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風船花の想い
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秋晴れの空に、風船の花が一輪、飛んでいました。
風船のように浮かぶ性質の花びらが5つ重なり合った小さな花は、涼しげな秋風に乗ってフワフワと空を不安そうに彷徨っています。
「どうしたの?」
カイルとルカが声をかけると、
「私、うたた寝してる間に風に流されちゃったみたいで、目が覚めたら見知らぬ場所に浮かんでいたんです。風に流されないように茎をどこかに巻き付けて眠らなきゃいけなかったのに忘れちゃって。迷子になってしまって、お家に帰れないんです…」
風船花さんがとても困っているので、一緒に騎士団の詰め所に行ってみることにしました。
「君のお家は何処にあるんだね?」
わんわん騎士団長は、風船花さんに聞きました。
「わからない…」
「君の名前は?」
「わからない…」
わんわん騎士団長は困ってしまって、
「わんわんわわ~ん、わんわんわわ~ん!」
と、犬のおま〇りさんの歌詞みたいになってしまったので、自分たちで探すことにしました。
「おうちの周りはどんな景色なの?」
「えっと…風船花がたくさん咲いています」
「じゃあ、風上に向かって探してみましょう」
「はいっ!」
風船花さんとカイルとルカがしばらく空を飛んでいると、山の向こうに色とりどりの風船花たちが揺れている景色が見えてきました。
大小さまざまな大きさの風船花たちが、花畑になっていたり、畑のあぜ道に並んで咲いていたり、子供の風船花たちが追いかけっこをして遊んでいたり、忙しそうに空中を飛び回っている風船花もいました。
「あっ、ここです! ありがとう。一緒に探してくれたおかげで心細くなかったです!」
風船花さんは喜んで、風船の里へ降りてゆきました。
もう大丈夫そうだったのでルカは帰ろうとしましたが、カイルは風船花さんにあげたい物があったようです。
家族のもとへ戻れた風船花さんに、カイルは声をかけました。
「風船花さん、ここにオオスズランを植えてもいい?」
「? はい」
不思議そうな風船花さんの返事を聞いてから、カイルはアイテムボックスから取り出したオオスズランの種を植え、魔法で急成長させました。
体長3m、下向きに咲いた50㎝のスズランの花は、風船花さんの小さな体をすっぽり包める大きさで、このスズランの花の中で眠れば、浮かぼうとする体は風に流されず、雨風もしのげます。
「もし、他にもオオスズランを欲しいと思う風船花さんがいたら、この種をあげて」
と、カイルは小袋いっぱいのオオスズランの種を、風船花さんに渡しました。
「カイルさん、ありがとう…」
風船花さんがカイルの心遣いに感動しています。
そっと愛おしそうに、風船花さんはオオスズランの茎を撫でました。
「これを、カイルさんの家の庭に植えていただけませんか?」
風船花さんがカイルに渡したのは、風船花の種。
この花を庭で見かけた時だけでも私を思い出してくれたらいいのに、という彼女の想い。
カイルに一目惚れしたけど、ルカを想うカイルの気持ちに気付き、こっそりと片思いを自己完結した風船花さんの乙女心がカイルに伝わったかどうかは分かりません。
手渡された風船花の種は、カイルの家の庭で芽を出し、今日も風に揺られ、カイルの幸せを願いながら、鶏助さん家族と戯れて楽しく暮らしているのでした。
風船のように浮かぶ性質の花びらが5つ重なり合った小さな花は、涼しげな秋風に乗ってフワフワと空を不安そうに彷徨っています。
「どうしたの?」
カイルとルカが声をかけると、
「私、うたた寝してる間に風に流されちゃったみたいで、目が覚めたら見知らぬ場所に浮かんでいたんです。風に流されないように茎をどこかに巻き付けて眠らなきゃいけなかったのに忘れちゃって。迷子になってしまって、お家に帰れないんです…」
風船花さんがとても困っているので、一緒に騎士団の詰め所に行ってみることにしました。
「君のお家は何処にあるんだね?」
わんわん騎士団長は、風船花さんに聞きました。
「わからない…」
「君の名前は?」
「わからない…」
わんわん騎士団長は困ってしまって、
「わんわんわわ~ん、わんわんわわ~ん!」
と、犬のおま〇りさんの歌詞みたいになってしまったので、自分たちで探すことにしました。
「おうちの周りはどんな景色なの?」
「えっと…風船花がたくさん咲いています」
「じゃあ、風上に向かって探してみましょう」
「はいっ!」
風船花さんとカイルとルカがしばらく空を飛んでいると、山の向こうに色とりどりの風船花たちが揺れている景色が見えてきました。
大小さまざまな大きさの風船花たちが、花畑になっていたり、畑のあぜ道に並んで咲いていたり、子供の風船花たちが追いかけっこをして遊んでいたり、忙しそうに空中を飛び回っている風船花もいました。
「あっ、ここです! ありがとう。一緒に探してくれたおかげで心細くなかったです!」
風船花さんは喜んで、風船の里へ降りてゆきました。
もう大丈夫そうだったのでルカは帰ろうとしましたが、カイルは風船花さんにあげたい物があったようです。
家族のもとへ戻れた風船花さんに、カイルは声をかけました。
「風船花さん、ここにオオスズランを植えてもいい?」
「? はい」
不思議そうな風船花さんの返事を聞いてから、カイルはアイテムボックスから取り出したオオスズランの種を植え、魔法で急成長させました。
体長3m、下向きに咲いた50㎝のスズランの花は、風船花さんの小さな体をすっぽり包める大きさで、このスズランの花の中で眠れば、浮かぼうとする体は風に流されず、雨風もしのげます。
「もし、他にもオオスズランを欲しいと思う風船花さんがいたら、この種をあげて」
と、カイルは小袋いっぱいのオオスズランの種を、風船花さんに渡しました。
「カイルさん、ありがとう…」
風船花さんがカイルの心遣いに感動しています。
そっと愛おしそうに、風船花さんはオオスズランの茎を撫でました。
「これを、カイルさんの家の庭に植えていただけませんか?」
風船花さんがカイルに渡したのは、風船花の種。
この花を庭で見かけた時だけでも私を思い出してくれたらいいのに、という彼女の想い。
カイルに一目惚れしたけど、ルカを想うカイルの気持ちに気付き、こっそりと片思いを自己完結した風船花さんの乙女心がカイルに伝わったかどうかは分かりません。
手渡された風船花の種は、カイルの家の庭で芽を出し、今日も風に揺られ、カイルの幸せを願いながら、鶏助さん家族と戯れて楽しく暮らしているのでした。
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