ルカ、振り向いて作戦

松石 愛弓

文字の大きさ
上 下
1 / 1

僕だけを見て?

しおりを挟む
 冬の寒い北風が吹いた、ある日。

 ルカが山羊の郵便屋さんのヤギきちさんを呼び止め話しているところを、偶然カイルは見てしまいました。

 ルカとヤギ吉さんは、なんだかとても楽しそうです。

 ヤキモチ焼きのカイルは、気になって仕方がありません。

 窓辺で物思いにふけってしまいました。


 僕とルカはラブラブだと思っていたのに・・まだ6歳なのに、早くも倦怠期? どうしよう!

 ルカはヤギ吉さんのどこに惹かれたんだろう?

 ヤギ吉さんの特徴といえば・・。
 白い。 ホワイト。

 ・・・美白か・・!


 なぜか、美白という答えを導き出したカイルは、早速、美白活動に取り組むのでした。

 外出時はつばの広い大きな帽子を被って紫外線予防(冬なのに)、美白クリームを塗り、夜は美白パックでお肌のお手入れをするようになりました。

 アヒル化粧品店で、白いファンデーションを物色していると、

「カイル、最近どうしたの? カイルは元々、肌が白いほうだから、美白しなくてもいいんじゃない?」

 不思議そうなルカ。

 しかしカイルは、

(ルカが僕を気にしてる♪)
 
 と、美白作戦に手応えを感じ、隠れガッツポーズを決めるのでした。


「そういえば、この間、ヤギ吉さんと、何を話してたの?」

 どきどきしながら気になってた事を聞いてみると、ルカは、

「えっと・・それはまだ結果が分かってないから言えないわ」と困ったように目を逸らすのでした。

「結果?」

 何の結果だろう?

 ますます気になるカイルは、さらに美白活動に力を入れてしまいます。
 
 アヒル化粧品店には、アヒル並みの白さを目指せる化粧品が揃っていたのでした。

「いらっしゃいませ! こちらにどうぞ♪」

 と、真っ白なファンデーションとパフを持って現れた陽気なアヒル店員さんに椅子に座るように勧められ、あっという間に白塗りメイクをされるカイル。クチバシ色の黄色い口紅は、さすがに遠慮することにしました。


 服装でも白を極めようと、ハロウィンの時に着た白熊の着ぐるみ服をクローゼットから引っ張り出し、着て歩いていると、

「カイルくん、可愛い~!」
「もこもこの白熊の子供ね?」
「萌え~♪」

 と、もふもふ好きな女の子たちが集まってきました。

 この機会に美白について女子の話を聞こうとカイルが考えていたとき、女の子のひとりが「あっ!」と、森に向かってスキップ散歩している5人の山賊を指さしました。

「あの人たち、指名手配中の山賊よ!」
「スキップが下手だわ! 右手と右足が一緒に出てるの。残念ね」
「そんなことより、あの人たちを見つけたら賞金が出るってポスターに書いてあったわ!」
「えぇっ! 皆で賞金を山分けしても、ポンポコケーキバイキングに行けちゃう?」
「皆でポンポコ温泉に行って、ランチしましょうよ~♪」
「「「いいわね~♪」」」

 というわけで、

「「「待て~~~~っ!! ポンポコ温泉&ランチ~~っ!」」」
「「「御用だ!御用だ!」」」
 温泉ランチに目が眩んだ女子たちと、なんとなく巻き込まれたカイルは、山賊たちを追いかけました。

「なんだなんだ?! 女子の大群が押し寄せてきたぞ! 遂にモテ期到来か?」
「違うって! なぜか俺たちがポンポコ温泉ランチに見えるらしい!」
「うきうき散歩スキップを楽しんでいただけなのに、なんてこったい!」
「とにかく、逃げるぞ! 大根足に踏みつぶされてしまう!」

「「「なんですってぇ~~!?」」」
 大根足という禁句を言ってしまった山賊たちは、女子たちの狩猟本能にさらに火をつけてしまったようです。

 山賊たちと女子たちは、ポンポコ山の遥か彼方までデッドヒートを繰り広げたのでした。




 その3日後。

 ヤギ吉さんが届けてくれた小包に、ルカが大喜びしていました。

「あっ、カイル! 懸賞が当たったの! これをカイルにプレゼントしたかったの! 当たってないかもしれないから言えなかったのよ!」

 ルカは、雑誌の『月刊ぽんぽこ!』の懸賞ページに、カイルが好きそうな『ペガサスの羽の羽根ペン』が載っていたので、密かにハガキをたくさん応募していて、郵便屋さんのヤギ吉さんに自分宛の小包がないか尋ねていたのでした。

「カイルはペガサスが好きでしょう? 貴重なペガサスの羽の羽根ペンなの。よかったら、使ってね」
 嬉しそうに小包を差し出すルカ。

 カイルが丁寧に小包を開けると、素敵なペンケースの中から白くて美しいペガサスの羽根ペンが現れました。

「ありがとう! とっても素敵な羽根ペンだ。ずっと大切にするからね。ところで、ルカは懸賞に何を応募したの?」

 小包を大切そうに抱きしめながらカイルが聞くと、ルカは、

「私のものは応募していないわ。カイルの羽根ペンだけよ」と、あっけらかんと言うのでした。

「僕だけのために・・7㎞先の郵便局までハガキを買いに行ってくれたの?」

「そうよ?」

「僕たちって、ラブラブだったんだね! わ~い! ルカ大好き~♪」

 ルカの腕にくっついた甘えたのカイルが、大切なペガサスの羽根ペンで1番に書いたのは、ルカへのラブレターなのでした♪
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

パロディ 桃太郎

松石 愛弓
児童書・童話
童話 桃太郎さんのパロディです。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

つくりもののお花

いっき
児童書・童話
 ヤルトは赤いレンガのお家がたちならぶ、小さな国です。ヤルトでは、お花を育ててはいけないことになっていました。

転界 小人族

古代 こしろ
児童書・童話
会話調 宝探しをするという小人に出会う。 ありきたりな話

月からの招待状

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
児童書・童話
小学生の宙(そら)とルナのほっこりとしたお話。 🔴YouTubeや音声アプリなどに投稿する際には、次の点を守ってください。 ●ルナの正体が分かるような画像や説明はNG ●オチが分かってしまうような画像や説明はNG ●リスナーにも上記2点がNGだということを載せてください。 声劇用台本も別にございます。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

子猫マムの冒険

杉 孝子
児童書・童話
 ある小さな町に住む元気な子猫、マムは、家族や友達と幸せに暮らしていました。  しかしある日、偶然見つけた不思議な地図がマムの冒険心をかきたてます。地図には「星の谷」と呼ばれる場所が描かれており、そこには願いをかなえる「星のしずく」があると言われていました。  マムは友達のフクロウのグリムと一緒に、星の谷を目指す旅に出ることを決意します。

両親大好きっ子平民聖女様は、モフモフ聖獣様と一緒に出稼ぎライフに勤しんでいます

井藤 美樹
児童書・童話
 私の両親はお人好しなの。それも、超が付くほどのお人好し。  ここだけの話、生まれたての赤ちゃんよりもピュアな存在だと、私は内心思ってるほどなの。少なくとも、六歳の私よりもピュアなのは間違いないわ。  なので、すぐ人にだまされる。  でもね、そんな両親が大好きなの。とってもね。  だから、私が防波堤になるしかないよね、必然的に。生まれてくる妹弟のためにね。お姉ちゃん頑張ります。  でもまさか、こんなことになるなんて思いもしなかったよ。  こんな私が〈聖女〉なんて。絶対間違いだよね。教会の偉い人たちは間違いないって言ってるし、すっごく可愛いモフモフに懐かれるし、どうしよう。  えっ!? 聖女って給料が出るの!? なら、なります!! 頑張ります!!  両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です!!

処理中です...