異世界でのんびり暮らしてみることにしました

牛子さんは何処へ １

　静かな森に、突然大きな爆音が響きました。

　ちゅど～ん！！

　煙を上げ、小さなロケットのような乗り物が空へと飛んでゆきます。
「カイル、行ってみましょう！」
「草原の方向だ！」
　
　ルカとカイルが駆け付けると、おろおろして困っている乳牛の牛雄さんがいました。
「牛子さんが！　牛子さんが！　どうしよう！」
「落ち着いて！　牛雄さん！」
「なにがあったの？」

　取り乱していた牛雄さんは、落ち着くため牛乳を一気飲みして、ふぅと息をつきました。
「数年前、僕が交通事故で記憶喪失になって会えなくなっていたのですが、奇跡的に再会し記憶も戻って、これからって時に　いろいろ邪魔が入って、それでも結婚直前だったんですけど…」

「まぁ。まるで冬のソ〇タのような純愛をされてたんですね」
「異母兄妹ではなかったのですが…。強烈なライバルがいて、親からも反対されて大変だったんですよ」
「そうなんですか」
「彼女が僕の建てた家に不法侵入してくれなければ再会できなかったかもしれません」
「そんな出会いもあるんですね」

「僕の心を捕らえて離さないのはこの世に彼女ひとりだけ！　そんな最愛の彼女が攫われたんです！　奴らは顔を見られないように覆面をしていました！」
　牛雄さんはくやしそうにヤケ牛乳を煽るのでした。

「それなら、早くロケットを追いましょう！　ゆっくり牛乳を飲んでいる場合ではないわ！」
「！　牛子さんを見つけてくれるんですか？！」
　牛雄さんを背負ったカイルとルカは、牛子さんを乗せたロケットを追うため、空を探索しはじめたのでした。