異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

文字の大きさ
上 下
3 / 103

居候先、決まりました

しおりを挟む
「リトルじいさんのお友達?」

 突然、レインボーモヒカンの孔雀に声をかけられた。

 派手ですね。
 というか、リトルじいさんって、見た目そのまんまの名前だったんですね。

 孔雀と普通に会話できるって、新鮮な感覚だな。

「おじいちゃんの事、知ってるんですか?」
 そういえば、小さいおじいちゃんのことを何も知らなかった。

「知ってるわよ~。ひと月くらい前に、16歳の女の子と結婚式して私も参列したのよ~。
数年前に、前の奥さんを亡くしてすごく落ち込んでいたから心配してたけど、まさか、こんなに若くて可愛い奥さんが来てくれるなんて良かったわね~って、祝福ムード満載で結婚式は大盛り上がりだったのよ~。一晩中、皆で踊りあかしてね~。
それなのに、これから新婚旅行に行くって時にリトルじいさんが盗賊にさらわれちゃって」

「私、この世界の者じゃないんです。ひと月くらい前に、露店で売られてたおじいちゃんの鉢植えを買ったんですよ」

「あなた、異世界から来たの? 
リトルじいさん、徹夜で騒いだから疲れてて、植物の姿になって光合成してたのよ。そしたら、そのまま眠っちゃって、盗賊にさらわれた後、あなたの世界で売られていたのね」
 お爺ちゃんに同情しながら孔雀さんはうなずく。

「なんで盗賊がおじいちゃんをさらうんですか?」

「それはズバリ、三角関係ね!」

 三角関係? おじいちゃん、やるなぁ。

「リトルじいさんは花の妖精だけど、もともと優秀な妖精だし、長生きしたせいか魔力も上がって、かなりの魔法の使い手でもあるの。
だから、リトルじいさんに魔法を習いにいく妖精や動物も多いんだけど、その教え子の一人がリトル爺さんに熱を上げて、花嫁になったのよ」

 16歳の少女に熱を上げられるって、おじいちゃん凄すぎるよ! 

「リトル爺さんは200歳くらいだっていうのに、枯れ専だよねぇ」

 16歳で枯れ専? おじいちゃん、よかったねぇ。

「花嫁に片思いしてる青年がいてね、リトル爺さんさえいなければ振り向いてもらえるんじゃないかと思ったのか、盗賊に頼んでリトル爺さんをさらったみたいなんだよ。爺さんがいなくなってから、ずっと花嫁を追いかけまわしているんだけど、ちっとも相手にされてないみたいだけどね」

「おじいちゃん、愛されてるんですね」

「私たちには分からない、枯れ専の魅力があるんだろうねぇ」

 そっか。じゃあ、今頃は感動の再会で盛り上がってるんだろうなぁ。

「このひと月の間、今自分が何処に居るのか、この世界にどうしたら戻れるのか、一生懸命考えていたんだろうねぇ」

 この世界に戻れて、真っ先に最愛の奥さんに会いたかったはずなのに、私に魔法を教えて話せるようにしてから行くなんて。
 おじいちゃんの、そんな思いやりのある優しいところが奥さんも好きだったのかもしれないね。

「これからどうするんだい? 名前は何て言うんだい? 何か力になれることがあれば言っておくれ」

 レインボーモヒカンが心配そうに揺れる。
 孔雀さん、今の一言、胸にグッときました(涙)

「私はルカって言います。孔雀さんは?」

「私? 私はレインボーだよ」

 あなたもそのまんまなんですね。


「話は全部聞かせてもらったよ」

 低いセクシーボイスが背後から聞こえ、振り向くと、そこには虎耳のイケメンが金毛の子虎を抱えて立っていた。ラフな普段着なのにモデルのように美しい。

 ていうか、人の世間話を堂々と全部聞くんかいとか思ったけど、イケメン過ぎて突っ込めないわ。

「うちの子が、じっと見つめてハートマークを飛ばしてくる子がいたっていうから、どういう子か見てたんだけど。よかったら、うちに来てこの子の子守りをしてくれないか? リトル爺さんの家に行っても、サイズが小さすぎて家に入れないし、奥さんとふたりにしてやれよ」

 もしかして、イケメンのイクメン?

「この子って、お兄さんの子供?」

「そうだ。可愛いだろ? 大きくなったら、人の姿にもなれるんだ」
 そう言って、溺愛パパは高い高~いを始めた。

「本当に、お世話になってもいいんですか?」

「男に二言は無いぜ!」
 ビシッと親指を立てるイクメン。子虎も親指立ててる~!可愛すぎるよ~!

「よろしくお願いします!」

 角度90度のお辞儀をする。
 ルカ6歳。イケメンのイクメンのお家に居候することにしました!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...