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完熟リンゴジャム
しおりを挟むどこまでも広がる青い空をカイルと一緒に飛んでいると、真っ赤に熟した美味しそうなリンゴたちが山に向かって飛んでいくのが見えた。
四方八方から集まってくるリンゴたちは、まるで、ふわふわと空中散歩を楽しんでいるようだ。
完熟リンゴの甘く爽やかな香りに誘われて、気付けばリンゴと一緒に空を飛んでいた。
艶々と輝き、揺れながら、芳醇な香りを振りまく完熟リンゴたち。
かぷっ♪と、かじりつきたくなっちゃう。
リンゴたちは山を越え、谷へ降りると、周りを畑に囲まれた一軒家に辿りついた。
レンガ造りの小さな可愛いお家の煙突からは、もくもくと煙が上がっている。
開け放たれたドアは、まるでリンゴたちを待っていたかのようだ。
たくさんの空飛ぶリンゴたちは吸い込まれるように家の中へと入ってゆくと、用意されていた大きな籐の籠に綺麗に並んでゆく。
キッチンでは、魔女のおばあさんが大鍋でグツグツとリンゴを煮ていた。
煮詰められたリンゴの甘酸っぱい匂いと熱い湯気が鼻孔をくすぐり、なんだかとても幸せな気持ちになってくる。
魔女のおばあさんは大鍋で煮ているリンゴジャムを小皿に少し取って味見をすると、満足そうに頷いた。
「ちょうど良い甘さで、コクもあって、最高の出来だ♪」
目をつむり、幸せそうに美味しさを堪能している魔女のおばあさん。
ドアの外で、カイルと私も目を閉じて、リンゴジャムの芳醇な香りを堪能していた。
「おや? かわいい子供たちが来てくれたのかい? そんなところにいないで入っておいで」
魔女のおばあさんが優しく笑ってくれたので、私とカイルはお邪魔することにした。
「ちょうどジャムを作っていたんだよ。魔法で収穫した完熟リンゴたちがたくさんやってくるよ」
ドアからたくさんのリンゴたちが、元気よく飛びながら入ってくる。
「魔法でパパっと作ることもできるんだけど、こうやって、ジャムを鍋で煮てヘラでゆっくり混ぜる工程が好きなんだ。手間暇かけた分だけ、もっと美味しくなるような気がして」
魔女のおばあさんは、愛し気にジャムをヘラで丁寧に混ぜる。
ブクブクと熱がジャムを焦がそうとして、そうはさせるかと火を弱めヘラでひたすらねっとりするまで煮詰める工程は、美味しいジャムの味を期待させる。
「何かお手伝いしますよ。リンゴを洗って皮むきをしてもいいですか?」
私の提案に、
「手伝ってくれるの? 助かるわ♪」
おばあさんも喜んでくれた。
「外で皮むきしてきますね」
私とカイルはリンゴの入った大きな籐の籠を2つ持って、家の外に出た。
外では、いつの間にか、リンゴジャムの芳醇な香りに心を奪われた大勢の動物たちや妖怪たちが集結していた。
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