上 下
6 / 32
第1章 転生して女の子になりました。(小学校1年生)

第6話 先生と共に歩む

しおりを挟む
 夢中で愛ちゃんと湖月ちゃんとお話ししたり校庭で遊んだりしていたら、既に小学校に入って三ヶ月程が経ちました。
 既にクラス内だけでなく学校中へと私の噂が広がっていて、私はとっても有名人です!

 唯、天才だ、かっこいい、かわいいと噂されるのは大変嬉しいのですが、それを聞きつけて廊下から私を覗きに来るのは勘弁して下さい。
 ちょっと人見知りな愛ちゃんはそれを見てビクビクしてるし、湖月ちゃんはそんな愛ちゃんを見てケラケラと笑っています。
 ビクビクしてる愛ちゃんは可愛いのですがそうは言ってられません。
 仕方なく廊下の窓を閉めて三人でお話を開始しました。

「ごめんね、私のせいで二人に迷惑かけちゃって」
「気にせんでええよ~」
「う、うん、あいも大丈夫だよ」
「そっか、ありがと」

 私に気を使ってくれているであろう二人に笑顔でお礼を言うと、二人共顔を紅くしてしまいます。
 精神年齢が高いせいかこのままだといつか刺されるのではと自分で思ってしまうのですが、どうにか私の手腕で頑張っていきたい所存であります。
 刺されるのは前世だけで充分ですから!

 そしてこれまでの学校生活で愛ちゃんの可愛いポイントが一つ見つかりました。
 彼女は、自分のことをあいと呼ぶのである。
 畜生め! 私を萌殺すつもりか!
 そんなことを思いながら内心愛ちゃんにキュンキュンしていると、教室の後ろ側でわっと男の子たちが盛り上がりました。

「……はぁ。またあいつらあんなことを」
「あ、危ないよぉ」
「男の子やし大丈夫やろ~」

 三人の視界には教室の後ろ、各自の荷物を入れる棚に昇る一人の男の子が。
 皆に煽てられて棚の上で今やってるライダーの真似をするみたいですが……。
 教室を見回しても九重先生は見当たらないので、大事になる前に私が収拾しておきましょう。

「二人は九重先生を呼んできてくれる?」
「わ、わかったよ」
「ええで~」

 さて一応保険として先生も呼んでもらったことだし、いっちょやりますかね。

「こほん。そこの少年、危ないから降りなさい」
「なんだまた諸弓かよ。邪魔すんな!」
「そうだそうだ!」
「また先生の真似かー?」

 はぁ、やんちゃな子供を扱うのは面倒です。
 でも自分のクラスで怪我されるのは嫌だしなぁ。

「落ちたら怪我するでしょ? 早く降りて」
「嫌だよばーか」
「早く降りなさい! お母さんが泣いてるぞ!」
「何言ってんだ諸弓?」
「女の子のくせにいばってんじゃねー」

 うわぁ、二人を呼びに行かせて正解だったかも。
 女の子にとやかく言われたら反発するタイプだと思っていましたよ、はい。
 ともあれどうするか。
 こいつらは私の発言力じゃ止まりそうにありません。
 先生が来るまで時間を稼いで……、と考えている間に先生がドアを開けて入ってきました。

「こらー! 危ないでしょ!」
「やばっ」

 先生の声に吃驚した少年は慌てて降りようとしたため、足を踏み外してしまいました。
 うーん、これはいけるか?
 これで怪我したら先生がしょんぼりしてしまうだろうし、メグちゃんと花ちゃんを愛でる間に鍛えられた体幹で受け止めてあげましょう。
 いや、私が帰ったらあの子たち物凄い勢いで突っ込んでくるのよ。
 お相撲さんの稽古みたいになってるもん。

「うわああ!」
「おいしょっと」

 足を滑らせた少年をお姫様抱っこで受け止めます。
 うぐっ、……さすがにメグちゃんたちより重いからキツイ。
 受け止めきった後、そのまま少年を立たせる形で降ろしました。

「だ、だだ大丈夫!? ご、ごめんね先生が急に怒鳴ったりしたから」
「大丈夫です九重先生。私が受け止めましたし」
「千佳ちゃん体痛くない? 何ともない? いつもと違うところあったら言って?」

 受け止めても、先生はしょんぼりしてしまいました。
 オロオロと私の体を確認していく先生に、私は笑顔で答えましょう。

「はい! 何ともないです。安心してください」
「ほ、本当に? よかったぁ」

 心底安心した様子の先生、まぁ成り立ての先生だしこういうことを経験していい先生になっていってください。
 前世を含めると二十二歳の先生よりも年上なわけだし、私がしっかりとサポートしていくよ!
 いやごめん、高校生までしか体験してなかったから先生の方が大人だよ……。

 そんなことを考えていると、先生がキラキラとした目でこちらを見ていたことに気付きました。
 こ、この目は!?

「千佳ちゃんはすごいね。それに比べて私は……」

 キラキラ目からドンヨリした目へ。
 気分がコロコロ変わっていくのは見ていて面白いけれど、この性格だといずれ生徒にカッとなって手を上げてしまう可能性も否定出来ません。
 そう考えた私は、ここに覚悟を決めました。

 頑張って先生のサポートをしていこう!
 さすがに自分の力を過大評価しすぎなのかもしれないけど、このまま看過は出来ません。
 今回の人生ではやりたいことをやるって決めたんだ。
 まだたったの三ヶ月だけど、先生の事はとっても好きです。
 こんなにいい先生を、私は手伝いたい!

「大丈夫ですよ九重先生! 一緒に頑張りましょう!」
「あ、ありがとう千佳ちゃん! うん、うん! 頑張ろうね!」

 再びキラキラした目に戻った先生と共に握手を。
 小学生の私に比べれば大きな手だけれど、この手はまだ大きなものを持てません。
 責任とか、義務とか、色んなことも。
 それでも私が少しでも手助けできればいいなと思う、今日でした。

 後日、男の子連中が謝ってきたので許してあげました。
 どうも全員私に興味があるみたいだったけど、適当にあしらって愛ちゃんと湖月ちゃんとの会話に戻ります。
 残念! 男には興味ないので!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。 ところが、見合い当日。 息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。 「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」 万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。 部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。

職も住処もなくした私が訳ありアパートの管理人にスカウトされました。何やら事情があるようです。

ピヨピヨ
キャラ文芸
男に金をだまし取られた上に捨てられ、職もなくし、アパートも追い出された葵は、冬の繁華街をさまよううちにサラリーマンふうの美形の占い師に声をかけられる。 金もないし取り合わないつもりでいたが、彼のいう事が驚くほど当たる。これは本物と思い見料を払うが……。 実は彼の本業は占い師ではなく不動産屋!? ぼろぼろの葵が住処と職を見つけ、時に恐怖におびえ、時に癒され街の片隅で逞しく生きていく話です。

DWバース ―― ねじれた絆 ――

猫宮乾
キャラ文芸
 完璧な助手スキルを持つ僕(朝倉水城)は、待ち望んでいた運命の探偵(山縣正臣)と出会った。だが山縣は一言で評するとダメ探偵……いいや、ダメ人間としか言いようがなかった。なんでこの僕が、生活能力も推理能力もやる気も皆無の山縣なんかと組まなきゃならないのだと思ってしまう。けれど探偵機構の判定は絶対だから、僕の運命の探偵は、世界でただ一人、山縣だけだ。切ないが、今日も僕は頑張っていこう。そしてある日、僕は失っていた過去の記憶と向き合う事となる。※独自解釈・設定を含むDWバースです。DWバースは、端的に言うと探偵は助手がいないとダメというようなバース(世界観)のお話です。【序章完結まで1日数話更新予定、第一章からはその後や回想・事件です】

吉祥寺あやかし甘露絵巻 白蛇さまと恋するショコラ

灰ノ木朱風
キャラ文芸
 平安の大陰陽師・芦屋道満の子孫、玲奈(れな)は新進気鋭のパティシエール。東京・吉祥寺の一角にある古民家で“カフェ9-Letters(ナインレターズ)”のオーナーとして日々奮闘中だが、やってくるのは一癖も二癖もあるあやかしばかり。  ある雨の日の夜、玲奈が保護した迷子の白蛇が、翌朝目覚めると黒髪の美青年(全裸)になっていた!?  態度だけはやたらと偉そうな白蛇のあやかしは、玲奈のスイーツの味に惚れ込んで屋敷に居着いてしまう。その上玲奈に「魂を寄越せ」とあの手この手で迫ってくるように。  しかし玲奈の幼なじみであり、安倍晴明の子孫である陰陽師・七弦(なつる)がそれを許さない。  愚直にスイーツを作り続ける玲奈の周囲で、謎の白蛇 VS 現代の陰陽師の恋のバトルが(勝手に)幕を開ける――!

超絶! 悶絶! 料理バトル!

相田 彩太
キャラ文芸
 これは廃部を賭けて大会に挑む高校生たちの物語。  挑むは★超絶! 悶絶! 料理バトル!★  そのルールは単純にて深淵。  対戦者は互いに「料理」「食材」「テーマ」の3つからひとつずつ選び、お題を決める。  そして、その2つのお題を満たす料理を作って勝負するのだ!  例えば「料理:パスタ」と「食材:トマト」。  まともな勝負だ。  例えば「料理:Tボーンステーキ」と「食材:イカ」。  骨をどうすればいいんだ……  例えば「料理:満漢全席」と「テーマ:おふくろの味」  どんな特級厨師だよ母。  知力と体力と料理力を駆使して競う、エンターテイメント料理ショー!  特売大好き貧乏学生と食品大会社令嬢、小料理屋の看板娘が今、ここに挑む!  敵はひとクセもふたクセもある奇怪な料理人(キャラクター)たち。  この対戦相手を前に彼らは勝ち抜ける事が出来るのか!?  料理バトルものです。  現代風に言えば『食〇のソーマ』のような作品です。  実態は古い『一本包丁満〇郎』かもしれません。  まだまだレベル的には足りませんが……  エロ系ではないですが、それを連想させる表現があるのでR15です。  パロディ成分多めです。  本作は小説家になろうにも投稿しています。

欠損奴隷を治して高値で売りつけよう!破滅フラグしかない悪役奴隷商人は、死にたくないので回復魔法を修行します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
主人公が転生したのは、ゲームに出てくる噛ませ犬の悪役奴隷商人だった!このままだと破滅フラグしかないから、奴隷に反乱されて八つ裂きにされてしまう! そうだ!子供の今から回復魔法を練習して極めておけば、自分がやられたとき自分で治せるのでは?しかも奴隷にも媚びを売れるから一石二鳥だね! なんか自分が助かるために奴隷治してるだけで感謝されるんだけどなんで!? 欠損奴隷を安く買って高値で売りつけてたらむしろ感謝されるんだけどどういうことなんだろうか!? え!?主人公は光の勇者!?あ、俺が先に治癒魔法で回復しておきました!いや、スマン。 ※この作品は現実の奴隷制を肯定する意図はありません なろう日間週間月間1位 カクヨムブクマ14000 カクヨム週間3位 他サイトにも掲載

ひかるのヒミツ

世々良木夜風
キャラ文芸
ひかるは14才のお嬢様。魔法少女専門グッズ店の店長さんをやっていて、毎日、学業との両立に奮闘中! そんなひかるは実は悪の秘密結社ダーク・ライトの首領で、魔法少女と戦う宿命を持っていたりするのです! でも、魔法少女と戦うときは何故か男の人の姿に...それには過去のトラウマが関連しているらしいのですが... 魔法少女あり!悪の組織あり!勘違いあり!感動なし!の悪乗りコメディ、スタート!! 気楽に読める作品を目指してますので、ヒマなときにでもどうぞ。 途中から読んでも大丈夫なので、気になるサブタイトルから読むのもありかと思います。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...