異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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綿あめの雲

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 爽やかな秋風が流れる青空の中。
 綿あめで作った大きな雲に乗っているカイルと私。

 子供の頃から一度は乗ってみたかった『綿あめの雲』は、フワフワのフカフカで上質の布団みたい。
 コロンコロンと雲の上を転がっては、空からの景色を楽しみ、ついでに綿あめを食べる。

「綿あめって、すぐに溶けちゃうけどラブリーよね~」
「この綿あめ雲は溶けにくい細工をしてるの?」
「もちろんよ~。でも味はそのままで、肌にべたつかない加工もしてるのよ~」
「ルカ、綿あめ雲を満喫してるね」
「そうよ。大きめに作ったから雲の上でコロコロし放題なのよ~。でんぐり返しにバック転も出来ちゃうわ♪」
 
 アハハ、ウフフ、な雰囲気で綿あめ雲を楽しんでいると、
 突然、ズボッ! と、綿あめ雲の底から長いクチバシが現れた!

「何? このクチバシは!」
 思わず、その細長いクチバシを掴んでみると、

 ズボ!ズボ!ズボ!と、綿あめ雲のあらゆるところから長いクチバシが生えてきて、モグモグと穴を開けるように綿あめ雲を食べだした!
 みるみる穴だらけになってゆく綿あめ雲。
 どうやら、甘いもの好きな『アマイシロトリ』さんの集団に襲われている模様。
 50羽くらいはいるだろうか。翼を広げれば2mくらいはありそうなスマートな白い鳥たちが、綿あめ雲を食べながら私やカイルのことをチラ見している。

「ルカ! 僕たち、綿あめの甘い匂いがするから…」
「甘くて美味しそうだと思われてるのかしら?!」

 あっという間に綿あめ雲を完食すると、爪楊枝でクチバシをシーシーした後、腹をさすって、カイルと私をロックオンしたアマイシロトリの集団。
 20畳の綿あめ雲を完食したのに、まだ足りないなんて。

「なんて腹ペコマンボなの!」
 私が呟くと、

『マンボ?』
 アマイシロトリの集団は顔を見合わせ、突然、秋の空にマンボのBGMが鳴り響く。

 チャチャチャチャチャ! チャチャチャチャチャ!
 ウ~~~ッ、マンボ!
 チャ、チャチャチャッチャ、チャ、チャチャチャッチャ、チャ、チャチャチャッチャ、チャ、チャチャチャッチャ、
 チャチャチャチャチャ! チャチャチャチャチャ!
 ウ~~~ッ、マンボ!

 アマイシロトリたちはマンボを踊りながら光速で追いかけてくる。
 なんて器用なの!
 必死のパッチで逃げる私たち。
 しかし、お気に入りの綿あめ雲を食べられちゃって腹が立ったけど、鳥さんにマンボを踊られたんじゃ笑っちゃって怒れないわ~。

「カイル! 私、スイーツを作るわ!」
「この状況で?」
「綿あめの後は、これを食べたいって思っていたのよ~!」

 マジックバッグから小麦粉とベーキングパウダーを取り出すと、大量の粉を空中で振るう!
 ふふふ。白い粉がカーテンのように広がって、私たちの姿が見えないようね。

「水!砂糖!卵!蜂蜜!」
 粉のカーテンの中に次々と材料を放り込むと、

 ヴォォォォォォォッ!

 風魔法で大きな渦巻をつくり、スイーツの材料たちを混ぜ合わせる。
 とろっと仕上がった液体を、火魔法でふんわりと丸い形に焼けば、蜂蜜の甘い匂いに悶絶するアマイシロトリたち。どんだけ甘いものが好きやね~ん!

「時短のため、今日は缶詰のあんこを使いま~す♪」
 
 巨大サイズのあんこの缶詰をパカッと開けると、丸く焼き上げた生地にあんこを乗せ、上からも丸く焼いた生地を乗せる。

 そう。皆さま、何だかおわかりですね!

「どらやきで~~す!」

 オォ~~~ッ!!

 カイルとアマイシロトリたちから、賞賛の拍手と歓声が贈られる。

 では、みんなで出来立てホカホカのどらやきをいただきましょう♪

「おいし~~! やっぱり秋はどらやきよね~!」
 美味しさに歓喜していると、
「はい、お茶」
 カイルが緑茶を淹れてくれる。急須さばきもイケてるわ、カイル。
「カイルって、気が利くのね」
「いつもルカのことを見てるから、何が欲しいかなんてすぐに分かるよ」
「まぁ♪」

 秋の涼しい風に吹かれながら、皆で食べたどらやきはとても美味しかったのでした♪

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