9 / 17
9
しおりを挟む
あらかじめ用意しておいた町娘風のワンピースを着て、小さなカバンひとつで旅に出た。
レースもリボンもついてないシンプルなデザインのワンピースに、長いはちみつ色の髪は三つ編み、ローヒールの靴で歩けば、誰も侯爵令嬢だなんて思わない。
「ルナリス。ソノ赤イワンピース、カワイイ! ミツアミモ、似合ッテルヨ!」
オウムさんが市場を並んで歩きながら褒めてくれる。
「ありがとう。オウムさんのオレンジ色の羽も素敵よ」
「アッ、ヤッパリ? 照レルナ~」
嬉しそうに羽で頭を掻くオウムさんのいる方角から、濃厚ソースの甘くて香ばしい匂いが漂ってきた。
「あっ! あれが噂の串焼きというものね? 焼きたて熱々に噛りつくのがたまらないとメイドたちが話してるのを聞いたことがあるわ! 特にソースは美味しすぎて1滴も残せないと。遂に…遂に私も串焼きというものに出会える時が来たのね~~!」
今まで王妃教育が忙しく、何処にも遊びに行けなかった私には、見るもの全てが新鮮だった。
大きな市場を行き交う人々の賑わい。威勢のいい店主たちの掛け声。
植物の蔓で編んだ大きな籠には、山のように果物が盛られて甘い香りを放っている。
新鮮な魚たちが大きな台の上にずらりと並び、ドライフルーツを詰めた瓶や、見たこともない不思議な野菜たちが溢れている。
この地方でしか獲れないといわれている珍しい魚や貝の網焼き。
柑橘類の搾りたてジュースの爽やかな香り。甘い焼き菓子の香ばしい匂い。
初めて間近で見るもの全てに、感動が止まらない。
全部は食べれないから、この中から選ばなくちゃ……迷うわぁ~!
小腹が空いてきた私が真剣に悩んでいたその時、突然、オウムさんが通りすがりのチンピラっぽい少年を捕まえた。
「なにするんだよっ!」
オウムさんは暴れる少年を軽く足で抑え込むと、
「ルナリスノ、財布ヲ返セ」
少年のポケットから財布を取り返した。
一部始終を見ていた市場の人たちは歓声を上げた。
「オウムなのに、やるじゃないか!」
「お嬢ちゃんを守るナイトだな!」
「かっこいいぞ~~!」
一躍、英雄になってしまったオウムさんは嬉しそうに空を舞った。
「ソウダヨ! 僕ハ、ルナリスヲ守ル、騎士ナンダ!」
大勢の拍手を浴びながら、悠々と私の腕に舞い降りてきたオウムさん。
結局、オウムさんのリクエストで、私たちは甘い果物を買って仲良く食べることにしました。
レースもリボンもついてないシンプルなデザインのワンピースに、長いはちみつ色の髪は三つ編み、ローヒールの靴で歩けば、誰も侯爵令嬢だなんて思わない。
「ルナリス。ソノ赤イワンピース、カワイイ! ミツアミモ、似合ッテルヨ!」
オウムさんが市場を並んで歩きながら褒めてくれる。
「ありがとう。オウムさんのオレンジ色の羽も素敵よ」
「アッ、ヤッパリ? 照レルナ~」
嬉しそうに羽で頭を掻くオウムさんのいる方角から、濃厚ソースの甘くて香ばしい匂いが漂ってきた。
「あっ! あれが噂の串焼きというものね? 焼きたて熱々に噛りつくのがたまらないとメイドたちが話してるのを聞いたことがあるわ! 特にソースは美味しすぎて1滴も残せないと。遂に…遂に私も串焼きというものに出会える時が来たのね~~!」
今まで王妃教育が忙しく、何処にも遊びに行けなかった私には、見るもの全てが新鮮だった。
大きな市場を行き交う人々の賑わい。威勢のいい店主たちの掛け声。
植物の蔓で編んだ大きな籠には、山のように果物が盛られて甘い香りを放っている。
新鮮な魚たちが大きな台の上にずらりと並び、ドライフルーツを詰めた瓶や、見たこともない不思議な野菜たちが溢れている。
この地方でしか獲れないといわれている珍しい魚や貝の網焼き。
柑橘類の搾りたてジュースの爽やかな香り。甘い焼き菓子の香ばしい匂い。
初めて間近で見るもの全てに、感動が止まらない。
全部は食べれないから、この中から選ばなくちゃ……迷うわぁ~!
小腹が空いてきた私が真剣に悩んでいたその時、突然、オウムさんが通りすがりのチンピラっぽい少年を捕まえた。
「なにするんだよっ!」
オウムさんは暴れる少年を軽く足で抑え込むと、
「ルナリスノ、財布ヲ返セ」
少年のポケットから財布を取り返した。
一部始終を見ていた市場の人たちは歓声を上げた。
「オウムなのに、やるじゃないか!」
「お嬢ちゃんを守るナイトだな!」
「かっこいいぞ~~!」
一躍、英雄になってしまったオウムさんは嬉しそうに空を舞った。
「ソウダヨ! 僕ハ、ルナリスヲ守ル、騎士ナンダ!」
大勢の拍手を浴びながら、悠々と私の腕に舞い降りてきたオウムさん。
結局、オウムさんのリクエストで、私たちは甘い果物を買って仲良く食べることにしました。
0
お気に入りに追加
166
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~
汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。
――というのは表向きの話。
婚約破棄大成功! 追放万歳!!
辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19)
第四王子の元許嫁で転生者。
悪女のうわさを流されて、王都から去る
×
アル(24)
街でリリィを助けてくれたなぞの剣士
三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける
▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃
「さすが稀代の悪女様だな」
「手玉に取ってもらおうか」
「お手並み拝見だな」
「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」
**********
※他サイトからの転載。
※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。
王太子に婚約破棄され塔に幽閉されてしまい、守護神に祈れません。このままでは国が滅んでしまいます。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
リドス公爵家の長女ダイアナは、ラステ王国の守護神に選ばれた聖女だった。
守護神との契約で、穢れない乙女が毎日祈りを行うことになっていた。
だがダイアナの婚約者チャールズ王太子は守護神を蔑ろにして、ダイアナに婚前交渉を迫り平手打ちを喰らった。
それを逆恨みしたチャールズ王太子は、ダイアナの妹で愛人のカミラと謀り、ダイアナが守護神との契約を蔑ろにして、リドス公爵家で入りの庭師と不義密通したと罪を捏造し、何の罪もない庭師を殺害して反論を封じたうえで、ダイアナを塔に幽閉してしまった。
【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから
gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる