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第二十四話 こいつらガチや
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そこから、そういうことなら派手なチャンバラの方が面白いということになって、村人役も全員途中で着替えて鬼をやることになった。クラス全員が留学生たちと戦う計算や。
鬼は四チームに分かれることになった。桃太郎と戦うジェイコブチーム、犬と戦うリアムチーム、猿と戦うゾーイチーム、雉と戦うペネロペチームや。
今日はゾーイチームからやることになったんで、他の三チームは段ボールを集めたりスポンジバットや金色のポスターカラーを買いに行くことになった。こっちの監督責任者は葛城や。こういうことはアイツに任せておくと完璧にスケジュール調整してくれる。
鬼ヶ島へ行くときの小舟(もちろん張りぼて)の設計と衣装はチャンバラと同時進行や。みんなが家から持ち寄った浴衣や作務衣をちょっと細工したりするのも殺陣をやってないチームの仕事や。早速お裁縫の得意な数人を衣装係に残し、後のメンバーは百均だのスーパーだのに散って行った。
今日は怪我をしないように新聞紙を丸めたものを金棒として持っとる。もちろんゾーイの持つ刀も新聞紙や。
「よろしゅうございますか。いかな紙を丸めたものと言えど、これは剣にございます。冗談でも人を斬ったりなさいますな。これに当たったら怪我をするのです。良いですね」
太一郎の剣術とやらはガチでカッコ良かった。俺の体でやっとるから、なんや俺がカッコええみたいで照れる。俺は招き猫やけどな。
「ここでそっちから金棒を振る、それをゾーイは下がりながら避けてそのまま刀を左に流す、上段から振りかぶって来る鬼の腹を真横に薙ぐ。はい、そこ上段から!」
「待ちな、それだとゾーイが客席に背中を向けちまう。いいかい、主役は客席に背中を向けちゃあいけないんだ」
早くも太一郎と名倉がぶつかっとる。太一郎は本格的にやりたいし、名倉は舞台映えを重視すんねやし当たり前や。
「じゃあ、こうしようよ」
それまで衣装チームに指示を出していた葛城が宇部を引っ張る。
「戦闘シーンは四チームバラバラでやるの。ステージの上は桃太郎。客席通路が左右と中央に三本あるはずだから、家来たちは通路で戦う。それなら背中も何もないでしょ。客席を意識するのはステージ上の桃太郎だけになる。どう?」
その場にいたみんなから「おおー」とどよめきが起こる。葛城グッジョブや。
「それで行こう。ステージの上で四チームがチャンバラやったら死人が出るもんな。名倉、南雲、それでやって」
「合点承知の助よ」
「では名倉さん、まずは通路の幅に線を確定してそこでできる殺陣を考えましょう」
太一郎が提案するとユウヤがさっさと机を並べて通路を作り始め、周りにいた連中が協力し始める。
「教室のこっち半分で殺陣やって。あたしたちはこっちで小道具進めるから」
いやホンマに頼りになるで、葛城。きっと名倉(小桃の方)がいたとしてもこんなに仕切れなかったと思うわ。
俺は暇やし小道具や大道具の設計を見て回ったりして遊んどったが、合間合間に太一郎の「そこは梨で!」とか「斬られたら倒れる!」とか言うのが聞こえてくる。太一郎シャレにならんほどカッコええ。いつものオドオドしたのはどこ行ったんや?
たまに「あー、それ横に流しすぎだね。客席まで斬っちまう」なんて名倉の声も聞こえてくる。どうやら名倉が太一郎の相手をして、カッコいい斬られ方のお手本を見せたりしてるらしい。さすが本職、斬られ方も美しい。
俺、なんもできひんうちに猫になってもーたな。人間のうちになんか一つでも誇れるものを作っときゃ良かったな。
下校時刻ギリギリになって買い出しチームが戻って来た。百均に行ったチームはスポンジバット人数分、スーパーに行ったチームは山ほどの段ボール、画材屋に行ったチームはポスターカラーや木工ボンドを持ち帰った。その間に衣装の方はずいぶんと形になり、殺陣の方もそれっぽくなった。
それらを満足そうに眺めて宇部が言った。
「今日はここまで。もう下校時刻だから続きは明日にしよう。犬と猿と雉の衣装だけど、二足歩行だから普通の服でいいなという気もするんだけど、葛城どう思う?」
「犬は白い犬って事で、白い服着とけばいいんじゃない? 猿は茶色っぽいの。雉はどうしよっか」
「僕、空手の道着持ってるよ。アメリカから持って来た。白いからちょうどいいよ。あとは犬の耳を頭につけたらいい」
リアム、ナイスアイディア。
「ワタシもブラウンのミニスカートある。レースアップのサンダルもブラウンだよ。上が無いからウニクロでブラウンのTシャツ買って来るよ。猿の尻尾は作ってクダサイ」
ブラウンとかレースアップとか、やたらと発音がええな。ネイティヴやしな。しかしミニスカートでチャンバラやるんか。めっちゃ期待できるな。ゲヘヘ。
「私は雉だから、上が青緑で下がグレーでいいかな? ピーコックグリーンのシャツとグレーのクロップドパンツあるから。赤いキャップ被ればいいよね」
ファッションとしてはちょっとどうだろうという気はするが雉っぽくはある。
「じゃあ、三人は明日それ持って来て。本日のお白州これまで。解散!」
宇部の一声でその日は解散になった。
鬼は四チームに分かれることになった。桃太郎と戦うジェイコブチーム、犬と戦うリアムチーム、猿と戦うゾーイチーム、雉と戦うペネロペチームや。
今日はゾーイチームからやることになったんで、他の三チームは段ボールを集めたりスポンジバットや金色のポスターカラーを買いに行くことになった。こっちの監督責任者は葛城や。こういうことはアイツに任せておくと完璧にスケジュール調整してくれる。
鬼ヶ島へ行くときの小舟(もちろん張りぼて)の設計と衣装はチャンバラと同時進行や。みんなが家から持ち寄った浴衣や作務衣をちょっと細工したりするのも殺陣をやってないチームの仕事や。早速お裁縫の得意な数人を衣装係に残し、後のメンバーは百均だのスーパーだのに散って行った。
今日は怪我をしないように新聞紙を丸めたものを金棒として持っとる。もちろんゾーイの持つ刀も新聞紙や。
「よろしゅうございますか。いかな紙を丸めたものと言えど、これは剣にございます。冗談でも人を斬ったりなさいますな。これに当たったら怪我をするのです。良いですね」
太一郎の剣術とやらはガチでカッコ良かった。俺の体でやっとるから、なんや俺がカッコええみたいで照れる。俺は招き猫やけどな。
「ここでそっちから金棒を振る、それをゾーイは下がりながら避けてそのまま刀を左に流す、上段から振りかぶって来る鬼の腹を真横に薙ぐ。はい、そこ上段から!」
「待ちな、それだとゾーイが客席に背中を向けちまう。いいかい、主役は客席に背中を向けちゃあいけないんだ」
早くも太一郎と名倉がぶつかっとる。太一郎は本格的にやりたいし、名倉は舞台映えを重視すんねやし当たり前や。
「じゃあ、こうしようよ」
それまで衣装チームに指示を出していた葛城が宇部を引っ張る。
「戦闘シーンは四チームバラバラでやるの。ステージの上は桃太郎。客席通路が左右と中央に三本あるはずだから、家来たちは通路で戦う。それなら背中も何もないでしょ。客席を意識するのはステージ上の桃太郎だけになる。どう?」
その場にいたみんなから「おおー」とどよめきが起こる。葛城グッジョブや。
「それで行こう。ステージの上で四チームがチャンバラやったら死人が出るもんな。名倉、南雲、それでやって」
「合点承知の助よ」
「では名倉さん、まずは通路の幅に線を確定してそこでできる殺陣を考えましょう」
太一郎が提案するとユウヤがさっさと机を並べて通路を作り始め、周りにいた連中が協力し始める。
「教室のこっち半分で殺陣やって。あたしたちはこっちで小道具進めるから」
いやホンマに頼りになるで、葛城。きっと名倉(小桃の方)がいたとしてもこんなに仕切れなかったと思うわ。
俺は暇やし小道具や大道具の設計を見て回ったりして遊んどったが、合間合間に太一郎の「そこは梨で!」とか「斬られたら倒れる!」とか言うのが聞こえてくる。太一郎シャレにならんほどカッコええ。いつものオドオドしたのはどこ行ったんや?
たまに「あー、それ横に流しすぎだね。客席まで斬っちまう」なんて名倉の声も聞こえてくる。どうやら名倉が太一郎の相手をして、カッコいい斬られ方のお手本を見せたりしてるらしい。さすが本職、斬られ方も美しい。
俺、なんもできひんうちに猫になってもーたな。人間のうちになんか一つでも誇れるものを作っときゃ良かったな。
下校時刻ギリギリになって買い出しチームが戻って来た。百均に行ったチームはスポンジバット人数分、スーパーに行ったチームは山ほどの段ボール、画材屋に行ったチームはポスターカラーや木工ボンドを持ち帰った。その間に衣装の方はずいぶんと形になり、殺陣の方もそれっぽくなった。
それらを満足そうに眺めて宇部が言った。
「今日はここまで。もう下校時刻だから続きは明日にしよう。犬と猿と雉の衣装だけど、二足歩行だから普通の服でいいなという気もするんだけど、葛城どう思う?」
「犬は白い犬って事で、白い服着とけばいいんじゃない? 猿は茶色っぽいの。雉はどうしよっか」
「僕、空手の道着持ってるよ。アメリカから持って来た。白いからちょうどいいよ。あとは犬の耳を頭につけたらいい」
リアム、ナイスアイディア。
「ワタシもブラウンのミニスカートある。レースアップのサンダルもブラウンだよ。上が無いからウニクロでブラウンのTシャツ買って来るよ。猿の尻尾は作ってクダサイ」
ブラウンとかレースアップとか、やたらと発音がええな。ネイティヴやしな。しかしミニスカートでチャンバラやるんか。めっちゃ期待できるな。ゲヘヘ。
「私は雉だから、上が青緑で下がグレーでいいかな? ピーコックグリーンのシャツとグレーのクロップドパンツあるから。赤いキャップ被ればいいよね」
ファッションとしてはちょっとどうだろうという気はするが雉っぽくはある。
「じゃあ、三人は明日それ持って来て。本日のお白州これまで。解散!」
宇部の一声でその日は解散になった。
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