異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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思わぬお土産

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 森のお祭り ダンジョン制覇大会に向けて、カイルと私は毎日特訓に励んでいた。

「ルカッ! 今日はポンポコ山のてっぺんまで、うさぎ跳びしよう!」
「お~~っ!」

 山登りならぬ、山うさぎ跳び登り! 
 いつの間にスポ根小説に?!

 頂上まで続く山道のなだらかな傾斜のついた坂を、うさぎ跳びでひたすら上る。
 途中、鹿に追い越され、リスにも追い越され。
 熊に出会った時は、さすがに走って逃げた!

「ルカ!山も奥深くなってきたし、さすがにうさぎ跳びは危険だ。走ろう!」
「そうね!」
 って言いながら、私に縄を渡すカイル。

「これって…?」
「こう使うんだ!」
 カイルは手早く縄を腰にくくりつけた。縄の先には太くて大きなタイヤが付いていた。

「このタイヤを引きずりながら走ると、足腰が鍛えられて良いと思うんだ♪」
 なんか、昔、野球部の練習で見たような気がするんだけど…。

「行くぞっ!」
「ひえぇ」
 坂道なのに、山道なのに、でっかいタイヤを引っ張るのか~!
 階段はきついわ~!

 天使のような可憐な顔をしたカイルが、こんなスポ根魂を持っていたとは!

 途中で山賊に出会ったので、絶好の機会とばかりに腰から縄を外してタイヤを山賊に投げつけて逃げた!
 あ~、腰が軽くなったわ♪

「カイル!ついに頂上に着いたわよ。お弁当を食べましょう♪」
「そうだね。お腹すいた~」

 ぱかっ♪
 お弁当箱を開けると、たくさんのおかずたちが美味しそうに並んでる。
 早起きして作った私の自信作♪

「「いっただっきま~す♪」」

 あ~ん♪と大きな口を開けて大好きなハンバーグを食べようとしたら、すかっと空気を噛んだ。
 なんで? 
 私のハンバーグさん、いずこへ~?

 ムシャムシャムシャ…

 背後から、ハンバーグの香しい匂いと咀嚼する音がする。

 振り返ると、そこには…
 大きなゴリラさんが!!

「あっ!」
 弁当箱ごと強奪して逃げるゴリラさん。
 おかずひとつ分けて?なんていう謙虚さは皆無なのね! 

 弁当箱に顔突っ込んで食べてるわ~。
 もう返してもらってもどうしようもない状態になってるわ、きっと。

 そうだ!
 カイルに分けてもらえばいいのよ♪
 カイルなら、きっと快くお弁当を分けてくれるはずよ♪

 期待を込めてカイルの方を見ると、すでに完食。
 早食いだったのね、カイル…。

 こうなったら、森に何かないかしら?
 普段、ゴリラさんが食べてるバナナとか。

 キョロキョロあたりを見回すと、ありました♪ 
 バナナの木に、バナナがたわわに実ってるじゃないの♪

 わ~い♪とばかりに、バナナの木に飛びつき、するすると登っていく私。
 完熟バナナ、おいしそ~♪

 バナナを取ろうとした、その時、

 ヒュンッ!!ドカッ!!

 背後から、丸くて重たい何かが飛んできた!
 私の頭を狙って飛んできて、今、木にぶつかって割れた。
 明らかに私を狙ってる!

 も~。
 お弁当の代わりにバナナくらいくれてもいいじゃないの~。
 ふてくされて、ふと木にぶつかって割れた丸いものを見ると…メロンだった♪

「うっそ~!メロンだぁ~!甘い良い匂い~!」

 私に当てようと投げられた丸くて重いものは、赤肉メロンだった。
 この森のゴリラさんは、自分のバナナを守るためにメロンを投げるの?

 メロンよりバナナのほうが好き?
 変わってるね~♪ 
(バナナも好きだけど、値段的にメロンに惹かれるわ♪)

 ということは。
 バナナを取る振りをすれば、怒ってメロンを投げてくれるのね♪

 うふふ♪

 そして、ルカは何度もバナナを取る振りをしては、ゴリラが投げてくる大量の赤肉メロンをマジックバッグに収納したのだった。

 山の頂上で、お腹一杯赤肉メロンを堪能した私とカイル。

「美味しかったね~♪」
「もう満腹で動けないから、帰りは瞬間移動しよう」
「賛成~」

 家に帰ると、マジックバッグから大量の赤肉メロンを出して居間にずらりと並べ、レオンさんとアーシャさんにプレゼント♪
「おいおい、すごいな!」
「きゃ~♪メロン大好き♪こんなにたくさんのお土産、ありがとう。ルカちゃん」

 喜んでくれてよかった♪
 このメロンを全部食べちゃったら、また、山に特訓に行こうかな?
 ゴリラさんの分のお弁当も持ってね。
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