ルカとカイル

松石 愛弓

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悪代官と越〇屋

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 ここは、とある時代のニャンコ藩猫屋敷ニャン左衛門の屋敷。
 
 かっぽ~ん!と、ししおどしの音が高らかに響いています。

「お代官様、これは今回の分でございます」
 差し出された猫饅頭の箱をパカッと開けると、饅頭の代わりに山吹色の小判がずらりと並んでいます。

「ほっほっほっ。越〇屋、そちも悪じゃのぅ♪」
「いえいえ、お代官様ほどでは。はっはっはっ♪」
 どうやら、悪事を働いた報酬のようです。

「お代官様が目をつむってくださるお陰で好きにやらせていただいております。これはほんのお礼。奇麗どころも呼んでございますのでお楽しみください」
 パンパン!と、越〇屋が手を叩くと、芸者猫たちが襖を開け座敷に入ってきました。
 三味線と歌に合わせて、芸者猫たちは優雅に踊り始めます。

「さっ、お代官様、おひとつ」
 美しい芸者猫にお酌され、お代官様と越〇屋はごきげんです。

「ふっふっふっ、苦しゅうない、近う寄れ」
「あっ、お代官様、お戯れを…あ~れ~!」
 帯を解かれてくるくる回る芸者猫。
 しかし、解いても解いてもエンドレスに続く長すぎる帯。

「おいっ!いったいどんだけ巻いてるんだ!」
「こんなこともあろうかと、少々多めに…」
「少々どころではないだろう!」
 お代官の前にはすでに山のような帯の塊。
 帯を解きすぎて息切れし、しゃがみこんでしまいました。

「ぜいぜい…はぁはぁ…。もうよい!」
 帯を解く体力が足りなくなり断念する、ちょっとカッコ悪いお代官でした。
「体力が無いのねだっさーとか、思うでないぞ!」
 ちょっとカッコ悪いお説教をしていると、庭から鼠小僧のチュー太郎が現れました。

「その小判は、悪事で汚れたものだね。困っている人たちに配って、浄化させてやるぜ!」
 鼠小僧チュ-太郎は、忍者のような素早い動きで小判を取り上げ、庭の高い塀を超え、貧困層の村の方向へ消えました。
 お代官は帯解きで体力を使い果たし、鼠小僧を追いかける元気も無いのでした。

 そこへ、
「「「御用だ!御用だ!」」」と大勢の御用提灯が屋敷に押し寄せてきました。
 さっきの芸者猫も隠密の忍びたちで、お代官と越〇屋は逃げ場なしの状態です。

「こんなこともあろうかと、隠し扉を用意しております!」
「さすがは越〇屋じゃ!」
 大急ぎで外へ逃げる隠し扉を開けると、籠が置いてあり、籠の中では可愛い子猫たちがみゅ~みゅ~鳴きながらつぶらな瞳でお代官たちを見つめています。隠密の芸者猫が置いたようです。

「かっ、可愛い…♪」
「お代官様、萌えてる場合ではございません!」
「ああっ! このピンク色の小さな可愛い肉球! もふもふふわふわの尻尾~♪ たまらん~♪」
 我慢できずにモフモフし始めてしまう困ったちゃんのお代官。
「そんなことをしている場合では~!」
 越〇屋の叫びも空しく、お代官が可愛すぎる子猫たちに萌えている間に、あっさり取り押さえられお縄になったのでした。
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