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第1章 転生して女の子になりました。(小学校1年生)

第23話 サンタさんの正体は?

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 今日は十二月二十四日。
 俗に言うクリスマスイブで、全国のおと……ごほんごほんっ。サンタさんたちの緊張が最も高まる一日です。
 あ、サンタさんの正体を知らない人は読んじゃ駄目ですよ?

 ――ある者は押入れへ、ある者はお菓子棚へ、子供の手や目が届かないあらゆる場所へと隠していることでしょう。
 そしてサンタさんを見ると言って聞かない子供を寝かしつけ、そっと枕元にプレゼントを置いて去る。
 こうしてやっと、サンタさんの長い一日が終わるのです。

 かく言う私もサンタさんにプレゼントを貰う側なのですが、嘘がバレバレで直ぐに目が泳ぐお父さんでは些か荷が重すぎます。
 お母さんがやればいいんだけど、お喋りなので直ぐにバラしそうですから。
 今年のプレゼントはあの押入れの上、紙袋に入れて置いてあるのは既に把握してしまいましたので、私はサンタさんのフォローに回りましょう!
 他ならぬ両親の為に、そしてサンタを信じる愛しの天使の為に。

「くっりすっますー! くっりすっますー!」

 そんな十二月二十四日の朝、朝食の時点でメグちゃんのテンションは最高潮です。
 イブからハイテンションとは中々のハイペースです。
 まぁこれだけ元気なら夜には疲れてぐっすり眠ってくれることでしょう。

 メグちゃんから目を離し今日明日と家族サービスの為に仕事を休んでくれたお父さんを見ると、こちらも朝からニコニコして嬉しそうだ。
 まぁ天使の楽しそうな姿を見て、他ならぬ私もニコニコしていますけどね!
 そんな私たちを見て微笑むお母さん、今日も私たち諸弓家は笑顔の絶えない幸せな家庭です!

「メグちゃん楽しそうだね」
「うん、お姉ちゃん! だってクリスマスイブだし、ずっとお父さんもお姉ちゃんもいるから! 後でゲームしようね!」
「うん。一日中遊ぼうね」

 相変わらずこの家のゲームは増えるばかりで、以前遊んだ髭の海賊を飛ばすゲームの他にも双六すごろくや、最新の家庭用ゲーム機まで揃ってしまいました。
 どれもお父さんが私達と遊ぶために買ってきたので、ゲームソフトは殆どがパーティ向けのゲームです。
 保育園以外は家にいるメグちゃんはよく家庭用ゲーム機で遊んでいるようで、多分今回のプレゼントは買って欲しいとせがんでいたゲームソフトでしょう。

 沢山ゲームを買って来るお父さんとは休日しか遊べていないので、家族皆で遊ぶ機会よりメグちゃんと花ちゃんの二人か、私と愛ちゃん湖月ちゃんたちと遊ぶ機会の方が圧倒的に多いのは事実です。
 折角休みを取ってもらったので、身体を休めてあげたい所ではありますが今日は目一杯付き合ってもらいましょう!



「――やったー! 私の勝ちー!」
「恵……強くなったなぁ……」

 午前中はメグちゃんとお父さんの二人で遊んでもらいました。
 その間に私はお母さんのお手伝いをして洗濯や掃除、お昼ご飯の支度などを無事に終わらせます。
 今出来上がった昼食を食べて、その片付けが終われば私とお母さんもゲームに混ざれるでしょう。
 リビングから届く二人の楽しそうな声を聞き、お母さんと笑いながら昼食の用意を済ませました。

「いただきます」
「いただきまーす!」

 昼食のミートスパゲッティはお母さんの特製レシピです。
 生のトマトを使っていて、教えては貰っていますが中々お母さんの味を出すことは出来ません。
 むむむ、いつか超えてやるぞ。と思いながらフォークを回していると、一足先に食べ終わったメグちゃんがフォークを置きました。
 そして。

「今日サンタさん来るよね? 楽しみ!」

 ふいにメグちゃんが言った言葉に場が凍りつきました。
 主にお父さんはロボットのようにガクガクと動き出し、お母さんは頬に手を当てて困ったポーズをしています。
 両親がアイコンタクトで相談をしている間、溜め息を吐いた私はメグちゃんに話しかけました。

「うん、来てくれるよ。メグちゃんはいい子だからね」
「ほんと!? わぁーどんな人なんだろう?」

 そんなの目の前に……ごほん。こ、この話の流れは不味いですね。
 どうにか気を逸らさないと!

「そ、そういえば明日の晩御飯も楽しみだねー?」
「うん! クリスマスのだいごみ、だね!」

 あら難しい言葉をご存知で。
 どうにか話は逸らせたかな?

「それはそうとお姉ちゃん! サンタさんに会ったことある?」

 逸らせてなかった!!

「……い、いやぁ? 私はないよ?」

 会ったこと所かずっと視界に入っているけど。
 うう、優しい嘘だとしても心が痛みます。
 赦して下さい私の天使よ。

「今日は会えるかなぁ?」
「……んー……あー、サンタさんって恥ずかしがり屋さんだから、メグちゃんがちゃんと寝てないと来てくれないかもよ?」
「えー! 困るよー!」
「それにサンタさん忙しいから、プレゼントを置いたら直ぐ次の家に行かないといけないんだよ。サンタさんの仕事を邪魔しちゃうの?」
「うーん、じゃあ会えなくてもいいやっ!」
「うんうん。メグちゃんは優しい子だね」
「うふふー。ぷっれぜんとー! ぷっれぜんとー!」

 両親の感謝が詰まったキラキラな視線に気付かない振りをしつつ、額の汗を拭います。
 ふぅ……メグちゃんが単純で助かりました。
 きっと何年か先にはこの残酷な真実を知ることになるんだろうけど、今は知らなくていいはず。
 子供にとってクリスマスプレゼントは、何にも代えがたい思い出になるからね!

 ――次の日の朝、一緒に起床したメグちゃんとベッドに丁寧にラッピングされたプレゼントを見つけました。
 メグちゃんは大喜びでお父さんお母さんに報告しに行ったので、私はのんびり開封するかと手に取ります。
 そしてラッピングのリボンに手を掛けて……。
 ……。
 いや、折角だからサンタさんの前で開けてあげましょう。
 それで飛び切りの笑顔を見せてあげないとね!

 そうして私はメグちゃんに続いて、皆が集まるリビングへと駆け出して行くのでした。
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