婚約破棄され聖女も辞めさせられたので、好きにさせていただきます。

松石 愛弓

文字の大きさ
上 下
8 / 18

しおりを挟む
 エミルは隣国の森で、可愛い動物たちに囲まれて毎日楽しく暮らしていた。

 森のはずれの木陰に魔法でウッドハウスを建て、可憐な花々が咲く庭には、木製の長テーブルと長椅子を置き、エミルはここで動物たちとの食事を楽しんだ。

 家の傍には、動物たちが好む甘い果実や木の実が実る木をたくさん植えた。魔法でいつもたわわに果物や木の実が実っているので、動物たちや小鳥たちは食べ物に困ることがなくなった。

 可愛いもふもふの動物たちと一緒に昼寝したり、遊んだり、散歩したり、夜は空一面に輝く星空を眺めたり。

 数日、のんびり暮らしていると、5年間休み無しで頑張ってきた疲れた心身が活気を取り戻すように回復してきた。

 そんなある日、森を散歩していると行倒れている騎士を見かけた。

 エミルは治癒魔法で怪我を治し、まだ意識の戻らない彼を家に連れ帰りベッドで休ませた。

 ベッドの周りを動物たちと取り囲むようにして、彼が気が付くのを待つ。

 青い短髪、白い肌に長い睫毛の美しい青年だ。

「この人、この国の騎士かな?」

 リスさんが心配そうに言い、

「剣は預かっていたほうがいいよ。もし悪い人だったら、僕たちが守ってあげるからね!」

 熊さんや狼さんがエミルを勇気づける。

「ありがとう。頼もしいわ」

 腕を少し剣で斬られてたみたいだけど、誰かに追われているのかしら……?

「なかなか起きないから、私が起こしてあげる~」

 山猫さんがピョンっとベッドに飛び乗ると、彼にキスをした。

「ううん……」

 キスで目覚める白雪姫のような青年は目をこすり、エミルと動物たちに囲まれている状況に驚いた。

「ここは……?」

 キョロキョロと部屋や動物たちを見る青年。

「あなたは森で倒れていたのよ。体調はどう?」

 エミルが心配そうに尋ねると、

「あなたが看病してくれたんですね。ありがとうございます。実は……」

 青年が事情を話そうとしてベッドからゆっくりと起き上がると、突然、乱暴にドアが蹴破られた。

「見つけたぞ! 今度こそ逃がさない!」

 衛兵のような風貌の男が、青年にライフルの銃口を向けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

鳴けない金糸雀 沈黙の聖女

オトカヨル
恋愛
「今までよくも私を、ひいては国民をも騙しおおせたものだな!」 「とっととこの城から出て行きなさいな、偽物聖女!」 異界から聖女として呼び出されたカナは、召喚されてから何も語らず、奇跡も起こさず『沈黙の聖女』と呼ばれていたが、『本物の聖女』が現れたことで『偽の聖女』として城から追放される。 「やっっっっっと出てこれた〜〜〜!」 これは、籠の鳥だった沈黙の聖女が外に出るまでの物語。 ※他サイト様でも投稿しています

あなたとの縁を切らせてもらいます

しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。 彼と私はどうなるべきか。 彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。 「あなたとの縁を切らせてください」 あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。 新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。 さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ ) 小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。

【完結】婚約破棄されましたが国を追放されたのは私ではなく糾弾してきた王子の方でした

愛早さくら
恋愛
「お前との婚約は破棄する!」 卒業式の日。そう、大勢の前でネフィを糾弾してきたのは幼い頃からの婚約者である、ここ、カナドゥサ国のレシア第一王子でした。 ネフィはにんまりと笑みを浮かべます。 なぜなら、周り中全てが自分の味方であることを知っていたからです。 だからネフィは答えました。 「構いませんわ。ですが私と婚約を破棄して、国を追われるのは貴方の方でしてよ?」 そう告げるネフィの隣には…… ・定番中の定番みたいな話を私も書いてみたくなって! ・でもあんまりざまぁはないです。多分。 ・地味に某お話と同じ世界観。

婚約破棄されてしまいました。別にかまいませんけれども。

ココちゃん
恋愛
よくある婚約破棄モノです。 ざまぁあり、ピンク色のふわふわの髪の男爵令嬢ありなやつです。 短編ですので、サクッと読んでいただけると嬉しいです。 なろうに投稿したものを、少しだけ改稿して再投稿しています。  なろうでのタイトルは、「婚約破棄されました〜本当に宜しいのですね?」です。 どうぞよろしくお願いしますm(._.)m

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

殿下は私に向けて、悲しそうに婚約破棄を宣告されました

柚木ゆず
恋愛
 王太子ノルベルトと婚約している伯爵令嬢・シャルロッテは、結婚まであと二日という時に婚約破棄をされてしまいます。  大勢の前で婚約を破棄した上に、シャルロッテを罵るノルベルト。彼はシャルロッテを傷付ける言葉を平然と放ち、悪びれもせず去ってゆきます。  しかし――。そんな姿を目で追っていたシャルロッテは、気付いてしまうのでした。  去りゆくノルベルトの顔はとても悲しげで、罪悪感に押し潰されそうになっていることに。

処理中です...