魔物の森に捨てられた侯爵令嬢の、その後。

松石 愛弓

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「いつか別れる日が来るかもしれないと怯えて貴女あなたと付き合わなかったら、きっと僕は後悔します」

 カイン王子は立ち上がり、微笑みながら話を続けた。

「たとえ短い期間だったとしても、貴女と一緒に居たい。貴女と同じ景色を見て、同じことに感動し、同じものを食べ、笑い合って、楽しい時間を過ごしたい。もし、いつか貴女に、他に好きな人が出来て別れることになったとしても、貴女と一緒に過ごした楽しい思い出は僕の心の中に宝物として残るし、貴女が幸せなら、僕も幸せだって思えるような気がするんです。……きっと、楽しかった分、別れはとても辛くて悲しいものになるだろうけど……」

 まっすぐに私を見て、真剣に語るカイン王子に胸がときめく。

「あなたを……裏切るわけないじゃないですか……。私だって、ずっと一緒に居たい……」

「ルナリス嬢!」

 初めて、嬉し涙を流した。

 こんなに、誰かに愛されたことはなかった。

 零れる私の涙を、綺麗なハンカチでそっと拭ってくれるカイン王子。

 そのまま、彼の胸の中に包み込まれる。

 彼の心臓の音が、心地良い。


貴女あなたに冷たくした人たちの分も、僕が何人分でも貴女を愛するから。だから悲しまないで、ルナリス」

 ぎゅっと、私を抱きしめる力が強くなる。

 両親のことを言っているの? 冷たく厳しかった両親の分も、私を愛してくれるの?

 冷え切った心が、少しずつ温められてゆく。

 あなたを信じたい……。

 私は彼の背中に、そっと手を回した。
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