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ある日の王宮
しおりを挟むとある国の王宮で、新婚の王太子夫妻が仲良く暮らしておりました。
「シャルル。どうしたのだ、具合が悪そうだが。大丈夫か?」
「ええ。サファーロ。お気になさらないで」
王太子夫妻がソファでそんな話をしていると、
『ぷぅ』
誰かが〇をしました。
臭いのショックで眩暈を起こし倒れるシャルル王太子妃。
侍女たちや執事は、
「私じゃない!」
「私じゃありませんわ!」
「何? その疑いの目は!」
と、大騒ぎ。
「もしや昨日のスィートポテトが原因では?」
「いやいや、ごぼうサラダも怪しい!」
「そんなことより換気が先だ! 一刻も早く空気を入れ替えなければ!」
侍女たちや執事は大急ぎで窓やドアを開けました。
清らかな外の空気が、室内をクリーンにしてゆきます。
「シャルル、しっかりするんだ! 誰だ一体、シャルルをこんな臭い目に遭わせたのは!」
シャルルの手を握り、心配するサファーロ王太子。
その様子を見て、侍女たちや執事はとても焦りました。
もしかして…この流れでいくと、不敬罪?!
屁をしたばかりに断罪されるのか?
屁が原因だなんて!
親兄弟に何と申し開きすればいいのか! 一族の恥と罵られるかも! 友達にも合わせる顔が無い!
そうだ…断罪される前に逃げてしまおぅ!
きっと心優しいシャルル王太子妃は見逃してくださるはずだ♪
「私、サロンの掃除をしてきます!」
「さっきやってたじゃないか… あっ、そうか! 私も手伝おう!」
「私も!」
すたこらさっさと光速で侍女と執事は逃げました。
「侍女たちは不敬だと言われると思ったのでしょうか? あんなに不自然にいなくなるなんて」
「私が屁ごときで不敬だと言うと思っているのか。 そこまで心は狭くないのだが…。しかしシャルル、大丈夫なのか? だいぶ空気は良くなってきたと思うが」
部屋でふたりきりになれたのをいいことに、手を握り見つめ合うラブラブなふたり。
甘い雰囲気の中、シャルルは恥ずかしそうに目を逸らし、
「あなたのせいですわ」
と言いました。
「えっ? 俺は屁などしていないぞ? 神に誓ったっていい!」
そんなことを誓われても、神様も困りそうです。
「違いますわ。私、赤ちゃんができましたの…」
「それは本当か? シャルル!」
「サファーロ!」
盛り上がったふたりがひしっと感動の抱擁をしようとした時、
ドアがばんっと開き、
「「「おめでとうございま~~す!!」」」
と、侍女たちと執事が乱入してきました。
甘い雰囲気ぶちこわしの所業にサファーロが、
「モーリス! また覗いていたのか~!」と叫ぶも、
「「「ばんざ~い!ばんざ~い!ばんざ~い!」」」
歓喜の渦にのみこまれてしまうのでした。
嬉しそうなシャルルを見て、つい一緒に微笑むサファーロでした。
*******
「もふもふの銀猫は公爵令嬢に恋をする」のその後の登場人物だったりします。
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