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 銀色の短い髪が風に揺れて、エメラルドのような美しい瞳は、じっと私を見つめている。

「ルナリス嬢。ずっとオウムのふりをしていたことを詫びる。許してくれ」

 彼は深く頭を下げた。

「あなたは、もしかして……」

 彼の顔には見覚えがあった。

 純白の布に見事な金糸の刺繍が施されたこの衣装は、まるで王家の方が召されるような気品に満ちている。

「私は隣国エドワーナ王国第二王子 カイン・ド・エドワーナ。ルナリス嬢の通う王立学園に一時的に留学していたことがある。同じ教室で隣の席に座ったその日に恋に落ち、一途にあなたを想い続け、今に至る」

 そんな真面目な顔して言われても。と思いつつ、殿下に淑女の礼をする。

「あの時、貴女あなたにはすでに婚約者がいた。貴女を諦めなければと思いながらも諦めきれず、婚約者のいる貴女に近づくこともできず、そっと見守るだけの日々が続いた。ネイル王子を羨ましく思い観察していると、彼は男爵令嬢と浮気していることが分かった。さらに、その男爵令嬢はネイル王子の他に4人も恋人がいた。5股をかけられながら男爵令嬢に夢中になっているネイル王子を見ていると、待っていればそのうち私にもチャンスが巡ってくるのでは?と思うようになり、待ち続けた結果、ネイル王子との破談の噂が流れ、僕はいてもたってもいられずすぐに貴女のもとへ駆け付けたかったが、あまり話したことのない僕が突撃訪問しては驚かれるかもしれない。とりあえずオウムの姿に変身して、そっと見守ろうと思っていたら、ルナリス嬢が声を掛けてくれて、そのうち友達みたいになって、気付けばふたりきりで婚前旅行をし、昨夜は貴女に求められ同衾まで……。待っててよかった!」

 怒涛のごとく語り尽し、感涙するカイン王子。

 同衾もなにも、昨夜あなたオウムでしたよね?

 呆然とする私の前に、カイン王子は優雅にひざまずく。

「順番は逆になってしまったが、僕と結婚してください。貴女の気持ちを大事にしたいので、貴女が僕を受け入れられるまで、オウムの姿で今まで通りのお付き合いでも構いません」

 いつの間に用意していたのか、大きな薔薇の花束を差し出すカイン王子。キラキラと輝く瞳が眩しい。

「それでは、私の都合に合わせてばかりではないですか。私がオウムでいてほしいと言ったら、ずっとオウムの姿でいると言うのですか?」

「はい!」

 無垢な笑顔が眩しすぎる。

「……私は、浮気されるような退屈な女なのですよ。あなたもいつか私に飽きるかも……」

 ネイル王子に浮気されてから、私は更に自信を無くしていた。また捨てられたくないと臆病になってしまう。

 そんな私に、カイン王子は優しく語りかけてくれた。

「……ただ単に、ネイル王子の好みのタイプが男爵令嬢のような男をおだてる小悪魔タイプだったのではないでしょうか? でも僕は5股かけるような女性は嫌だな。 ルナリス嬢のように一途なタイプが好きなんです。 それに……」

 カイン王子は真面目な表情かおで言った。

「もし今後、ルナリス嬢が僕以外の人を好きになったとしても、僕は許しますよ」

 そう言って、微笑む彼。

 なぜそんなことを言うの? 

 カイン王子の気持ちが分からない……。
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