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しおりを挟むいつの間にか、空には星が瞬いていた。
空を埋め尽くすような、無数の小さな光。
田舎の農場地から見上げる広い夜空は、静かでとても美しい。
ここから、出てゆける。
隣国で、大好きなアーサー様と暮らせるなんて。
早く、その日が来ればいいのに。
うっとりと夜空を見つめていると、
「…今すぐ行こうか。隣国へ。明日になれば、また何が起こるか分からない。僕の意見を無視した侍女長を問い詰めても、上手く言い逃れされるだけだろうし。話にならない相手には関わらず、動ける間に移動したほうがいいのかもしれない。エレンに必要な物は向こうで買い揃える。僕は今から部屋を片してくるから、とりあえず、エレンはここに入っていてくれ」
アーサー様がマジックバッグから取り出したのは、可愛いドールハウス。
1/12スケールくらいの大きさで、窓からヨーロッパ調の家具や絨毯が見える。ピアノやロッキングチェアもある、とても素敵なお部屋。
「気に入った?」
「はいっ♪」
アーサー様の魔法で小人になり、魔法で洗浄してもらった私は、ドールハウスに入ってゆく。
フカフカのソファーに座ると、気持ちよくて、そのまま眠ってしまった。
しばらくして目が覚めると、ソファーの前にある大きなテーブルの上には、たくさんのケーキやジュース、果物、お肉と野菜がたくさん入ったスープ、サンドイッチなどが並んでいた。
メモも置いてあって、『たくさん食べて太りなさい』と書いてあった。
「アーサー様…」
彼の気遣いに心が温まってゆく。
窓の外は、夜空が見えない。
ここは、アーサー様のマジックバッグの中なのかも。
私は彼の言葉に甘えて、感謝しつつ食べ始めた。
どれもこれも、とても美味しくて、食べるのが止まらない。
信じられないくらいたくさん食べて、満足して、幸せな気持ちでフカフカの素敵なベッドに沈んだ。
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