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「見つけたぞ! 今度こそ逃がさない!」
衛兵のような風貌の男が、青年にライフルの銃口を向けた。
真っ青になる青年。
エミルはすっくとソファから立ち上がり、衛兵に近づいてゆくと、
「いきなり人の家のドアを壊しておいて、何言ってるの~~~っ!!」
と叫び、怒りの風魔法を放った!
風に包まれた衛兵は一瞬にして、遥か彼方まで飛ばされていった。『すいませ~ん!』と叫んでいる声が、上空からうっすらこだまのように聞こえてきたような気がした。
「すごい……!」
青年は、一瞬にして繰り出された風魔法の威力に驚いていた。
風魔法の余波で、エミルの家は屋根も周りの壁も吹っ飛び、部屋の中にずらりと並んだ動物たちと、ベッドに座る青年と、ドアに向かって仁王立ちしているエミルが外から丸見え状態になっている。
「すみません! すっかり巻き込んでしまって……。 どうしよう……」
青年は、とても申し訳なさそうに項垂れた。
心底反省しているようなその姿は、エミルにはとても悪人には見えなかったのだった。
(この人はまた命を狙われるのだろう。まだ、怪我が癒えたところだっていうのに……。 この家があると、またこの人が逃げ込んだと疑われて衛兵が乗り込んでくるかもしれない。 今、乗り込んできた衛兵は一人だったけど、近くに仲間の衛兵が待ち伏せているのかもしれないし……。 この家があることで、森の動物たちが巻き添えを食ってしまうかもしれない……。 もう、ここには居られないわ……)
エミルは心を決めると、動物たちに話しだした。
「みんな……短い間だったけど、みんなと楽しく過ごせて幸せだったわ。 みんなに安心して暮らして欲しいし、この家は無いほうがいいと思うので片付けます。 しばらく、体調が万全でないこの人の護衛をするわ」
「「「え~~~~~っ!!」」」
森の動物たちはエミルにくっついて別れを惜しんだが、エミルが困ったように微笑んで、
「私がここにいると、あなたたちに迷惑がかかるかもしれないの。分かって?」
と言うと、動物たちはエミルのつらい気持ちを理解してくれた。
「でも、きっとまた会いに来てね。エミル」
「いつでも待ってるからね」
特にエミルと仲良しだったウサギさんとリスさんが小さな涙をぽろりとこぼした。
「うん、ありがとう。 みんなも元気でいてね」
エミルは動物たちと愛情を確かめあうように抱き合った。
「……本当にすまない……動物たちと引き離すことになってしまって……。でも、命を狙われている僕を護衛してくれるなんて……どうして僕を信用してくれるの? 僕が悪い奴だったらって、思わないの?」
エミルの親切が信じられない、という表情で青年はエミルを見つめた。
「そうね。もし、あなたが悪い人だと分かったら、その場で成敗してあげるわ。私はあなたよりも強いと思うから」
エミルが悪戯っぽく笑いながら言うと、
「そう。じゃあ、僕が悪い奴だと思ったら、コテンパンにやっつけてください」
と言って、背に腹を返れない状況の青年はエミルの言葉に甘えさせてもらうことにした。
エミルは、壊れた家をマジックバッグに収納すると、動物たちに見送られながら青年と共に森を離れることにした。
衛兵のような風貌の男が、青年にライフルの銃口を向けた。
真っ青になる青年。
エミルはすっくとソファから立ち上がり、衛兵に近づいてゆくと、
「いきなり人の家のドアを壊しておいて、何言ってるの~~~っ!!」
と叫び、怒りの風魔法を放った!
風に包まれた衛兵は一瞬にして、遥か彼方まで飛ばされていった。『すいませ~ん!』と叫んでいる声が、上空からうっすらこだまのように聞こえてきたような気がした。
「すごい……!」
青年は、一瞬にして繰り出された風魔法の威力に驚いていた。
風魔法の余波で、エミルの家は屋根も周りの壁も吹っ飛び、部屋の中にずらりと並んだ動物たちと、ベッドに座る青年と、ドアに向かって仁王立ちしているエミルが外から丸見え状態になっている。
「すみません! すっかり巻き込んでしまって……。 どうしよう……」
青年は、とても申し訳なさそうに項垂れた。
心底反省しているようなその姿は、エミルにはとても悪人には見えなかったのだった。
(この人はまた命を狙われるのだろう。まだ、怪我が癒えたところだっていうのに……。 この家があると、またこの人が逃げ込んだと疑われて衛兵が乗り込んでくるかもしれない。 今、乗り込んできた衛兵は一人だったけど、近くに仲間の衛兵が待ち伏せているのかもしれないし……。 この家があることで、森の動物たちが巻き添えを食ってしまうかもしれない……。 もう、ここには居られないわ……)
エミルは心を決めると、動物たちに話しだした。
「みんな……短い間だったけど、みんなと楽しく過ごせて幸せだったわ。 みんなに安心して暮らして欲しいし、この家は無いほうがいいと思うので片付けます。 しばらく、体調が万全でないこの人の護衛をするわ」
「「「え~~~~~っ!!」」」
森の動物たちはエミルにくっついて別れを惜しんだが、エミルが困ったように微笑んで、
「私がここにいると、あなたたちに迷惑がかかるかもしれないの。分かって?」
と言うと、動物たちはエミルのつらい気持ちを理解してくれた。
「でも、きっとまた会いに来てね。エミル」
「いつでも待ってるからね」
特にエミルと仲良しだったウサギさんとリスさんが小さな涙をぽろりとこぼした。
「うん、ありがとう。 みんなも元気でいてね」
エミルは動物たちと愛情を確かめあうように抱き合った。
「……本当にすまない……動物たちと引き離すことになってしまって……。でも、命を狙われている僕を護衛してくれるなんて……どうして僕を信用してくれるの? 僕が悪い奴だったらって、思わないの?」
エミルの親切が信じられない、という表情で青年はエミルを見つめた。
「そうね。もし、あなたが悪い人だと分かったら、その場で成敗してあげるわ。私はあなたよりも強いと思うから」
エミルが悪戯っぽく笑いながら言うと、
「そう。じゃあ、僕が悪い奴だと思ったら、コテンパンにやっつけてください」
と言って、背に腹を返れない状況の青年はエミルの言葉に甘えさせてもらうことにした。
エミルは、壊れた家をマジックバッグに収納すると、動物たちに見送られながら青年と共に森を離れることにした。
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