本当の貴方

松石 愛弓

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 ☆ エリオット視点


 エリックは、あっという間に夜会で結婚相手を見つけてきて婚約してしまった。
 もう、実家は弟のものだ。 もう、引き返せない。 

 まぁ、ターニャは僕に夢中だし、大丈夫だろう。


 ある日、ターニャの邸に招かれ、彼女の部屋にも入ることに。
 結婚前ということで彼女の侍女もついてきたが、部屋の扉が開かれると、僕は一瞬で逃げたくなった。

 豪奢な家具や敷物は素晴らしかった。が、カラフルな赤・白・ピンク・オレンジ色の蛇たちが、放し飼い?!

 数十匹の蛇たちが、シュルシュルと床を這っている。こちらを凝視している蛇も…あっ、目が合ってしまった! 二股に割れた舌をチロチロと動かされると、背筋がゾゾンと寒くなる。

 なんで放し飼いペットが蛇なんだ?! 可愛いワンコやニャンコでいいじゃないか! よりにもよって、大苦手の爬虫類…あの真っ赤な蛇はもしかして…?

「あれは…毒蛇じゃないのか?」
 僕の声は、恐怖に震えていた。

「ええ、そうですわ。私の可愛いパトリシアは、私を噛んだりしませんし、大好きなパトリシアに噛まれて毒が回っても本望ですわ♪」
 ターニャは幸せそうに言ってのけた。

 なんという、ヘビーなヘビ愛。
 しかし、君は本望でも、僕には全くヘビ愛は無いのだが。

「私の大好きなこの子たちをエリオット様に会わせたかったのです。とても愛らしいでしょう?」

 ターニャはニコニコしながら、近づいてきたピンク色の蛇を拾い上げ、首にかけた。 もう1匹のオレンジ色の蛇は腰に巻く。
 蛇皮100%の細ベルト…なんてことだ~!

 離婚原因のひとつと言われている〈価値観の違い〉をひしひしと感じる。
 まさか、こんな趣味があったなんて…。1㎜も想像できなかったよ!

 ターニャにドン引きしていると、大慌ての侍女長が部屋に飛び込んできた。

「お嬢様っ、大変です! 領地内の金鉱山に魔物の大群が現れました!」
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