異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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小さな箱には

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 カイルと森を散歩していたら、かわいい花を見つけた。

 茎に小さな白い花がたくさん並んで咲いていて、なぜか、花の先には白くて丸い球が付いていた。

 卵のような、白い雫のようなそれは、時々、ぷるぷると揺れた。

「カイル、これ何だろう?」
「すごく動くし、何かの卵が孵ろうとしてるのかな?」

 ぷるぷるぷるっ。ぷるるん。

「あっ、球の薄皮が破れてきた。何が生まれてくるのかな?」

 こんな清楚な花から、花の妖精でも生まれてくるのかしら。
 わくわく期待しながら待っていると、

「「「ピヨ♪ピヨ♪ピヨ♪」」」
 なぜか鳥の雛が生まれてきた。
 鳥の雛は、生まれて初めて見た生物を親だと思うらしい。

「花鳥の雛だ。そういえば、花に卵を産み付ける鳥がいるって聞いたことがある」
「カイルと私を親だと思ってるみたいだよ?」
「うん。突然、10羽の鳥の親になっちゃったね」

 花鳥の雛たちは、私とカイルの周りを楽しそうに歩き回ってる。
 時々、小さなクチバシでつついてきたりして、とても可愛い。

「かわいいね~♪」
 私の部屋でこの子たちを育てることになるのかな~?

 すっかり花鳥の親になる気でいる私に、カイルが焼きもちをやく。

「ダメだよ。雛に夢中になって、ぼくに構ってくれなくなるつもり?」
 急遽、カイルは子虎に変身し、もふもふ攻撃をしてくる。
 なめらかなふわふわ毛並みの金毛が覆いかぶさってきて、ほっぺにスリスリしてきて…うぁぁ…可愛いくて柔らかいぬいぐるみのようなモフモフ感触がたまらん…天国だぁ~…♪

「ルカはぼくだけ見てればいいんだよ。わかった?」
 洗脳されてしまう~♪

 しかし、雛はカイルの言葉など聞こえないかのように、私やカイルの上によじ登ってきては、クチバシで軽くつついてきたり、「ぴよぴよ♪」とお尻を振りながら、可愛らしく鳴くのだった。
 カイルも雛も可愛くて、どちらかなんて選べないよ~♪

 なんて思っていたら、花鳥の親鳥が帰ってきて私を睨んでいた。

 突然、花鳥が私に向かって駆けてくる!

 ドガッ!

「ぐはぁ!」
 みぞおちに花鳥キック炸裂!

 子虎のモフモフと雛のクチバシつんつんの甘い時間に蕩けていた私は、さらに繰り出されるアッパーカットになすすべもない。
 雛を奪われたと勘違いした親鳥が怒っているらしい。

 さらなる攻撃を加えようとファイティングポーズを決める花鳥親。
 なんでやね~ん!

 空中に飛ばされた私を追いかけてきて、抱えてくれるカイル。
「ルカ、大丈夫? 花鳥の攻撃が速すぎて守れなくてごめん!
 花鳥さん、ぼくたちは雛を奪うつもりはないよ!
 育児放棄なら世話をしようと思ってただけだよ!」

 カイルが必死でかばってくれたのが嬉しくて、アッパーカット時の鼻血も止まりそうだわ。

「雛のみんな、集まって!みんなのお母さんだよ!ほら、羽の模様も一緒!」
 鏡を見せてあげると雛たちは納得してくれて、親鳥のところへ集まっていった。
 ああ、よかった。

 親鳥は雛が戻ってきたので機嫌を直し、私を蹴ったお詫びにと小さな箱をくれた。

 花鳥の親子は仲良く森を歩いてゆき、私とカイルは微笑ましく思いながら見送った。

 さて。
 花鳥がくれた小さな箱をどうしたものか。
 開けるのが少しこわい。
 でも、ここに置いて帰るわけにも…。

 花鳥がくれた箱を手のひらに乗せ、じっと見つめていると、子猿がやってきて私の手から持って行ってしまった。
 木の枝の上で、小さな箱を開けている。
 中には、花鳥の羽が1枚入っていたようだ。薄緑の綺麗な羽を、子猿は髪飾りのように頭に挿した。

 すると、子猿の背中から花鳥の大きな翼が生えてきた。
 翼をはためかせ、空を飛べるようになった子猿は大喜び。
 
「花鳥さんは私に翼をくれようとしたんだね」
「また、花鳥親子に会えるといいね♪」
 
 後日、同じ翼を持った子猿と花鳥たちは楽しそうに仲良く空を飛んでいた。
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