下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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新たなる出会い

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「今からで間に合うのか?」

「これ知り合いのところだから、無理言ってワンランク上のこっち、光に当たると少し色が出る方にしてもらえるんだよ。今から頼んでぎりぎりかな」

みんなそれでいいと言い、すぐに電話で注文する。

「隆弘の知り合いなら、お前集金してくれよ。はい、三千円!」

「分かった。今手持ちある?」

海都も堀内さんもみんな出したので自分も出し、丁度一万五千円を隆弘に預かってもらい、賢司のバイトする居酒屋の話に移る。

「前に行こうって言ってたから疑わないと思うよ?」

「誰呼ぶの?」

「海都、俺たちだけだ!悲しいことにな……」

「ねえ、那智さん達呼んじゃダメかな?」

「お!いいねぇ。イケメン居酒屋に現る伝説!」

「賢司、俺達の見たかったのが見れるぞ!」

「堀内さんもそれでいい?」

「いいよ?それより飾り付けとかどうするんだい?」

「パーティ用の飾りがあるから、海都とやっておくよ」

「なら、僕は早めに行って花を隠してもらおうかな。その時に手伝うよ」

どんどんと話は決まっていき、後三日しかないと思い、今日の夜に夕飯で話そうと言うことになった。

「じゃあ、俺達バイトだから店長に話してくる。」

そう言って出ていったので、他のみんなは帰るのかと聞くと、寒いから帰ると言うので一緒に帰ることにした。

家が隣になったので、また夕飯になと言われて別れ、部屋に戻って小狐を見ると、目が開いていた。

「見えてる……のかな?」

「キューッ」

「あ、声もわかる?僕、雪翔だよ?」

「キューッ」

「話せないもんなぁ……ミルク飲む?」

ダンボールの中で暴れるので出してあげると、フラフラとした足取りだが、ちゃんと歩いている。

「しーちゃん、しーちゃん!歩いてるよ?」

「弱っていただけでしょうか?でもまだ、弱い気がするんですけど」

「金たち言葉わからないの?」

「わからない……泣いてるだけだから」

「そっか、わかったら教えてね」

パタパタと音がして、コンコンとノックされる。

「雪翔君帰ってるの?」

「う、うん」

地べたに座ったまま返事をすると、扉が開いて栞が入ってくる。

「あら、目が開いたのね!歩いた?」

「少し。でも、金たちも何言ってるか分からないって」

「心配なのはわかるけど、ちゃんと帰ったらただいまって言って?私たちが心配になっちゃう」

「ごめんなさい……気になって」

「いいのよ。この狐どうするの?もし、影に入れないなら、あちらの方に連れてってあげた方がいいって冬弥様が……」

「そうだよね。でも、違う種類の狐なんでしょ?」

「そうだけど……」

「普通はどうするの?金と銀は自分から来てくれたけど、この狐話せないし。勝手に入れて後で嫌って言われても……」

「方法はあるわよ?」

「え?」

「名前をつけてあげるの。それにこの子がいいと思ったら勝手に入ってくれるわ。多分、影に入れてた方が安定すると思うのよねってそれも冬弥様から……最近雪翔がおかしいって言ってしょんぼりしてたわよ?喧嘩でもしたの?」

「してないよ?」

「ならいいんだけど……」

「名前かぁ。女の子だし可愛い名前のがいいかな?金と銀は兄弟だったし、思いつきで……真っ白だから白でもいいけど犬みたいだし。名前ってどうやって付けてるの?」

「私も思いつきって感じだったわ。この子はこれ!って閃いたって感じかしら」

「翡翠……」

「ひすい?」

「うん、宝石とかの名前だけど、幸運とか奇跡とかの意味があったと思ったんだよ。翡翠、おいで」

手を出すと、ペロッと指先を舐めたので気に入ったのかな?と思い、そこからどうするかを聞く。

「金と銀に連れていってもらうのが早いわ」

「金、銀、お願い」

「分かった。面倒みる!」そう言って翡翠を影にすぅっと入れてしまった。

「ミルクとかあげなくて良いのかな?」

「その時は言ってくるわよ?うちの狐もお饅頭って出てくるもの」

「そうなんだ。じゃあ、この箱片付けないと」

「そうね、持っていくわ。冬弥様に報告してきたら?」

「後で話すよ」

「そう?」

それから、なんとかベッドにつかまって立ち上がり、お昼も食べずに眠ってしまった。
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