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もふもふの銀猫
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空が夕暮れの美しいグラデーションに染まってゆく。
朱色の夕焼けが揺れながら名残惜しそうに沈んでゆくのを、サファーロの隣で見れて幸せだとシャルルは思った。
―――サファーロ様は爵位の差を気にしていつかは身を引くおつもりなのかもしれないけど、私はサファーロ様以外の人なんて考えられない。
正式な夫婦になれなくても、事実婚という形はとれないのかしら…。
そんなこと、きっと両家の親が許さないわね…。
この旅が終わっても、サファーロ様は私に会ってくださるかしら…。
もし…サファーロ様に会えなくなったら、私は修道女になろう。
そして一生、サファーロ様を想い続けよう…。
シャルルは、サファーロと一緒に居られる時間は限られていると悟り、この貴重な時間を一分一秒でも大切にしようと思った。
綺麗に舗装された石畳を抜け、広場の噴水の前を歩いていると、もふもふした可愛い猫がベンチに座っているのに気付く。
ポメラニアンを銀毛にしたような姿の猫だ。翡翠色のつぶらな瞳でシャルルをじっと見ている。
「ニャア」
まるで、こっちへ来いと言っているような、ふてぶてしい鳴き方だ。
シャルルは引き寄せられるように猫の傍へ歩いていった。
銀色の毛、翡翠色の瞳は、まるでサファーロの化身のようだ。
サファーロは今、シャルルのそばにいるのだから、この猫は全く別の個体なのだが、シャルルはサファーロの分身を捕まえるような気持ちで銀色の猫を抱きしめていた。
サファーロを抱きしめたい気持ちが、銀猫に向かってしまう。
サファーロ本人に、抱きしめたい、なんてシャルルには言えない。
でも、猫になら大胆になれた。
シャルルは、サファーロへの愛情を銀猫に注ぎ込むように、抱き締め、慈しむように背中を何度も撫でた。
見知らぬ人からの過剰なスキンシップに驚いた猫は、シャルルの腕をすり抜け逃げてしまった。
「お嬢様。そんなに猫がお好きだったんですか?知らなかったです~」
エミリーがすごく驚いている。
「私も、知らなかった…」
きっと、あの猫が銀毛で翡翠色の目をしていなければ、こんなことはしなかった。
サファーロへの想いがどんどん大きくなっていることを実感してしまう。
「あの猫、首輪をしてなかったですね。
飼い主がいないのなら飼ってあげては?探してきましょうか?」
サファーロが訊いてくれたが、シャルルは首を振った。
「あの猫ちゃんはこの街を気に入ってるのでしょう。
また私の前に現れ近づいてきてくれることがあれば考えます。
サファーロ様、お気遣い感謝します」
きゅるるるるるる…るん♪
「あっ、すみません。お腹が空いちゃって…」
モーリスが気まずそうに頬を掻く。
「なんだか面白いお腹の音でしたね♪」
「あっ、ひどいな。エミリーさん」
「ごめんなさ~い。あまりにも可愛い音だったのでびっくりして!」
「ハハ…そうですか? ^^」
単純なモーリスだった。
「あっ! あそこに食堂があります、サファーロ様!」
モーリスがビシィッ!と指を指した先には、「狐の和み亭」という店の看板があった。
「シャルル嬢、あの店でもいいですか?」
「はい。私、食堂なんて初めてでワクワクします」
シャルルの返事を聞いたモーリスは、食堂へと一直線に駆け出した。
まるで、うっかり八〇衛のようである(by 水戸〇門)
「そんなに空腹だったのか…」
サファーロが感心していると、
くぅぅぅぅぅぅん♪
今度はエミリーの腹が鳴ったが、サファーロとシャルルは聞こえなかったふりをしてあげた。
朱色の夕焼けが揺れながら名残惜しそうに沈んでゆくのを、サファーロの隣で見れて幸せだとシャルルは思った。
―――サファーロ様は爵位の差を気にしていつかは身を引くおつもりなのかもしれないけど、私はサファーロ様以外の人なんて考えられない。
正式な夫婦になれなくても、事実婚という形はとれないのかしら…。
そんなこと、きっと両家の親が許さないわね…。
この旅が終わっても、サファーロ様は私に会ってくださるかしら…。
もし…サファーロ様に会えなくなったら、私は修道女になろう。
そして一生、サファーロ様を想い続けよう…。
シャルルは、サファーロと一緒に居られる時間は限られていると悟り、この貴重な時間を一分一秒でも大切にしようと思った。
綺麗に舗装された石畳を抜け、広場の噴水の前を歩いていると、もふもふした可愛い猫がベンチに座っているのに気付く。
ポメラニアンを銀毛にしたような姿の猫だ。翡翠色のつぶらな瞳でシャルルをじっと見ている。
「ニャア」
まるで、こっちへ来いと言っているような、ふてぶてしい鳴き方だ。
シャルルは引き寄せられるように猫の傍へ歩いていった。
銀色の毛、翡翠色の瞳は、まるでサファーロの化身のようだ。
サファーロは今、シャルルのそばにいるのだから、この猫は全く別の個体なのだが、シャルルはサファーロの分身を捕まえるような気持ちで銀色の猫を抱きしめていた。
サファーロを抱きしめたい気持ちが、銀猫に向かってしまう。
サファーロ本人に、抱きしめたい、なんてシャルルには言えない。
でも、猫になら大胆になれた。
シャルルは、サファーロへの愛情を銀猫に注ぎ込むように、抱き締め、慈しむように背中を何度も撫でた。
見知らぬ人からの過剰なスキンシップに驚いた猫は、シャルルの腕をすり抜け逃げてしまった。
「お嬢様。そんなに猫がお好きだったんですか?知らなかったです~」
エミリーがすごく驚いている。
「私も、知らなかった…」
きっと、あの猫が銀毛で翡翠色の目をしていなければ、こんなことはしなかった。
サファーロへの想いがどんどん大きくなっていることを実感してしまう。
「あの猫、首輪をしてなかったですね。
飼い主がいないのなら飼ってあげては?探してきましょうか?」
サファーロが訊いてくれたが、シャルルは首を振った。
「あの猫ちゃんはこの街を気に入ってるのでしょう。
また私の前に現れ近づいてきてくれることがあれば考えます。
サファーロ様、お気遣い感謝します」
きゅるるるるるる…るん♪
「あっ、すみません。お腹が空いちゃって…」
モーリスが気まずそうに頬を掻く。
「なんだか面白いお腹の音でしたね♪」
「あっ、ひどいな。エミリーさん」
「ごめんなさ~い。あまりにも可愛い音だったのでびっくりして!」
「ハハ…そうですか? ^^」
単純なモーリスだった。
「あっ! あそこに食堂があります、サファーロ様!」
モーリスがビシィッ!と指を指した先には、「狐の和み亭」という店の看板があった。
「シャルル嬢、あの店でもいいですか?」
「はい。私、食堂なんて初めてでワクワクします」
シャルルの返事を聞いたモーリスは、食堂へと一直線に駆け出した。
まるで、うっかり八〇衛のようである(by 水戸〇門)
「そんなに空腹だったのか…」
サファーロが感心していると、
くぅぅぅぅぅぅん♪
今度はエミリーの腹が鳴ったが、サファーロとシャルルは聞こえなかったふりをしてあげた。
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