異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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スベリンの つまみ食い効果

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「大変だっ! ファイヤードラゴンが怒ってる!」
 静かだった泉のほとりが、急に騒がしくなった。

 ゴォ~~~!っと、口から炎を出し、時々奇声を上げたファイヤードラゴンが、のっしのしと森の中を歩き回っているのだ。

「なんであんなに怒ってるんだ?!」
「ファイヤードラゴンの卵を1個、ついうっかり食べてしまって…」
 太っちょスベリンは真剣な顔で、間抜けな返事をした。

「どうやったら、ついうっかり食べちゃうんだよ!」
「いっぱいあったから、つい美味しそうで、1個だけ…」
 てへっ、とスベリンは笑うが、きっと笑ってごまかせないだろう。

「謝ってこい!」
 背中を蹴られてファイヤードラゴンの前に押し出されたスベリンは、恐怖のあまり、ついファイヤーボールを放ってしまった。

 ウォォォォォン!!

 ファイヤードラゴンをさらに怒らさせてしまったスベリン!
 そして、ファイヤードラゴンにファイヤーボールを放っても、火に油を注いだだけだろう。

「ごっ、ごめんなさい!!」

 もう、だめだ!
 恐怖で腰が抜け、蛇に睨まれたカエルのようになってしまったスベリン。

 そこへ、数日前に卵から孵ったばかりの子供ファイヤードラゴンが母ドラゴンを追いかけて、よちよちと歩いてきた。

「ママ、怒らないで。スベリンが食べたのは、ママの生んだ卵じゃないの。私が、他の卵をたくさん見つけたから混ぜてみたの」

「どうしてそんなことをしたの?」

「いろんな色の卵を混ぜて置いたら、とってもカラフルでキレイだったの」

「そう…」

 母ファイヤードラゴンは幼い我が子の説得に、意外にもあっさりと引き上げていった。

 九死に一生を得たスベリンは胸を撫で下ろした。

 では、スベリンが食べたのは、一体、何の卵だったのだろうか?

 スベリンのお腹が急に暴れだした。

「一体、何を食べたんだよ?スベリン!」
「わかんないよ~!」

 スベリンの口から卵が飛び出してきた。

「卵を丸飲みして、まだ殻が割れてなかったんだ!」
「おまえ、どういう卵の食べ方してるんだよ!」

 スベリンのお腹の中から自力で飛び出してきた元気な卵に、ピシピシと亀裂が入りだす。
 卵の中が光りだし、輝く鳥が孵った。

「ピヨ♪」

 炎を纏ったその鳥は、生まれて初めて見たスベリンを親だと思った。
 スベリンに近づき、くっつく。

「熱っ!あつあつあつっ!」
「ピヨ♪」

 火の鳥の雛は、スベリンに懐いて追いかけまわす。

「スベリン、すごいじゃん! 幻獣 火の鳥の親になれるなんて!」

 みんなは羨ましがるが、スベリンはそれどころじゃない。
 暑い夏に、断熱服を着て火の鳥の雛を育てることに。

 スベリンは、これに懲りてつまみ食いをやめ、断熱服のサウナ効果で、ダイエットに成功した♪
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