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海に浮かんでいたものは その3
しおりを挟む「ちょおっと待ったぁ~~~っ!」
アライぐまおさんの呼びかけに、泉の森わんわん消防隊員たちが振り返りました。
「なんだ? サインが欲しいのか? 我々はカッコよくても、芸能人ではないのだぞ?」
泉の森わんわん消防隊員たちのナルシストぶりにズッコケル森の動物たち。
「そうじゃなくてですね、森は火事じゃなかったし、ランプの中から現れた青年やヤギさんや僕たちみんなずぶ濡れじゃないですか!
もしも青年がランプの精霊だったら、怒られて魔法をかけられても知りませんよっ!」
アライぐまおさんに指摘され、
「ぬな?」
「隊長、そこは、なぬ?が正しいかと!」
泉の森わんわん消防隊員のツッコミを受けつつ、えらいことしちゃったかも~!と内心、冷や汗の隊長。
そう言われれば、見慣れない金ピカのランプの傍に佇む美しい青年と山羊がちょっと怒ってるっぽい?
もし、ランプの精霊だったら!
激おこプンプン!されたら、ちょっと怖いかも!
「やってしまったことは仕方ない。
しか~し! 我々はアフターフォローも万全だ! そうだろ?みんな!」
「「「「「はいっ!隊長!」」」」」
敬礼して整列する消防隊員たちを満足気に眺めると、
「ゆけ~~っ!
完璧なアフターフォローで精霊たちの怒りを収めるのだ~~っ!!」
と、隊長は叫びました。
「「「「「はいっ!!」」」」」
泉の森わんわん消防隊員たちの動きは速かった!
青年や山羊、森の動物たちやルカやカイルを魔法で一斉にウォッシュ&ドライ!
青年は少し髪が伸びていたので、カット&パーマもして、ついでにネイルまで整える徹底ぶり。
動物たちもカット&ブラッシング&爪切りまでしてもらい、みんなピカピカのツヤツヤに仕上がってしまいました♪
「綺麗にしてくれて、ありがとう。わんわん消防隊員さんたち」
「「「「「ありがとう~~♪」」」」」
動物たちの嬉しそうな感謝の声を聞き、
「いや、ずぶ濡れにして申し訳なかった。許していただけますか?」
隊長が心配そうに尋ねると、
「「「「「もちろんで~~~す♪」」」」」
元気な返事が返ってきたので、泉の森わんわん消防隊員たちは敬礼してから、満足気に自画自賛しつつ、消防署へと帰ってゆきました。
もともと美青年だった青年は、泉の森わんわん美容室ならぬ消防隊員たちのおかげで、さらにパワーアップしたイケメンになってしまい女子たちに囲まれていました。
「目の保養~♪」
「なんまいだ~なんまいだ~」
「なんで拝んでるの?」
「尊い~♪」
ハートをズキュンされた女子たちに囲まれ照れる青年です。
「もしも彼がランプの精霊だったら、ランプをこすって彼を呼び出したアライぐまおさんは、何か願い事を叶えてもらえるかもしれないわね?」
ブタミさんはうらやましそうです。
「え~~っ? やっぱりそうなのかなぁ? 何をお願いしようかなぁ~♪」
すっかりその気のアライぐまおさん。脳内お花畑状態です。
「あのっ、実は、僕は精霊ではないんです!」
青年がぐまおさんの傍へやってきました。ヤギさんもついてきました。
「実は、僕は大切な書簡を届ける途中で、その書簡を奪われそうになり逃げていたのですが捕まって、魔法でランプの中に閉じ込められたんです。その時、偶然通りかかったヤギさんまで巻き添えをくらい、一緒にランプの中にいました。そのまま船に乗せられたのですが、大波で船が揺れた時、僕たちのランプは甲板を転び海へ逃げることに成功しました。でも、ランプを誰かが拾ってこすってくれなければ、僕たちはランプの外へは出れないという魔法をかけられていました。アライぐまおさんは僕たちの恩人です!」
青年の瞳は感謝の気持ちでキラキラと輝いていて、またもや女子のハートをズキュンしてしまうのでした。
「その書簡は、もしかして…」
「ご想像の通り、ヤギさんがいつの間にか食べてくれていて」
「広葉樹100%で作られた美味しい紙だったメェ~~♪」
嬉しそうにいななくグルメなヤギさんは、もっと食べたいようでした。
「届けたい書簡も無いし、自分のいた国が何処にあるのか、ここが何処なのかも分からないんです」
ね? と、ヤギさんと目を合わせ困っている青年。
「じゃあ、僕のお家においでよ」
アライぐまおさんが、青年の手を取りました。
ぐまおさんの家は小さくて青年は入れないので、皆で彼の家を建てることにしました。
森の動物たちやルカやカイルが協力して、あっという間に可愛いログハウスが建ちました。
「森は危険生物もいるから気を付けて暮らしてね」
「はい。本当にありがとうございました」
「メェ~~~♪」
泉の森のみんなの優しさに感謝しかない青年とヤギさんは、嬉しそうに微笑みました。
青年とヤギさんは郵便屋さんの手伝いをしながら仲良く暮らし、お給料日にはアライぐまおさんに手作り料理をふるまい楽しく過ごしたのでした。
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