7 / 14
7
しおりを挟む
☆エリオット視点
アリシアと婚約破棄した後、僕は父の部屋へ呼ばれた。
「エリオット、どういうつもりなのだ」
不機嫌な父と、
「アリシア嬢は綺麗で気立ての良い令嬢じゃないの。ドワーヌ伯爵家は有力貴族だし、つながりを持つことは我が伯爵家にも有益になるはずだったのに…」
残念がる母と、とりあえず参加の弟が、ソファに座って待っていた。
「父上、母上、すみませんでした。私はターニャ・ロンド嬢と結婚し、彼女の家に婿入りしようと思っています。ターニャ嬢は私をとても愛してくれていて、彼女から求婚してくれました。ロンド伯爵領には金鉱山があり、豊かな資源に恵まれています。この伯爵家を弟のエリックが継げば、エリックも安泰で、父上母上も安心してくださると思ったのです」
家族を思いやるような僕の言葉に、弟が目の色を変えた。
「本当ですか? 兄上! 僕に、この伯爵家を継がせてくださるのですか?」
エリックは勢いよく、ソファから立ち上がった。
「僕は次男で家督が継げないし、この先どうしていこうかとずっと悩んでいました。 この伯爵家を継げるなんて、夢みたいだ! 兄上、ありがとうございます。 あぁ、兄上の気が変わらないうちに婚約してしまおう。 花嫁探しに行ってきま~す!」
弟は大喜びで部屋を飛び出していった。
「まぁ、エリックったら、あんなに喜んで。 私もエリックの将来を心配していたから嬉しいけれど、まさかエリオットが婿入りしたいと言い出すなんて…」
母上は不思議そうに僕を見て、
「よほど、ターニャ嬢に惹かれているのだな」
父上は感心していた。
まぁ…逆玉だからね。
ターニャ嬢は、以前から僕に気があるようだった。
教室でも、廊下を歩いている時も、僕を熱っぽく見つめていた。
銀色の長い髪に蒼い瞳の小悪魔のような可愛らしい令嬢。ちょっと我儘なところもあるけど、そこがまた可愛い。
なにより、僕を好きだと言ってくれるし、自分から腕を絡めてきたり積極的だ。
いつも少し距離を置いて受け身の大人しいアリシアが、物足りなく思えるほどに。
でも、僕はアリシアと婚約中だったし、ターニャがアリシアの目を盗んで僕に接近してきても、それだけのことで終わるんだろうと思っていた。刹那的な秘密の恋だと。
それが、数日前、突然ターニャは僕に求婚してきた。
金鉱山から大量の金が採れるから、あなたは何もしなくても一生贅沢させてあげると。何でも好きなようにして構わないと。
そんな美味しい話を、僕は逃すことなどできなかった。
金色の長い巻き髪に紫色の瞳をしたアリシアはお人形のように可愛いけど、僕に夢中というわけでもない。
僕の伯爵領ではブドウの栽培をし、ワインを造って利益を出しているが、天候の良し悪しでブドウの収穫量やワインの味が変わるし、他にも自衛団の管理や、山のような書類に目を通さないといけないし、結構忙しい。
ターニャと結婚すれば、贅沢して、好きなことだけやって、気楽に暮らせるんだ。
アリシアには悪いが、僕の幸せのために犠牲になってもらうよ。
アリシアと婚約破棄した後、僕は父の部屋へ呼ばれた。
「エリオット、どういうつもりなのだ」
不機嫌な父と、
「アリシア嬢は綺麗で気立ての良い令嬢じゃないの。ドワーヌ伯爵家は有力貴族だし、つながりを持つことは我が伯爵家にも有益になるはずだったのに…」
残念がる母と、とりあえず参加の弟が、ソファに座って待っていた。
「父上、母上、すみませんでした。私はターニャ・ロンド嬢と結婚し、彼女の家に婿入りしようと思っています。ターニャ嬢は私をとても愛してくれていて、彼女から求婚してくれました。ロンド伯爵領には金鉱山があり、豊かな資源に恵まれています。この伯爵家を弟のエリックが継げば、エリックも安泰で、父上母上も安心してくださると思ったのです」
家族を思いやるような僕の言葉に、弟が目の色を変えた。
「本当ですか? 兄上! 僕に、この伯爵家を継がせてくださるのですか?」
エリックは勢いよく、ソファから立ち上がった。
「僕は次男で家督が継げないし、この先どうしていこうかとずっと悩んでいました。 この伯爵家を継げるなんて、夢みたいだ! 兄上、ありがとうございます。 あぁ、兄上の気が変わらないうちに婚約してしまおう。 花嫁探しに行ってきま~す!」
弟は大喜びで部屋を飛び出していった。
「まぁ、エリックったら、あんなに喜んで。 私もエリックの将来を心配していたから嬉しいけれど、まさかエリオットが婿入りしたいと言い出すなんて…」
母上は不思議そうに僕を見て、
「よほど、ターニャ嬢に惹かれているのだな」
父上は感心していた。
まぁ…逆玉だからね。
ターニャ嬢は、以前から僕に気があるようだった。
教室でも、廊下を歩いている時も、僕を熱っぽく見つめていた。
銀色の長い髪に蒼い瞳の小悪魔のような可愛らしい令嬢。ちょっと我儘なところもあるけど、そこがまた可愛い。
なにより、僕を好きだと言ってくれるし、自分から腕を絡めてきたり積極的だ。
いつも少し距離を置いて受け身の大人しいアリシアが、物足りなく思えるほどに。
でも、僕はアリシアと婚約中だったし、ターニャがアリシアの目を盗んで僕に接近してきても、それだけのことで終わるんだろうと思っていた。刹那的な秘密の恋だと。
それが、数日前、突然ターニャは僕に求婚してきた。
金鉱山から大量の金が採れるから、あなたは何もしなくても一生贅沢させてあげると。何でも好きなようにして構わないと。
そんな美味しい話を、僕は逃すことなどできなかった。
金色の長い巻き髪に紫色の瞳をしたアリシアはお人形のように可愛いけど、僕に夢中というわけでもない。
僕の伯爵領ではブドウの栽培をし、ワインを造って利益を出しているが、天候の良し悪しでブドウの収穫量やワインの味が変わるし、他にも自衛団の管理や、山のような書類に目を通さないといけないし、結構忙しい。
ターニャと結婚すれば、贅沢して、好きなことだけやって、気楽に暮らせるんだ。
アリシアには悪いが、僕の幸せのために犠牲になってもらうよ。
1
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?
失礼な人のことはさすがに許せません
四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」
それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。
ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。
おかえりなさい。どうぞ、お幸せに。さようなら。
石河 翠
恋愛
主人公は神託により災厄と呼ばれ、蔑まれてきた。家族もなく、神殿で罪人のように暮らしている。
ある時彼女のもとに、見目麗しい騎士がやってくる。警戒する彼女だったが、彼は傷つき怯えた彼女に救いの手を差し伸べた。
騎士のもとで、子ども時代をやり直すように穏やかに過ごす彼女。やがて彼女は騎士に恋心を抱くようになる。騎士に想いが伝わらなくても、彼女はこの生活に満足していた。
ところが神殿から疎まれた騎士は、戦場の最前線に送られることになる。無事を祈る彼女だったが、騎士の訃報が届いたことにより彼女は絶望する。
力を手に入れた彼女は世界を滅ぼすことを望むが……。
騎士の幸せを願ったヒロインと、ヒロインを心から愛していたヒーローの恋物語。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:25824590)をお借りしています。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる