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第二十六話 怪しい南雲太一
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「羊羹って結構簡単にできるんだな」
そこで関西人の俺的には「羊羹よう噛んで食べや」って言いたいねんけど、猫やし言えへんねん。ほんまストレス溜まるわ。
「ええ、寒天と同じですから。あんこを入れずに牛乳を入れたら牛乳寒天になります」
「それにしてもあんなに砂糖入れるとは思わなかったね、驚き桃の木山椒の木、見上げたもんだよ屋根屋のふんどしってなもんさ」
せやからわかれへんっちゅーねん。
昨日は未だ勝手がわからず一緒に給食を食っとった留学生四人組やけど、今日は他の子たちに呼ばれて別のグループと飯食っとる。それなりに日本を楽しんでくれとるようや。
「五限は茶道部の二人と南雲だけで行けるか?」
「あたしも点てられるよ」
当たり前のように小梅が言う。なかなかやるな。役者はそんなことまでやるんか。
「クラスのみんなは御薄でよろしゅうございましょう。留学生の方たちには、せっかくですから御濃茶を味わっていただきませんか」
「じゃあ、御濃茶はあんたが点てな。茶道部の二人は今年茶道部に入ったばかりの初心者だって言ってたからね。あんたなら菓子屋の跡取りなんだし、それなりに形になってるんだろう?」
そもそも誰が茶道部なんだよ。という俺の声が届いたのか、ワカメご飯を頬張っていた宇部が言った。
「茶道部は蕪月姉妹。二人で協力してくれるらしいよ」
ああ、あの双子か。未だにどっちがどっちかわからんが。こないだ太一郎のことを「怪しいクラスメイトだ」って言うとった方が姉かな。怪しいって何やねん、俺の体やで。ま、確かにキャラ変してから怪しいがな。
結局蕪月姉妹と打ち合わせをしている間に教室の前の方にシステム畳を九枚敷き(つまり四畳半や)、後ろの方には椅子を並べた。野点みたいなノリでやるといってたが、俺には野点がまずわからん。
五限になると、クラスのみんなが椅子の方に座り、留学生たちは畳に正座した。
正座は結構きついんじゃないかと思っとったけど、空手家に侍に忍者や、きついわけがあらへん。それどころかジェイコブは抹茶を飲んだことがあるらしい。さすが侍や。
茶筅っていうなんやわからんけど抹茶を泡立てるヤツが三つしかなかったらしく、蕪月姉妹がみんなの分を、太一郎が留学生の分を点てることになった。名倉は葛城と一緒に何人かに仕事を振り分けて、お菓子(羊羹や!)を出したりお湯を沸かしたり忙しく立ち働いとった。猫の手も借りたそうやったし、貸したろ思うたけど、邪魔やしやめといた。
しかし、や。太一郎がチートすぎやねん。ちょっと現代を生きとらへん感じはしよるが、剣術はできるし、羊羹も作れる。お茶も点てられる。
なのに体は俺やねん! 南雲太一の評価が爆上がりやねん。
いつか自分の体に戻る時が来た時、これメチャメチャ困るヤツやん?
一通りみんなの分のお茶を点て終わった蕪月……姉か妹かどっちかわからんけど俺を抱っこしよる。
「はぁ、疲れた。ちょっとイヌチャージさせて」
「あ、お姉ちゃん、次わたし」
つまり今チャージしてる方が姉だな。てかお前が今チャージしてるのは猫やのうて南雲太一やで。怪しいクラスメイトやで(根に持っとる)。
そのとき、畳の方からどよめきが上がった。どうやら侍ジェイコブがお茶を点てるらしい。今度は蕪月姉妹と太一郎をもてなす気のようや。
みんな興味津々でジェイコブを見とるが、黒人さんがきちんと正座をしてお茶を点てている図っちゅーのんは絵になるなぁ。マジでカッコええな。志士髷やし。しかも基本的に口数の少ないジェイコブが「お菓子をドウゾ」とか言うのが新鮮や。
感激した蕪月(多分妹)の方が「別れが訪れるその日まで、いっぱい思い出作ろうね」と言うと、ゾーイが「そしたら今度はみんながアメリカに来て」と返す。すっかりみんな仲良しこよしや。
俺は蕪月姉妹から放っぽり出されたんで、仕方なく宇部のところへ行った。
「ジェイコブ、思った以上に侍だな」
「にゃ」
「太一郎は思った以上にチートだな」
「……にゃ」
「太一郎のヤツ、名倉のこと好きだな」
「にゃっ?」
なんですと?
「心配すんな、名倉は何とも思って無さそうだ」
良かった。良うないか。あいつにとっては良うないわな。
「もうお前、元の体には戻れないんだから、太一郎の応援してやれよ。あの体はもうお前のもんじゃねえよ」
そりゃわかってんねんけどな。割り切れるもんと違うねん。
でもな……そっか。あいつ、名倉(っていうか小梅)のことが好きか。
俺はぼんやりと、名倉の隣で茶をすする太一郎を眺めた。
そこで関西人の俺的には「羊羹よう噛んで食べや」って言いたいねんけど、猫やし言えへんねん。ほんまストレス溜まるわ。
「ええ、寒天と同じですから。あんこを入れずに牛乳を入れたら牛乳寒天になります」
「それにしてもあんなに砂糖入れるとは思わなかったね、驚き桃の木山椒の木、見上げたもんだよ屋根屋のふんどしってなもんさ」
せやからわかれへんっちゅーねん。
昨日は未だ勝手がわからず一緒に給食を食っとった留学生四人組やけど、今日は他の子たちに呼ばれて別のグループと飯食っとる。それなりに日本を楽しんでくれとるようや。
「五限は茶道部の二人と南雲だけで行けるか?」
「あたしも点てられるよ」
当たり前のように小梅が言う。なかなかやるな。役者はそんなことまでやるんか。
「クラスのみんなは御薄でよろしゅうございましょう。留学生の方たちには、せっかくですから御濃茶を味わっていただきませんか」
「じゃあ、御濃茶はあんたが点てな。茶道部の二人は今年茶道部に入ったばかりの初心者だって言ってたからね。あんたなら菓子屋の跡取りなんだし、それなりに形になってるんだろう?」
そもそも誰が茶道部なんだよ。という俺の声が届いたのか、ワカメご飯を頬張っていた宇部が言った。
「茶道部は蕪月姉妹。二人で協力してくれるらしいよ」
ああ、あの双子か。未だにどっちがどっちかわからんが。こないだ太一郎のことを「怪しいクラスメイトだ」って言うとった方が姉かな。怪しいって何やねん、俺の体やで。ま、確かにキャラ変してから怪しいがな。
結局蕪月姉妹と打ち合わせをしている間に教室の前の方にシステム畳を九枚敷き(つまり四畳半や)、後ろの方には椅子を並べた。野点みたいなノリでやるといってたが、俺には野点がまずわからん。
五限になると、クラスのみんなが椅子の方に座り、留学生たちは畳に正座した。
正座は結構きついんじゃないかと思っとったけど、空手家に侍に忍者や、きついわけがあらへん。それどころかジェイコブは抹茶を飲んだことがあるらしい。さすが侍や。
茶筅っていうなんやわからんけど抹茶を泡立てるヤツが三つしかなかったらしく、蕪月姉妹がみんなの分を、太一郎が留学生の分を点てることになった。名倉は葛城と一緒に何人かに仕事を振り分けて、お菓子(羊羹や!)を出したりお湯を沸かしたり忙しく立ち働いとった。猫の手も借りたそうやったし、貸したろ思うたけど、邪魔やしやめといた。
しかし、や。太一郎がチートすぎやねん。ちょっと現代を生きとらへん感じはしよるが、剣術はできるし、羊羹も作れる。お茶も点てられる。
なのに体は俺やねん! 南雲太一の評価が爆上がりやねん。
いつか自分の体に戻る時が来た時、これメチャメチャ困るヤツやん?
一通りみんなの分のお茶を点て終わった蕪月……姉か妹かどっちかわからんけど俺を抱っこしよる。
「はぁ、疲れた。ちょっとイヌチャージさせて」
「あ、お姉ちゃん、次わたし」
つまり今チャージしてる方が姉だな。てかお前が今チャージしてるのは猫やのうて南雲太一やで。怪しいクラスメイトやで(根に持っとる)。
そのとき、畳の方からどよめきが上がった。どうやら侍ジェイコブがお茶を点てるらしい。今度は蕪月姉妹と太一郎をもてなす気のようや。
みんな興味津々でジェイコブを見とるが、黒人さんがきちんと正座をしてお茶を点てている図っちゅーのんは絵になるなぁ。マジでカッコええな。志士髷やし。しかも基本的に口数の少ないジェイコブが「お菓子をドウゾ」とか言うのが新鮮や。
感激した蕪月(多分妹)の方が「別れが訪れるその日まで、いっぱい思い出作ろうね」と言うと、ゾーイが「そしたら今度はみんながアメリカに来て」と返す。すっかりみんな仲良しこよしや。
俺は蕪月姉妹から放っぽり出されたんで、仕方なく宇部のところへ行った。
「ジェイコブ、思った以上に侍だな」
「にゃ」
「太一郎は思った以上にチートだな」
「……にゃ」
「太一郎のヤツ、名倉のこと好きだな」
「にゃっ?」
なんですと?
「心配すんな、名倉は何とも思って無さそうだ」
良かった。良うないか。あいつにとっては良うないわな。
「もうお前、元の体には戻れないんだから、太一郎の応援してやれよ。あの体はもうお前のもんじゃねえよ」
そりゃわかってんねんけどな。割り切れるもんと違うねん。
でもな……そっか。あいつ、名倉(っていうか小梅)のことが好きか。
俺はぼんやりと、名倉の隣で茶をすする太一郎を眺めた。
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