上の者は生まれてすぐ一匹~二匹狐を乳母がわりに付けられます。その後だんだんと仲間が増えていって、私は今九匹の影を持っています」

「どこかで見つけるの?」

「殆どそうです。紫狐が三番目でした。あの時は社狐になるんだと家を出てかなり旅をしてましてね、その時に翡翠と同じくらいでしょうかねぇ?雨の日に泣いているのを見つけたんです。藤の花が綺麗で紫の名が浮かんだので紫狐と付けました。後は漆と琥珀が面倒見てくれましたが、泣き虫は今も相変わらずですねぇ」

「し、紫狐はもうあまり泣きません!」

「泣いてるでしょう?紫狐はそのままでいいんですよ?」

「じゃあ、翡翠も金と銀が親代わり?」

「彼らもまだ小さいので全部は無理でしょう。遊びたい盛りなので」

「じゃあ、普段はどうするの?」

「時間を決めるんです」

「時間?」

「雪翔がリハビリやご飯、お手伝いなどの時は二匹に見てもらう。紫狐もいますし。それ以外でいつも金と銀が遊ぶ時間には雪翔が面倒を見る。こんな感じですかねぇ」

「それなら出来るかも」

「本当は雪翔から話してくれるのを待つつもりでしたけど、やはり私たちの結婚のことで……」

「違うよ?二人が親になってくれて、お爺ちゃんやお婆ちゃんが出来てとても嬉しいよ?でも、なんだか一人ぼっちになった気にもなっちゃって……」

「気が付きませんでした……もっと話してください。何でもですよ?でないと、何もわからないじゃないですか」

「うん……温泉は、二人で行ったらいいのになって思ったんだ。じゃないと、新婚旅行とか行けそうにないし、お正月はお社に行くって言ってたから僕留守番でしょ?だから、一人になるのがなんだか嫌だったんだ。でも、幸せになって欲しくて。旅行は行ける時に行かないと二人で出掛けるなんて出来ないと思ったんだ」

「それならそうと言ってくれれば……私も栞さんも、雪翔を置いてどこにも行きません。我々は約束を大事にします。温泉も私と二人が良ければそうしようと思ってましたよ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

後宮の裏絵師〜しんねりの美術師〜

逢汲彼方
キャラ文芸
【女絵師×理系官吏が、後宮に隠された謎を解く!】  姫棋(キキ)は、小さな頃から絵師になることを夢みてきた。彼女は絵さえ描けるなら、たとえ後宮だろうと地獄だろうとどこへだって行くし、友人も恋人もいらないと、ずっとそう思って生きてきた。  だが人生とは、まったくもって何が起こるか分からないものである。  夏后国の後宮へ来たことで、姫棋の運命は百八十度変わってしまったのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

千里香の護身符〜わたしの夫は土地神様〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
キャラ文芸
ある日、多田羅町から土地神が消えた。 天候不良、自然災害の度重なる発生により作物に影響が出始めた。人口の流出も止まらない。 日照不足は死活問題である。 賢木朱実《さかきあけみ》は神社を営む賢木柊二《さかきしゅうじ》の一人娘だ。幼い頃に母を病死で亡くした。母の遺志を継ぐように、町のためにと巫女として神社で働きながらこの土地の繁栄を願ってきた。 ときどき隣町の神社に舞を奉納するほど、朱実の舞は評判が良かった。 ある日、隣町の神事で舞を奉納したその帰り道。日暮れも迫ったその時刻に、ストーカーに襲われた。 命の危険を感じた朱実は思わず神様に助けを求める。 まさか本当に神様が現れて、その危機から救ってくれるなんて。そしてそのまま神様の住処でおもてなしを受けるなんて思いもしなかった。 長らく不在にしていた土地神が、多田羅町にやってきた。それが朱実を助けた泰然《たいぜん》と名乗る神であり、朱実に求婚をした超本人。 父と母のとの間に起きた事件。 神がいなくなった理由。 「誰か本当のことを教えて!」 神社の存続と五穀豊穣を願う物語。 ☆表紙は、なかむ楽様に依頼して描いていただきました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

処理中です...