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アカリとフシギなタマゴ編
9色 マルの日常
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放課後、学校の廊下を幼馴染のトウマくんと歩いていると、背後から声をかけられ、歩みを止めて振り返ると、そこには昨日の農園着とは違い、学校の制服姿のリュイ先輩がこちらに歩みよってきた。
そして、その後ろ隣にスミレも一緒にいた。
「どうも、こんにちはリュイ先輩。 それにスミレも同じクラスでさっきまで一緒にいましたけど、こんにちは、相変わらず先輩の傍にいるんですね」
スミレに眼を向ける。
「あたりまえよ、センパイのいるところにワタシありよ」
スミレは何を今更という感じで溜め息混じりにいう。
「先輩、こんにちは」
「うん、こんにちは、アラン」
私の隣にいるこの橙色の髪の少年は、荒谷橙真くんといい、この町の商店街の中にある、私の実家の八百屋兼探偵事務所兼自宅の迎いにある、玩具屋が自宅で小さい頃から仲のいい幼馴染の友達です。
私は彼のことをトウマくんと呼んでいますが、皆からはアランと呼ばれています。
「先輩、私を探していたということはナニか分かったんですね?」
「さすがマル、話が早いね」
リュイ先輩は優しく微笑みながら続ける。
「まあ、わかったと云っても《ほんの少しだけ》何だけどね」
リュイ先輩は親指と人指し指で《ほんの少しだけ》隙間をつくる。すると、
「ここからはワタシが説明しよう」
リュイ先輩の背後からとても低くて渋い声が廊下に響き渡る。
「こ、このとてつもなく低くて渋いかっこいい声は!」
「おっ、来たみたいだね」
リュイ先輩は後ろを振り返り、私はその後ろを覗き込むとリュイ先輩の後ろから長い白衣を地面に引きずりながら、身長が120センチ程のまるで子犬の様に可愛らしい見た目の栗色の髪の子供が現れた。
「やあ、林檎くん、久しいね」
しかし、見た目とは裏腹にとても声がネットリと大人っぽくてどことなくエロい。
「久しぶりです。 マロン先輩、相変わらず可愛らしい姿からは想像が出来ないダンディな声ですね」
もう一度云いますが、見た目は子供の様に可愛らしいけど、声がとてもダンディなこの方は、私がとても尊敬しているマロン先輩こと、三栗正吉先輩です。 実はこの見た目で十六歳です。
先輩は、魔法学の天才と云われ、私達がどうして魔法卵ことマジックエッグで魔法が使えるのか、どういう仕組みなのかという長年沢山の研究者が解き明かせなかった謎を五歳の時に解明したという伝説を持つ超超超天才なんです。
「可愛いと云われるのはあまり好きではないが素直に受け取っておこう」
マロン先輩は軽く咳ばらいをし続ける。
「さて、早速だが本題に入るとしよう。 付いてきたまえ」
そういうと、マロン先輩は私達に背を向け歩きだし、私はその後に続こうとした。
「なになに、これからマロちゃんとミッカイ?」
私の斜め上辺りに空中であぐらをかき、物理的に浮いている、少し長めの黒髪が左右に跳ねている青年が現れた。
「相変わらず急に現われますねノワル」
「じゃあ、今度は徐々に出てくるとするよ」
「ノワル、そうゆうことじゃないと思うな」
この物理的に浮いている少年は、野和健くんといい私を含め大体の人がノワルと呼んでいます。
いつも空中をふわふわと浮いているのですが、別に幽霊とかではなく自主的に浮いていてその理由は《空中に浮いていると落ち着くから》らしいです。
「やあ、アラン、今日も幼馴染という特権でマルちゃんの隣を歩いていてずるいぞ~、なんかムラムラして、いつ背後からアランにスカイドロップキックを食らわしてマルちゃんをオソオウか迷っていたんだからね~」
「陽気に笑いながら恐ろしいことをいうね」
「どこからストーキングしていたんですか?」
私は冷静に聞くと、ノワルは陽気に笑いながら答える。
「ストーキングとは侵害だな~ボクは背後からマルちゃんを守るナイトだよ~」
「それをストーキングと云うのだと思われます」
「相変わらず、うっとうしいわ」
私達の会話を聞いていたスミレが怪訝そうにいう。
「やあ、ボクとおんなじストーキング仲間のムラサキちゃん」
「!! あ、アナタとおなじにし・な・い・で」
スミレはノワルを睨みつけながら云う。
「今、思いっきり認めましたね」
私のツッコミが聞こえなかったのか、スミレはノワルに突っかかる。
「大体、ワタシはア・ナ・タと違い、いつもセンパイの傍にいるわ。 例え、雨の日も風の日もトイレに行く時もセンパイから一ミリも離れないわ」
「さすがにトイレに行く時は離れてほしいな」
リュイ先輩は軽くツッコム。
「トイレの中までつきまとうなんて、さすがのボクでもひくな~ボクだったらトイレの外までだな~」
「対して変わらないじゃないですか」
「………コ・ロ・ス」
スミレは後ろの腰に掛けていた、長くて太い菫色の鍵を引き抜くとノワルに構えた。
「シ・ニ・ナ・サ・イ」
殺気に満ちた声で、昨日、私を殺ろうとしたあの黒い棒が出てきた。
ちなみに私はアレのことを『ドス黒い愛の槍』と呼んでいます。
そして、ラブラックアローをノワルにむけて一直線に飛ばした。
「おっと」
なんて云いながらも、ノワルはそれを空中で華麗に避けた。
「大人しくク・ラ・イ・ナ・サ・イ」
「やだよ~当たったらイタイんだもん」
スミレは攻撃の手を緩めることなく、ノワルを本気で仕留めに掛かり、ノワルは余裕と云わんばかりに陽気に笑いながら避けている。
「ス、スミレちゃん、落ち着いて」
「ヘ・タ・レは黙ってなさい」
「ヘ……ヘタレ……」
止めに入ったトウマくんですがスミレの言葉に見事に玉砕された。
「~~~~~~~~~~~~~~~!!」
スミレは言葉になっていない奇声を発しながら、暴走を続ける。
「スミレ、もうそろそろ落ち着こうか」
しばらく、様子を観ていたリュイ先輩が優しい声と口調で云う。
「はい、わかりました」
「!?」
リュイ先輩の言葉にスミレはあっさりと従い、ドス黒いオーラを沈めた。
その様子を観たトウマくんは唖然としていた。
「ま、落ち込むことはないですよ」
私はトウマくんの肩に掌を乗せる。
「りんごちゃん、そんな哀れなものを観るような眼でみないで……」
トウマくんは少し泣きそうな声で云う。
「……コホン、……あの、君たち……」
とてつもなく渋くて低い声、訳して『TSHK』が廊下に響き渡り、私達はあることを忘れていたことに気が付いた。
「君たちワタシのことを忘れていただろう……」
機嫌が悪くどちらかと云うと、拗ねた様な感じでマロン先輩が云う。
「そ、そんなことないですよー(棒) ね、トウマくん?」
「う、うん、丁度今から先輩を追いかけようとしてましたから。 ね、ノワル?」
「ボクはスッカリ忘れてたよ~」
「ノワル、コノヤロー!!」
私とトウマくんは同時に叫ぶ。
「後ろを振り返ったら誰もいないんだもん、それに気付くまでワタシ独り言を云ってる変な奴って絶対思われていたってことじゃん!」
「先輩、本当にごめんなさい。こちらでちょっとばかりトラブルがあったもので」
私はマロン先輩の身長位まで腰を屈めて顔の前で手を合わせて謝る。
「ふん、もういいもん、君に教えようと思ったこと、さっき独り言で教えたから、もう教えて挙げないもん」
先輩はTSHKでへそを曲げてしまった。
「そんな声でいわれてもただキモイだけよ」
「……うぐぅ!!」
スミレのとどめの一撃に先輩は矢で射抜かれた様に後ろにバタンと倒れてしまった。
「せ、せんぱーい!!」
「だ、大丈夫です。 私は先輩の駄々をこねた姿もとても可愛いいと思ってますから」
「ねえ、マルちゃん、ボクは? ボクは? カワイイ?」
「ノワル、ちょっと黙っててください」
ノワルは親指をグッと立ててお口をチャックする。
「先輩、どうか機嫌を直して下さい。 もし、機嫌を直してくれたらマロン先輩の大好物のモンブランをスミレが作ってくれますよ」
「! ……モンブラン」
マロン先輩の声が少し跳ね上がる。 よし、このまま上手く行きそうです。
「は?イヤよ、めんどくさい」
「! ……」
マロン先輩は肩を竦ませ、解りやすくショックを受ける。
「スミレ、そこを何とかお願いします」
私は頭の上で手を合わせてお願いする。
「なんで、ワタシがアナタのためにそんなことしないといけないの?」
スミレは自身の長い髪をかき分けながら、ドライアイスの様に冷たく返す。
「スミレ、そんなイジワルなこと言わないで作ってあげてくれないかな? ボクも例のことがちょっと気になるし」
「わかりました、センパイのために愛を込めて作ります」
さっきとは打って変わってスミレは承諾する。
「リュイ先輩のお願いは恐ろしい位に何でも聞きますね……」
「なんでも!?」
私の台詞にノワルが反応する。
「ということは、ボクが変身魔法でリュイちゃんに変装すればあんなことやこんなこともやってくれるってことだね~」
「もし、バレたら君の命は無いと思うよ……」
トウマくんは苦笑いでツッコム。
「何言ってるのよ、アナタ如きの変装なんて簡単に見抜けるわ。 ナニ? それとも、アナタがそれを実行する前に息の根を止めてほしいの?」
スミレは見下げる様に笑い、自信満々に云う。
「ボクも自分の命をソマツに扱うバカじゃないからエンリョーしておくよ~」
ノワルは「だって」と付け足して言葉を続ける。
「ボクがあんなことやこんなことしたいのはマルちゃんだも~ん」
「息の根止めますよ?」
「あはは~ジョーダンに決まってるじゃ~ん」
私のツッコミにノワルは陽気に子供の様に無邪気に笑う。
「そうですよねー。 冗談に決まってますよねー あっはっは」
「りんごちゃん、眼が笑ってないよ……」
「コホン…君たちもうそろそろいいかな……」
マロン先輩は咳払いをして、話を戻す。
「モンブランに免じて、ワタシの手に入れた情報を教えて挙げよう」
モンブラン効果のお陰かマロン先輩はかなり上機嫌な感じです。
「はい、是非教えて下さい」
「では、今度こそついてきたまえ」
マロン先輩は私達に背を向け、ぶかぶかの白衣を床に引きずりながら歩きだした。
「ねぇねぇ、マルちゃん」
「なんですか? ノワル」
「白衣、踏んずけてみてもいいかな?」
「駄目です」
「ついた」
一階校舎の西側の奥から三番目の教室の前で私達は立ち止まる。
「此処って、空き教室や物置教室がある場所ですね」
「ああ、この場所は普段は余り人が寄り付かないのでね、研究に集中出来るのだよ」
「無断で使ってるの~?」
「ちゃんと、許可は取っているよ」
「そういえば、夜中にここの教室が『ゴゴゴゴグガガゴガガグツグツ!』ってうるさかったのってマロちゃんの仕業だったんだね~おかげで最近寝不足だよ~」
ノワルは軽く欠伸をする。
「セ、先輩は一体何をやっていたのでしょうか?」
「りんごちゃん僕はそっちよりもノワルがここに寝泊まりしていることが気になるな」
「云われてみれば確かに気になりますね」
「云われるまで気にならなかったんだ」
「まあ、野和くんの話はまたの機会にして取り敢えず中に入ろうか」
マロン先輩は教室の鍵を開けスライド式のドアを開ける。
「ところで、マロン先輩は夜中に何をしていたのですか?」
「……………」
「ところで、マロン先輩は夜中に何をしていたのですか?」
「……………」
「と・こ・ろ・で、・マ・ロ・ン・セ・ン・」
「りんごちゃん別に聞こえていないわけじゃないと思うよ」
マロン先輩は咳払いをし「子供にはまだ早いと思う」と告げる。
「『子供にはまだ早い』……一体どんな難しい研究なのでしょうか? とても気になります」
「いや、そこまで深く考えなくてもいいのだが……」
「『そこまで深く考えなくてもいい』ということは……少しは深く考えるということ……なるほど、先輩の今『夜中にやっている研究』は……」
「なんかエロイ響きだね~」
「《宇宙の誕生》とかですか?」
「ショウキチ、かなりハードルを上げられてるね」
リュイ先輩が少し笑いながら云う。
「やはり私には到底分からないことなのかも知れません……先輩、一体どんなすごい研究何ですか? どうか教えて貰えないでしょうか?」
「い、いや、それは答えられないね……」
「スミレ、マロン先輩やっぱりモンブランいらないそう……」
「栗の量産の研究だよ」
「あっさり答えたね」
「かなりどうでもいいことだったわね」
スミレは時間を無駄にしたと云わんばかりにため息をつく。
「何を云うんですか、スミレ」
「? ……なによ?」
「栗の量産の研究と云っていますがこれはかなり深い内容なんですよ」
「……どこがよ?」
私はスミレの方に歩みよっていく。
「マロン先輩は先ほど『子供にはまだ早い』と云いました。 『栗の量産の研究』……つまり、《世界の子供を増やす研究》ということです」
「……は?」
私の言葉にスミレは眼を丸くする。
「最近の世の中は少子高齢化が進んでいて、このままでは人口の3分の1が高齢者になってしまうのは、時間の問題です。 そこで、『栗の量産の研究』が必要なんです」
「いや、なんでそこで栗が出てくるのよ」
「んもー鈍いですねー『量産』ということは《増やす》、すなわち、《栗の量産の力で子供を増やし少子高齢化を食い止め世界を救う研究》と云うことです」
「わ、わかったわ……とりあえず離れなさい……イ・マ・ス・グ」
スミレに云われ、私は彼女の顔が目の前にあることに気がつく。
「おっと、これはすいませんでした。 つい夢中になっちゃって」
「さっすが、マロちゃ~ん、栗にそんな可能性があったんだね~」
ノワルは何故かニヤニヤしながら、まるでマロン先輩をからかう様に云う。
「ゴホン、まあ……ワタシの研究のことは今はいいんだ取りあえずこれを観てくれたまえ」
マロン先輩は教室の本棚からある本を取り出した。
「この本は?」
「かなり古いものみたいですね」
「ああ、ワタシの知り合いに歴史の生物や伝説として語られている生物の研究をしているものがいてね。 その人から借りたのだよ」
先輩はその本を机の上に置き、ぺージを開いていく。
「あった、このページを観てみたまえ」
そして私達はその本を覗き込んだ。
「! これって……!」
私はそのページを観て驚いた。
そして、その後ろ隣にスミレも一緒にいた。
「どうも、こんにちはリュイ先輩。 それにスミレも同じクラスでさっきまで一緒にいましたけど、こんにちは、相変わらず先輩の傍にいるんですね」
スミレに眼を向ける。
「あたりまえよ、センパイのいるところにワタシありよ」
スミレは何を今更という感じで溜め息混じりにいう。
「先輩、こんにちは」
「うん、こんにちは、アラン」
私の隣にいるこの橙色の髪の少年は、荒谷橙真くんといい、この町の商店街の中にある、私の実家の八百屋兼探偵事務所兼自宅の迎いにある、玩具屋が自宅で小さい頃から仲のいい幼馴染の友達です。
私は彼のことをトウマくんと呼んでいますが、皆からはアランと呼ばれています。
「先輩、私を探していたということはナニか分かったんですね?」
「さすがマル、話が早いね」
リュイ先輩は優しく微笑みながら続ける。
「まあ、わかったと云っても《ほんの少しだけ》何だけどね」
リュイ先輩は親指と人指し指で《ほんの少しだけ》隙間をつくる。すると、
「ここからはワタシが説明しよう」
リュイ先輩の背後からとても低くて渋い声が廊下に響き渡る。
「こ、このとてつもなく低くて渋いかっこいい声は!」
「おっ、来たみたいだね」
リュイ先輩は後ろを振り返り、私はその後ろを覗き込むとリュイ先輩の後ろから長い白衣を地面に引きずりながら、身長が120センチ程のまるで子犬の様に可愛らしい見た目の栗色の髪の子供が現れた。
「やあ、林檎くん、久しいね」
しかし、見た目とは裏腹にとても声がネットリと大人っぽくてどことなくエロい。
「久しぶりです。 マロン先輩、相変わらず可愛らしい姿からは想像が出来ないダンディな声ですね」
もう一度云いますが、見た目は子供の様に可愛らしいけど、声がとてもダンディなこの方は、私がとても尊敬しているマロン先輩こと、三栗正吉先輩です。 実はこの見た目で十六歳です。
先輩は、魔法学の天才と云われ、私達がどうして魔法卵ことマジックエッグで魔法が使えるのか、どういう仕組みなのかという長年沢山の研究者が解き明かせなかった謎を五歳の時に解明したという伝説を持つ超超超天才なんです。
「可愛いと云われるのはあまり好きではないが素直に受け取っておこう」
マロン先輩は軽く咳ばらいをし続ける。
「さて、早速だが本題に入るとしよう。 付いてきたまえ」
そういうと、マロン先輩は私達に背を向け歩きだし、私はその後に続こうとした。
「なになに、これからマロちゃんとミッカイ?」
私の斜め上辺りに空中であぐらをかき、物理的に浮いている、少し長めの黒髪が左右に跳ねている青年が現れた。
「相変わらず急に現われますねノワル」
「じゃあ、今度は徐々に出てくるとするよ」
「ノワル、そうゆうことじゃないと思うな」
この物理的に浮いている少年は、野和健くんといい私を含め大体の人がノワルと呼んでいます。
いつも空中をふわふわと浮いているのですが、別に幽霊とかではなく自主的に浮いていてその理由は《空中に浮いていると落ち着くから》らしいです。
「やあ、アラン、今日も幼馴染という特権でマルちゃんの隣を歩いていてずるいぞ~、なんかムラムラして、いつ背後からアランにスカイドロップキックを食らわしてマルちゃんをオソオウか迷っていたんだからね~」
「陽気に笑いながら恐ろしいことをいうね」
「どこからストーキングしていたんですか?」
私は冷静に聞くと、ノワルは陽気に笑いながら答える。
「ストーキングとは侵害だな~ボクは背後からマルちゃんを守るナイトだよ~」
「それをストーキングと云うのだと思われます」
「相変わらず、うっとうしいわ」
私達の会話を聞いていたスミレが怪訝そうにいう。
「やあ、ボクとおんなじストーキング仲間のムラサキちゃん」
「!! あ、アナタとおなじにし・な・い・で」
スミレはノワルを睨みつけながら云う。
「今、思いっきり認めましたね」
私のツッコミが聞こえなかったのか、スミレはノワルに突っかかる。
「大体、ワタシはア・ナ・タと違い、いつもセンパイの傍にいるわ。 例え、雨の日も風の日もトイレに行く時もセンパイから一ミリも離れないわ」
「さすがにトイレに行く時は離れてほしいな」
リュイ先輩は軽くツッコム。
「トイレの中までつきまとうなんて、さすがのボクでもひくな~ボクだったらトイレの外までだな~」
「対して変わらないじゃないですか」
「………コ・ロ・ス」
スミレは後ろの腰に掛けていた、長くて太い菫色の鍵を引き抜くとノワルに構えた。
「シ・ニ・ナ・サ・イ」
殺気に満ちた声で、昨日、私を殺ろうとしたあの黒い棒が出てきた。
ちなみに私はアレのことを『ドス黒い愛の槍』と呼んでいます。
そして、ラブラックアローをノワルにむけて一直線に飛ばした。
「おっと」
なんて云いながらも、ノワルはそれを空中で華麗に避けた。
「大人しくク・ラ・イ・ナ・サ・イ」
「やだよ~当たったらイタイんだもん」
スミレは攻撃の手を緩めることなく、ノワルを本気で仕留めに掛かり、ノワルは余裕と云わんばかりに陽気に笑いながら避けている。
「ス、スミレちゃん、落ち着いて」
「ヘ・タ・レは黙ってなさい」
「ヘ……ヘタレ……」
止めに入ったトウマくんですがスミレの言葉に見事に玉砕された。
「~~~~~~~~~~~~~~~!!」
スミレは言葉になっていない奇声を発しながら、暴走を続ける。
「スミレ、もうそろそろ落ち着こうか」
しばらく、様子を観ていたリュイ先輩が優しい声と口調で云う。
「はい、わかりました」
「!?」
リュイ先輩の言葉にスミレはあっさりと従い、ドス黒いオーラを沈めた。
その様子を観たトウマくんは唖然としていた。
「ま、落ち込むことはないですよ」
私はトウマくんの肩に掌を乗せる。
「りんごちゃん、そんな哀れなものを観るような眼でみないで……」
トウマくんは少し泣きそうな声で云う。
「……コホン、……あの、君たち……」
とてつもなく渋くて低い声、訳して『TSHK』が廊下に響き渡り、私達はあることを忘れていたことに気が付いた。
「君たちワタシのことを忘れていただろう……」
機嫌が悪くどちらかと云うと、拗ねた様な感じでマロン先輩が云う。
「そ、そんなことないですよー(棒) ね、トウマくん?」
「う、うん、丁度今から先輩を追いかけようとしてましたから。 ね、ノワル?」
「ボクはスッカリ忘れてたよ~」
「ノワル、コノヤロー!!」
私とトウマくんは同時に叫ぶ。
「後ろを振り返ったら誰もいないんだもん、それに気付くまでワタシ独り言を云ってる変な奴って絶対思われていたってことじゃん!」
「先輩、本当にごめんなさい。こちらでちょっとばかりトラブルがあったもので」
私はマロン先輩の身長位まで腰を屈めて顔の前で手を合わせて謝る。
「ふん、もういいもん、君に教えようと思ったこと、さっき独り言で教えたから、もう教えて挙げないもん」
先輩はTSHKでへそを曲げてしまった。
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「……うぐぅ!!」
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「せ、せんぱーい!!」
「だ、大丈夫です。 私は先輩の駄々をこねた姿もとても可愛いいと思ってますから」
「ねえ、マルちゃん、ボクは? ボクは? カワイイ?」
「ノワル、ちょっと黙っててください」
ノワルは親指をグッと立ててお口をチャックする。
「先輩、どうか機嫌を直して下さい。 もし、機嫌を直してくれたらマロン先輩の大好物のモンブランをスミレが作ってくれますよ」
「! ……モンブラン」
マロン先輩の声が少し跳ね上がる。 よし、このまま上手く行きそうです。
「は?イヤよ、めんどくさい」
「! ……」
マロン先輩は肩を竦ませ、解りやすくショックを受ける。
「スミレ、そこを何とかお願いします」
私は頭の上で手を合わせてお願いする。
「なんで、ワタシがアナタのためにそんなことしないといけないの?」
スミレは自身の長い髪をかき分けながら、ドライアイスの様に冷たく返す。
「スミレ、そんなイジワルなこと言わないで作ってあげてくれないかな? ボクも例のことがちょっと気になるし」
「わかりました、センパイのために愛を込めて作ります」
さっきとは打って変わってスミレは承諾する。
「リュイ先輩のお願いは恐ろしい位に何でも聞きますね……」
「なんでも!?」
私の台詞にノワルが反応する。
「ということは、ボクが変身魔法でリュイちゃんに変装すればあんなことやこんなこともやってくれるってことだね~」
「もし、バレたら君の命は無いと思うよ……」
トウマくんは苦笑いでツッコム。
「何言ってるのよ、アナタ如きの変装なんて簡単に見抜けるわ。 ナニ? それとも、アナタがそれを実行する前に息の根を止めてほしいの?」
スミレは見下げる様に笑い、自信満々に云う。
「ボクも自分の命をソマツに扱うバカじゃないからエンリョーしておくよ~」
ノワルは「だって」と付け足して言葉を続ける。
「ボクがあんなことやこんなことしたいのはマルちゃんだも~ん」
「息の根止めますよ?」
「あはは~ジョーダンに決まってるじゃ~ん」
私のツッコミにノワルは陽気に子供の様に無邪気に笑う。
「そうですよねー。 冗談に決まってますよねー あっはっは」
「りんごちゃん、眼が笑ってないよ……」
「コホン…君たちもうそろそろいいかな……」
マロン先輩は咳払いをして、話を戻す。
「モンブランに免じて、ワタシの手に入れた情報を教えて挙げよう」
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「はい、是非教えて下さい」
「では、今度こそついてきたまえ」
マロン先輩は私達に背を向け、ぶかぶかの白衣を床に引きずりながら歩きだした。
「ねぇねぇ、マルちゃん」
「なんですか? ノワル」
「白衣、踏んずけてみてもいいかな?」
「駄目です」
「ついた」
一階校舎の西側の奥から三番目の教室の前で私達は立ち止まる。
「此処って、空き教室や物置教室がある場所ですね」
「ああ、この場所は普段は余り人が寄り付かないのでね、研究に集中出来るのだよ」
「無断で使ってるの~?」
「ちゃんと、許可は取っているよ」
「そういえば、夜中にここの教室が『ゴゴゴゴグガガゴガガグツグツ!』ってうるさかったのってマロちゃんの仕業だったんだね~おかげで最近寝不足だよ~」
ノワルは軽く欠伸をする。
「セ、先輩は一体何をやっていたのでしょうか?」
「りんごちゃん僕はそっちよりもノワルがここに寝泊まりしていることが気になるな」
「云われてみれば確かに気になりますね」
「云われるまで気にならなかったんだ」
「まあ、野和くんの話はまたの機会にして取り敢えず中に入ろうか」
マロン先輩は教室の鍵を開けスライド式のドアを開ける。
「ところで、マロン先輩は夜中に何をしていたのですか?」
「……………」
「ところで、マロン先輩は夜中に何をしていたのですか?」
「……………」
「と・こ・ろ・で、・マ・ロ・ン・セ・ン・」
「りんごちゃん別に聞こえていないわけじゃないと思うよ」
マロン先輩は咳払いをし「子供にはまだ早いと思う」と告げる。
「『子供にはまだ早い』……一体どんな難しい研究なのでしょうか? とても気になります」
「いや、そこまで深く考えなくてもいいのだが……」
「『そこまで深く考えなくてもいい』ということは……少しは深く考えるということ……なるほど、先輩の今『夜中にやっている研究』は……」
「なんかエロイ響きだね~」
「《宇宙の誕生》とかですか?」
「ショウキチ、かなりハードルを上げられてるね」
リュイ先輩が少し笑いながら云う。
「やはり私には到底分からないことなのかも知れません……先輩、一体どんなすごい研究何ですか? どうか教えて貰えないでしょうか?」
「い、いや、それは答えられないね……」
「スミレ、マロン先輩やっぱりモンブランいらないそう……」
「栗の量産の研究だよ」
「あっさり答えたね」
「かなりどうでもいいことだったわね」
スミレは時間を無駄にしたと云わんばかりにため息をつく。
「何を云うんですか、スミレ」
「? ……なによ?」
「栗の量産の研究と云っていますがこれはかなり深い内容なんですよ」
「……どこがよ?」
私はスミレの方に歩みよっていく。
「マロン先輩は先ほど『子供にはまだ早い』と云いました。 『栗の量産の研究』……つまり、《世界の子供を増やす研究》ということです」
「……は?」
私の言葉にスミレは眼を丸くする。
「最近の世の中は少子高齢化が進んでいて、このままでは人口の3分の1が高齢者になってしまうのは、時間の問題です。 そこで、『栗の量産の研究』が必要なんです」
「いや、なんでそこで栗が出てくるのよ」
「んもー鈍いですねー『量産』ということは《増やす》、すなわち、《栗の量産の力で子供を増やし少子高齢化を食い止め世界を救う研究》と云うことです」
「わ、わかったわ……とりあえず離れなさい……イ・マ・ス・グ」
スミレに云われ、私は彼女の顔が目の前にあることに気がつく。
「おっと、これはすいませんでした。 つい夢中になっちゃって」
「さっすが、マロちゃ~ん、栗にそんな可能性があったんだね~」
ノワルは何故かニヤニヤしながら、まるでマロン先輩をからかう様に云う。
「ゴホン、まあ……ワタシの研究のことは今はいいんだ取りあえずこれを観てくれたまえ」
マロン先輩は教室の本棚からある本を取り出した。
「この本は?」
「かなり古いものみたいですね」
「ああ、ワタシの知り合いに歴史の生物や伝説として語られている生物の研究をしているものがいてね。 その人から借りたのだよ」
先輩はその本を机の上に置き、ぺージを開いていく。
「あった、このページを観てみたまえ」
そして私達はその本を覗き込んだ。
「! これって……!」
私はそのページを観て驚いた。
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それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
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