異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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シシオさんとシシ子さん その2

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 シシオさんの封筒をじっと見つめるヤギ彦さん。

「これは……自然由来の植物のみで作られた貴重な紙じゃないかぁ~! 混ぜ物なしの、こんなにピュアな紙には滅多にお目にかかれない……クンクン……植物繊維の良い匂いがする♪」

 植物繊維100%の貴重な高級紙に感動とドキドキが止まらないヤギ彦さん。

 くんくん。

 ぺろぺろ。

 ぱっくんちょ♪

 もぐもぐもぐ……♪

「あぁ……広葉樹の深い味わいと清々しい森の香り……たまりまへんなぁ~♪」

 うっとりと陶酔するヤギ彦さんは最高級紙の甘い誘惑に勝てなかったようです。

 そして、味わい尽くしてから気づいたのでした。

「あ~~~っ! シシオくんの手紙、食べちゃったよ~~! ど~しよ~、ど~しよ~!?」

 悩みながらグルグル回っています。どうやら悪気は1ミリも無く、あったのは食欲だけのようです。

「シシオくんは、シシ子さん宛のラブレターだと言っていた……ならば、シシオくんの愛をシシ子さんに伝えればラブレターの代わりになるはずだ♪」

 ひゃっほう♪と、名案が浮かんだとばかりに駆け出すヤギ彦さん。

 しばらく走ると、運よくシシ子さんに出会えました。

「シシ子さ~~ん!」

 嬉しそうに駆け寄るヤギ彦さん。

「どうしたの? ヤギ彦さん」

 とまどうシシ子さんにヤギ彦さんは、シシオさんの愛をとてもロマンティックに、ゴージャスに、思いつく限りの美辞麗句てんこ盛りで伝えたのでした。

「んまぁぁぁぁぁっ!! シシオさ~~ん! 愛しのシシ子がすぐに会いに行くわ~~っ!!」

 イノシシらしく獣道を猪突猛進するシシ子さん。

 猛スピードでシシオさんを見つけました。


「シシオさ~~ん♪」

 ド~~~ン!!

「あ~~れ~~!!」

 勢いあまって、シシオさんに体当たりしたようです。

 空高く飛ばされたシシオさんが落下する地点に目星を付け、先回りして待ち構えるシシ子さん。

 空から降ってきたシシオさんに告白します。

「私も、シシオさんが好き~~っ!」

「シシ子さんっ♪」

 ド~~~ン!!

「あ~~れ~~!!」

 またもやシシ子さんの愛の体当たりを食らうシシオさん。

「待って~~! シシオさ~~ん!」

 またもや落下地点に先回りするシシ子さん。

 空から降ってくるシシオさんは、自分を待っているシシ子さんの姿に感動するのでした。

「シシ子さ~~ん! 好きだ~~!」

「シシオさ~~ん!!」

 ド~~~ン!!

「あ~~れ~~!!」

「あなたへの愛が止まらないの~!!」

「こんなに大きな力で愛してくれるのかいっ? 僕は幸せだ~!!」

 ド~~~ン!!

「あ~~れ~~!!」

 愛を抑えきれずに体当たりを繰り返し、さらに愛を深めてゆくふたりは、キューピッドのヤギ彦さんにとても感謝しました。

 結果オーライな結末にホッとしつつも、手紙を食べてしまったお詫びに、ヤギ彦さんはヤギミルクで作ったハート形のチーズをそっとふたりに届けたのでした。
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