75 / 103
ナルト花とユカイトンボさん
しおりを挟む青空の下で花々が優しい風に揺れています。
ルカとカイルはその様子を愛でながら、ゆっくり歩いていました。
風に揺れる小さな桃色の花々はとても可憐で、見渡すかぎり桃色の絨毯を敷き詰めたように一斉に咲いています。
花畑の中央にある獣道を夢見心地で進んでゆくと、花の下でユカイトンボさんが眠っていました。
トンボさんなのに大の字になって、伸びているようにも見えます。
「ユカイトンボさん、大丈夫かな?」
そっと、ユカイトンボさんの顔を見てみると、目を回しているのか両目がピンクの渦巻マークになっています。
「食虫植物に見つかったら大変だわ。起こしてあげたほうがいいよね?」
ルカとカイルは魔法でユカイトンボさんを目覚めさせました。
「あっ。ルカちゃんとカイルくんだぁ~。介抱してくれてたの?」
ユカイトンボさんは無邪気に笑います。
「トンボさん、大丈夫? 目を回したの?」
「うん。うっかりナルト花を見ちゃって~」
「ナルト花?」
ユカイトンボさんの隣には、ラーメンに入れるナルトのような渦巻模様の桃色の花が揺れていました。
「この渦巻模様で目がグルグル回っちゃうんだ。負けるもんかって、ムキになってジッとナルト花を見たら余計に目が回っちゃって」
どうやら一方的に戦いを挑み、玉砕したらしい。
この時期、ナルト花は森のあらゆる所で大量に咲いているのでした。
「この前もナルト花を見て目を回して倒れたら、目を覚ました時にはお洒落なテーブルの上に置かれた皿の中に居てさ。
食虫植物さんが、もっと美味しくして食べましょう♬なんて言って、僕にかけるドレッシングを作ってる間に逃げてきたんだ」
「食虫植物さんがグルメで良かったわね」
「今日はルカちゃんとカイルくんが助けてくれるし、僕はツイてるよ」
ユカイトンボさんが自慢していると、女の子のユカイトンボさんがナルト花の影から現れました。
「トンボロウさん、そんなによく目を回していたなんて」
「トンボリーちゃん!」
トンボリーちゃんは心配そうな顔をして、どこかへ飛んでゆきました。
「トンボリーちゃん。僕がしょっちゅうナルト花で目を回すから、付き合ってくれないのかなぁ。もう、100回も告白してるのに…」
100回告白って、多過ぎない?
と、ちょっと思ってしまったルカでした。
「ルグルグ水さえ、見つかればなぁ…」
遠くを見つめながら哀愁を漂わせるトンボロウさん。
「ルグルグ水?」
0
お気に入りに追加
992
あなたにおすすめの小説

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる