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 ほうきに乗った空飛ぶ魔法使いたちが全国にばら撒いた号外は、畑のあぜ道を歩いていたミランダの頭上にも降ってきた。

 号外には、ミランダが聖女の祈りを怠けたため魔物が国へ侵入したのに国民を見捨て自分だけ助かろうと逃亡した事。 ミランダを捕まえて王城に連れてきた人には、素敵なプレゼント進呈、などと書かれてあった。

「素敵なプレゼントって、はっきり何をプレゼントするのか書かないところが怪しいわ。しょうもない物なのかも」

 やたら細かいところが気になってしまうミランダだった。

 号外の一面にはデカデカとミランダの写真が掲載されている。裏面には、厚化粧前の素顔の似顔絵も。

「もう! 綺麗にお化粧してる時の写真だけ載せればいいのに! あっ、それも困るけど!」

 あまりにも違いすぎる化粧後、化粧前の姿に、本人までがドン引きしていた。

「どうしよう! 見つからないように変装しなくちゃ!」

 更に別人メイクをしようと、バッグの中から化粧道具を探していると、

「聖女ミランダだ~~~っ!!」

 第一村人、もとい、第一発見者がミランダを捕まえようと追いかけてきた!

「なにっ!」
「ミランダだ! この村にも魔物が来るかもしれないんだぞ! 王城へ戻れ!」
「自分だけ助かろうたぁ、ふてぇ野郎だ!」
「ミランダを王城へ連れて行き、素敵なプレゼントを頂くぞ!」
「「「「お~~~~~っ!!」」」」

 素敵なプレゼント進呈効果は、意外と大きかった!

「いやぁ~~~っ! 外国へ高飛びするのよぉ~~っ!」
「「「「逃がすか~~~~っ!!」」」」

 追いかけて来る村人たちを撒こうと、大量の化粧道具を村人に投げつけながら走る迷惑この上ない逃げっぷりのミランダ!

「大量のおしろいが飛んできたぞ!」
「目つぶしかっ?」
「辺りが真っ白で前が見えねぇ!」←どんだけ
 
 厚化粧道具で逃げ切ろうとするミランダ!

「逃がしてたまるか! お~い、村のみんな~! 指名手配中の聖女ミランダがいるぞ~! 捕まえてくれ~!」

 援軍を招集する村人A!

「よっしゃぁ!」
「まかせとけ!」

 ミランダの追っ手はどんどん増えてくる。

 ダイエットマラソン中の女子も、犬の散歩中のおじいさんも、運動部の学生たちも、なんだなんだと集まってきた。

「もう2kmも走ってるのに追っ手を撒けないし、休憩もできない。きついわ~!」

 走り続けたミランダが、石につまづき転んだ。

「もう逃がさないぜ……ぜいぜいはぁはぁ……」
「素敵なプレゼント、ゲットだぜ!」

 ついにミランダに追いついた大勢の村人たち。 ミランダ、万事休すか?

 その時、髪を振り乱した汗だくのミランダが村人たちに振り返った。

「「「ギャ~~~~ッ!!」」」

 極厚メイクが汗で崩れた物凄い惨状を見てしまった最前列の村人たちはあまりの恐怖に失神し次々と倒れてゆく。その隙にミランダはなんとか逃げ切ろうとしたが、後列にいたホラー系大丈夫な若者たちがミランダを取り押さえた。

 ついにミランダはお縄となり、村人たちと王城へ向かうことになった。

 王城に着くと、衛兵や侍女たちの大歓迎を受ける村人たち。

「皆さん、ミランダ逮捕にご協力いただき、ありがとうございました! ではこれから、皆様お待ちかねの〈素敵なプレゼント大抽選会〉を開催いたします!」

 衛兵の挨拶に村人たちは大喜び!

「「「わ~~~い!!」」」

 順番に並び抽選箱から紙を選び取ると、紙に景品名が書いてある。村人たちは大喜びで抽選箱に手を入れた。

「やった~! 最新人気ゲームソフトだ!」
「私は自動調理器!」
「騎士団長手編みのももひきだ!」
「きゃあ~!近衛兵の美麗お宝ポスター!」
「アイドルズンドコ仮面のコンサートチケットだ!」
「赤いトラクターだ!」

 などなど、実に様々な〈素敵なプレゼント〉を抱えて、ほくほくしながら大勢の村人たちは帰っていった。
 
 とりあえず地下牢に入り沙汰を待つことになったミランダ。

 魔物討伐のため精鋭騎士もいない、衛兵も少数になっていて、ミランダを地下牢に連れていく衛兵は一人だった。このチャンスをミランダが見逃すはずがなかった。

「あっ! あんなところにタコ踊りしてるイカが!」

「えっ? どこどこ? 世紀の大発見!……ぷぎゅう……」

 衛兵がミランダのベタな嘘に惑わされている一瞬に、ミランダの飛び蹴りが決まり、あっさり倒される新米衛兵。

 ミランダは気絶している衛兵のサーベルを借り、自分の手首を縛っていた縄を切ると、再び逃走した。
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