ヒョイラレ

如月芳美

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第十四話 名倉キャラ変

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 委員長が学校に出て来よった。元気そうで何よりやねんけど……けど。
 なんやキャラ変わっとる! って頭に猫乗っけてる南雲太一が言うんもおかしいねんけどな。てか、俺がその猫やねんけどな。つーか、南雲が猫を頭に乗せているこの状態を誰も変と思わんつーかアッサリ慣れてもーたんはどういうこっちゃねん? 俺そういう人やと思われとったん?
 まあええわ、今は委員長や。あの辛気臭しんきくさくて無駄に暗くて存在感の薄い委員長が、なんやめっちゃ存在感あるし。しかも変に生き生きしとるし。ぶっちゃけ、隣の席にいても名倉の声ってまともに聞いたことないし、階段落ちる時の悲鳴が初めて聞いたあいつの声やったかもしれへんっつーのに、今は普通にしゃべっとる。
「ごめんなさいよ、あたしゃどうも頭の打ちどころが良くなかったみたいでね、みんなの名前と顔がわからないんだ、あたしに声をかけるときは名乗ってもらえると助かるね」
 絶対これ委員長ちゃう。やっぱり委員長も中身がだれかになったんや。
 太一郎(てか俺)の頭に猫パンチをして説明を求めると、「ああ、そうでした」と思い出したように太一郎は俺を胸に抱いた。
「名倉さんの中には私と同じ時代にいらした名倉一座というお芝居の一座の小梅太夫が入っております。お芝居に夢中で客席に落下し、首の骨をやってしまったらしゅうございます」
「にゃにゃ?」
「とにかく名倉さんの中身は役者です」
 いきなり太一郎はうれしそうににんまりと笑った。
「そういえば南雲屋のお菓子をご贔屓ひいきにしてくださってました。塩羊羹しおようかんがお気に入りだそうで」
 お前の店の話なんぞ聞いてへんわ! でも待てよ? 同じ時代の人間ということは、二人は話が通じるということだよな。
 なんて思ってたら、当の委員長がやって来た。俺はすぐに太一郎の頭に上った。
「その猫があんたの体の持ち主かい?」
「はい、さようにございます」
「可愛いじゃないか。ところで、あたしも見つけたよ。この体の持ち主。名倉小桃って言ったっけ」
「どちらにいらっしゃいました?」
「退院しなきゃ気付かなかったさ。家で待ってたよ。どうやら名倉小桃が飼ってた鳥に乗り移ってたよ」
「鳥! 鳥を飼っているのですね」
「そう。オカメインコって言ってた。そういう種類の鳥だって。それでその鳥がしゃべるんだ。おどき桃の木山椒さんしょの木だね」
「では会話ができたのですね」
「そう。だけど『わたしの体から出て行け』ってうるさくてね。それができないから苦労してるんだ。あたしゃ綺麗さっぱり黄泉よみへ行きたかったんだけどね。でもまあ、なんとか納得してもらって、ここでの生活のことはいろいろ教えてもらったよ。伴天連ばてれんの言葉もそこそこマスターしたしね」
「ますたあ?」
「使えるようになったって事さ」
「ああ、こんぷりいとみたいなものですね」
 なんかちょっと違う……。
「しかしあれだね、この時代はれるまでが大変だけど、慣れてしまえばいろいろ快適だね」
「そうですか? わたくしはいまだ慣れることができませんが」
「あんたチョイと頭が固いね。もっと気楽に構えな」
 宇部が俺を抱き下ろしてこっそり耳打ちする。
「名倉が南雲に『頭が固い』だって。ありえねー光景だな」
「にゃ」
 俺もはげしくうなずいた。そもそもあのの鳴くような声でしか話さへん名倉が普通の声でしゃべるってのがイレギュラーや。みんなもそう思っとるんやろな。好奇こうきの目にさらされとるで、お前ら。
「おい、それより一限体育だぞ。お前らどうするんだ、しばらく見学か?」
「そうですね、その方が安全でしょう」
「あたしもそうするさ」
 ちゅーわけで、南雲&名倉(中身は太一郎と小梅)は仲良く見学になった。俺はその間太一郎の頭に乗って、二人の会話を聞くことにした。
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