上 下
9 / 17

9

しおりを挟む
「あ~♪ 美味かったな~」
 朝食の後、晴れた空を飛んでいるマリーたち。
 銀狼ライの背中は、極上のもふもふで温かくて乗り心地満点だ。
 
 ジャックの頭や肩の上では、満腹で丸々太ったインコたちがのんびりと寛ぎ、ジャックは少し重そうだ。
「初めて森で会った時は、インコ連れてなかったよね?」マリーが訊くと、
「マリーを探すのに呼び出して協力してもらったんだよ。マリーを見つけてくれたのはいいが、甘え癖がついたみたいで…。インコが重い」と、猫背になるジャック。

「大丈夫? ライも重いよね? 私たち二人も乗せてくれて」
 心配でマリーがライに聞いてみると、
「いや? おまえたち2人くらい何ともない。あと、20~30人でもいけるぞ」

 ライの余裕の発言に、メスインコたちが嬌声を上げる。
「キャ~♪ライ様ステキ~!」
「力持チ ナノネ~!」
「カッコイイ~!」
「何処カノ 軟弱デ ソコソコノ 誰カトハ違ウワ~!」

「悪かったな、軟弱なそこそこの男で!」
 シャルロットの放った『そこそこの男』発言は、しっかりインコたちに受け継がれてしまったようだ。
 男らしいライに比べ、器の小っちゃい男だと思われたくないジャックは、インコが重くないふりをして見栄を張った。
「太ったインコが何羽乗ろうと重いわけないだろ!ははは!」
「「「ホント~♪」」」
 大喜びのインコたちは、食後の運動にプロレスを始めた。

「ちょっ、おまえら、マジか!」
 ジャックの頭や肩や背中の上でピョンピョンと跳ね回り、キックを楽しむインコたち。
 後悔先に立たずである。

 そうこうしていると、ハゲワシの群れが近づいてきた。
 なんだなんだ?
 山賊の次はハゲワシか?
 満腹インコは戦力にならなさそうだし(普段から)
 なんて、ドキドキしていたら、ハゲワシは道を尋ねてきただけだった。

「ところで、家の方にはちゃんと連絡してるのか?」
 ライがジャックに尋ねる。
「もちろんだ!インコAとインコBに手紙を届けるように言ってきかせた。インコAとBは真面目なインコだから、きっと、うちとマリーの実家に手紙を届けてくれるはずだ。インコZとインコYはあまりアテにならないのだがな!」

 ジャックは数十羽のインコの性格を把握しつくしているようだ。
 しかし数十羽もいると、凝った名前を付けても覚えきれないのか、A~Zと呼んでいるらしい。とても手抜きだ。

「それから、俺の友人にも手紙を送ったんだ。シャルロットの理想に近い男なんだけど、以前からシャルロットを気に入ってるようだったから交際を勧めた。どういう理由であれ、婚約破棄にしたままでは彼女に悪いからな。彼とはシャルロットも面識があるし、多分うまくいくと思うんだ」

 ジャックの言葉を聞いて、マリーはホッとした。
「そう。私もシャルロットの事は気になっていたの。前世では私が気付かないうちに嫌な思いをさせてしまって、今世は幸せになってほしいと思っていたのよ。彼女に、そんな良い人を紹介してくれたのね。ありがとう、ジャック」
 心のつかえがなくなり、罪悪感から解放されるマリーだった。

 雲を抜けると眼下には綺麗な花畑が広がっていた。
「きれ~い!」
 マリーが歓声を上げ、ライはゆっくり花畑へ着地した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

『わたくしを誰だとお思い?』~若く美しい姫君達には目もくれず38才偽修道女を選んだ引きこもり皇帝は渾身の求婚を無かったことにされる~

ハートリオ
恋愛
38才偽修道女… 恋や結婚とは無縁だと納得して生きて来たのに今更皇帝陛下にプロポーズされても困ります!! ☆☆ 30年前、8才で修道院に預けられ、直後記憶を失くした為自分が誰かも分からず修道女の様に生きて来たアステリスカス。 だが38才の誕生日には修道院を出て自分を修道院に預けた誰かと結婚する事になる――と言われているが断るつもりだ。 きっと罰せられるだろうし、修道院にはいられなくなるだろうし、38才後の未来がまるで見えない状態の彼女。 そんなある夜、銀色の少年の不思議な夢を見た。 銀髪銀眼と言えばこの世に一人、世界で最も尊い存在、カード皇帝陛下だけだ。 「運命を… 動かしてみようか」 皇帝に手紙を出したアステリスカスの運命は動き始め、自分の出自など謎が明らかになっていくのと同時に、逆に自分の心が分からなくなっていき戸惑う事となる。 この世界で38才は『老女』。 もはや恋も結婚も無関係だと誰もが認識している年齢でまさかの皇帝からのプロポーズ。 お世継ぎ問題がまるで頭に無い皇帝は諦める気配がなく翻弄される中で自分の心と向き合っていく主人公は最後に―― 完結済み、 1~5章が本編で、 6章はこぼれ話的な感じで、テネブラエ公話が少しと、アザレア&レケンス姉弟(主にレケンス)話です。 *暴力表現、ラブシーンを匂わせる表現があります。 *剣、ドレス、馬車の緩い世界観の異世界です。 *魔法が普通ではない世界です。 *魔法を使えた古代人の先祖返りは少数だが存在します。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました

葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。 前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ! だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます! 「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」 ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?  私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー! ※約六万字で完結するので、長編というより中編です。 ※他サイトにも投稿しています。

処理中です...