異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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最終ステージ 薔薇の中には

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 淡く優しい輝きを放つ美しい薔薇たちは、私たちの目の前でゆらゆら揺れては不規則に移動する。

「薔薇を捕まえてごらんなさい」
 美女に促され、私とカイルは薔薇を追いかけた。

 床からそのまま壁を走り、シャンデリアに飛び移り、装飾品を押しのけ、天井も走りまわって、やっと薔薇を捕まえた。動き回る大輪の薔薇をぎゅっと抱きしめる。

「私はオレンジの薔薇を捕まえたわ。カイルは?」
「僕は青色の薔薇だよ」

「では、薔薇を開けるわ」
 美女の涼やかな声がして、5色の薔薇は2つに割れるように花びらを散らしてゆく。中には小さな紙が入っていた。

「僕のは、佃煮の詰め合わせセット、って書いてある」
 お中元のような景品で、アーシャさんが喜びそうだと思った。

「はい、約束通りルカにあげる」
 紙を私に手渡そうとするカイル。

「美味しそうな佃煮だし、みんなで食べたいな。カイルの気持ちは嬉しかったよ」
 にこっと笑って、あたりさわりなく断る私。

「ルカに貢ぎたかったのに…」
 がっかりするカイルを見てると申し訳なくなってしまう。

「ごめんね、カイル。佃煮は美味しいけど塩分が多いのよ。塩分を摂りすぎると体に良くないわ。皆で分けて少しずついただくくらいが丁度いいのよ」
 体は6歳児でも、心はアラサーの本音を吐露してしまう私だった。

「そうか。健康って大事だよね」
「そうなのよ」
 カイルが聞き分けの良い子で助かる。

 そして、私が捕まえた薔薇に入っていた紙には、『ダンジョン』と書いてあった。
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