33 / 103
ずっと傍にいてね
しおりを挟む
ニャロンさんが帰宅すると、奥さんは信じられないという表情をして固まってしまった。
「帰ってきたよ。遅くなって、ごめんニャ」
ニャロンさんは申し訳なさそうに呟いた。
夢中でニャロンさんに駆け寄り、抱きしめた奥さんは、
「遅すぎるわよ! どれだけ心配したと思ってるの! よかった、よかった…」と言って泣き崩れた。
「「「パパ?」」」
「ミーナ、ミリー、ミロン! わしより大きくなってるじゃニャいか!」
猫族は1年で成人するらしい。
「「「パパ~~ッ!!!」」」
子供たちと奥さんに抱きしめられて、ニャロンさんはこれ以上ないほど幸せそうだ。
私とカイルとリスさんは、親子水入らずを楽しんでもらおうと、そっとその場を離れた。
「今夜は、ニャロンさん生還を祝う会をしようと思っているんです」
リスさんはこれから島長さんに相談に行くつもりらしい。
「ルカさんとカイルさんも是非、参加してくださいね。ニャロンさんを救ってくれた恩人なのですから」
「カイルは凄かったわ」
「そんな…僕なんて…」
褒められて照れるシャイなカイル。
その時、大きなサイレンの音が鳴り響いた。
「家事だ~~~っ! じゃなくて、火事だ~~~っ!!!」
「えっ? 家事?」
「火事だよ!」
カイルが指さす方向を見ると、大きな火柱と煙があがっている。
どうやら、5mの獲物を捕まえた猟師さんが、獲物を丸焼きにしようとして炎の量を多くし過ぎたらしい。
その炎が民家に飛び移ってしまった!
この島の島民は魔法をあまり使えないのだろうか。バケツリレーをしている。
私とカイルは海上に転移し、魔法で海水を吸い上げ直径2kmの巨大な海水玉を作った。
「「せ~~のぉっ、行け~~~っ!!」」
海水玉を火事現場全体に命中させると、一瞬で消火できた。
皆、何が起こったんだ?みたいな顔をして、ポカ~ンとしている。
そして、状況を把握すると、わぁっ!と歓声が上がった。
「なんでそんなことが出来るの?」
「すご~~い!!」
「ありがと~~っ!!」
皆、大喜びしてくれた。
「おふたりさん! 一緒にこの獲物を食べてくださいよ! もちろん皆さんも!」
火元の猟師さんは、巨大な丸焼きをごちそうしてくれるらしい。みんな大喜びだ。
カイルが魔法で燃えた家を修復したので、もう怒っている人はいない。
「猟師さん、食べやすいようにカットしてもいいですか?」
「獲物を切ってくれるのかい? たすかるよ!」
了解を得たので、獲物を空中に浮かべ、風の刀で一瞬で10㎝四方の大きさの肉片にカットし、マジックバッグから出した大皿に山のように盛った。まだ火がしっかり通ってなかったのか、レアなお肉部分が多い。
「なんだ?マジックか?大きな肉の塊が一瞬で小さくカットされたぞ!」
「焼肉大会だ!」
「お嬢ちゃん、ついでに、この果物と野菜もカットしてくれないか?」
島の動物が、森の畑で収穫した野菜を見せる。
「いいわよ! こっちに投げて!」
次々と飛んでくる野菜や果物を風の刀でカットしては皿に盛り、彼らに渡した。
「「「かんぱ~~い!!」」」
さっきまで火事で大騒ぎだったのが嘘みたいな、和やかなバーベキュー大会が始まった。
夜はニャロンさんの生還を祝う会があるし、この島の動物たちはお祭り好きなのかな? あちこちで踊りだしてるし。
「まぁ、おひとつ」
「おっとっと」
果実ジュースをコップに注ぎ合う私とカイル。
魔力を使った後の一杯は格別に美味しい。
カイルの穏やかな横顔を見てると、崖から無事に戻ってきてくれて、生きていてくれてよかったと、愛しい思いが蘇ってきてしまう。
カイルの腕をぎゅっと抱きしめた。まだ、カイルを失うかと思ったショックから立ち直れていない。
人の姿のカイルに私からベタベタ触れることはあまり無かったので、カイルは驚いている。
「どうしたの? 今日は甘えたなんだね。うれしいけど…」
カイルが私の頭の上に、自分の頭をそっと乗せて寄り添う。
「カイル、もう一人で危険なことはしないでね。私も一緒に協力するから。ずっと、私の傍にいてね。」
抱きしめる腕が震え、涙がぽろりとこぼれた。
「泣かないで…。わかったよ。ずっとルカの傍にいるから。心配しないで」
カイルは私の涙を親指でやさしく拭い、おでこにキスを落とした。
カイルの優しさが心に沁みて、もっと泣けてくるのだった。
「帰ってきたよ。遅くなって、ごめんニャ」
ニャロンさんは申し訳なさそうに呟いた。
夢中でニャロンさんに駆け寄り、抱きしめた奥さんは、
「遅すぎるわよ! どれだけ心配したと思ってるの! よかった、よかった…」と言って泣き崩れた。
「「「パパ?」」」
「ミーナ、ミリー、ミロン! わしより大きくなってるじゃニャいか!」
猫族は1年で成人するらしい。
「「「パパ~~ッ!!!」」」
子供たちと奥さんに抱きしめられて、ニャロンさんはこれ以上ないほど幸せそうだ。
私とカイルとリスさんは、親子水入らずを楽しんでもらおうと、そっとその場を離れた。
「今夜は、ニャロンさん生還を祝う会をしようと思っているんです」
リスさんはこれから島長さんに相談に行くつもりらしい。
「ルカさんとカイルさんも是非、参加してくださいね。ニャロンさんを救ってくれた恩人なのですから」
「カイルは凄かったわ」
「そんな…僕なんて…」
褒められて照れるシャイなカイル。
その時、大きなサイレンの音が鳴り響いた。
「家事だ~~~っ! じゃなくて、火事だ~~~っ!!!」
「えっ? 家事?」
「火事だよ!」
カイルが指さす方向を見ると、大きな火柱と煙があがっている。
どうやら、5mの獲物を捕まえた猟師さんが、獲物を丸焼きにしようとして炎の量を多くし過ぎたらしい。
その炎が民家に飛び移ってしまった!
この島の島民は魔法をあまり使えないのだろうか。バケツリレーをしている。
私とカイルは海上に転移し、魔法で海水を吸い上げ直径2kmの巨大な海水玉を作った。
「「せ~~のぉっ、行け~~~っ!!」」
海水玉を火事現場全体に命中させると、一瞬で消火できた。
皆、何が起こったんだ?みたいな顔をして、ポカ~ンとしている。
そして、状況を把握すると、わぁっ!と歓声が上がった。
「なんでそんなことが出来るの?」
「すご~~い!!」
「ありがと~~っ!!」
皆、大喜びしてくれた。
「おふたりさん! 一緒にこの獲物を食べてくださいよ! もちろん皆さんも!」
火元の猟師さんは、巨大な丸焼きをごちそうしてくれるらしい。みんな大喜びだ。
カイルが魔法で燃えた家を修復したので、もう怒っている人はいない。
「猟師さん、食べやすいようにカットしてもいいですか?」
「獲物を切ってくれるのかい? たすかるよ!」
了解を得たので、獲物を空中に浮かべ、風の刀で一瞬で10㎝四方の大きさの肉片にカットし、マジックバッグから出した大皿に山のように盛った。まだ火がしっかり通ってなかったのか、レアなお肉部分が多い。
「なんだ?マジックか?大きな肉の塊が一瞬で小さくカットされたぞ!」
「焼肉大会だ!」
「お嬢ちゃん、ついでに、この果物と野菜もカットしてくれないか?」
島の動物が、森の畑で収穫した野菜を見せる。
「いいわよ! こっちに投げて!」
次々と飛んでくる野菜や果物を風の刀でカットしては皿に盛り、彼らに渡した。
「「「かんぱ~~い!!」」」
さっきまで火事で大騒ぎだったのが嘘みたいな、和やかなバーベキュー大会が始まった。
夜はニャロンさんの生還を祝う会があるし、この島の動物たちはお祭り好きなのかな? あちこちで踊りだしてるし。
「まぁ、おひとつ」
「おっとっと」
果実ジュースをコップに注ぎ合う私とカイル。
魔力を使った後の一杯は格別に美味しい。
カイルの穏やかな横顔を見てると、崖から無事に戻ってきてくれて、生きていてくれてよかったと、愛しい思いが蘇ってきてしまう。
カイルの腕をぎゅっと抱きしめた。まだ、カイルを失うかと思ったショックから立ち直れていない。
人の姿のカイルに私からベタベタ触れることはあまり無かったので、カイルは驚いている。
「どうしたの? 今日は甘えたなんだね。うれしいけど…」
カイルが私の頭の上に、自分の頭をそっと乗せて寄り添う。
「カイル、もう一人で危険なことはしないでね。私も一緒に協力するから。ずっと、私の傍にいてね。」
抱きしめる腕が震え、涙がぽろりとこぼれた。
「泣かないで…。わかったよ。ずっとルカの傍にいるから。心配しないで」
カイルは私の涙を親指でやさしく拭い、おでこにキスを落とした。
カイルの優しさが心に沁みて、もっと泣けてくるのだった。
22
お気に入りに追加
992
あなたにおすすめの小説

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結

転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる