婚約破棄してください

松石 愛弓

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「あ、それから」

 父が思い出したように付け足した。

 まだ何かあるのか。滝汗。


「アデルがルリア嬢をとても気に入っているらしく、自分の婚約者にしたいとわしに願い出てきたのだ。
 ルリア嬢の気持ちもアデルに向いているらしい。
 おまえが不祥事を起こし、彼女にも申し訳ないと思っていた。
 ルリア嬢と婚約を解消し、アデルに譲れ」

「はい…」

 婚約者にまで愛想を尽かされてしまった。

 この前の、水戸黄〇ごっこ?を根に持っていたのだろうか。

 だいたい何で突然、部屋が洪水になったんだ。


 父の部屋を出ると、黒子隊が〈残念!〉と書かれたくす玉を割っていた。

 慰められてるのか、ディスられてるのか、微妙だ。



 □

  

 ルリアはアデル王子に王宮の庭の東屋へ呼び出され、花を眺めながら待っていました。

 アデルに会えると思うと、待っている時間も幸せに感じるルリアです。


「ルリア嬢~~っ!」

 普段は冷静なアデル王子が珍しく、息を切らせて走ってきます。

「アデル様!」

 ルリアも東屋の外に出て、アデルに向かって走り出します。

 アデルはルリアの前で立ち止まると、嬉しそうに言いました。


「父が、あなたとの婚約を認めてくれました!」

「アデル様!」

 大喜びするふたり。

 感極まり、ルリアに触れたくなってしまったアデル。


「僕に触れるのも、抵抗がありますか?」

 目の前に差し出されたアデル王子の手を、思わず凝視するルリア。


 剣の練習をされるせいか、逞しい、頼もしい手に思えた。

 そっと手を伸ばし、アデル王子の手に触れてみる。

(もっと、触れていたい…)

 そんな温かな気持ちが湧いてきた。


 ふたり見つめあって、微笑み合う。

 何度も諦めなければと思った日々。

 この幸せな瞬間をかみしめる。


 あなただけを愛し続けます。

 ふたりは心の中で誓ったのでした。







 end









 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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