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第7魔王城玉間にて青白い肌に赤い瞳の男は項垂れていた。
「毎日、毎日戦いばかり…」

「それは、仕方ないです。戦争中ですから。そんな事もわからないのでございますか?若様」

表情をぴくりとも変えずに黒髪の少女は応えた。見た目は、12歳ぐらいの少女だが御年124歳を超えている吸血鬼だ。この年齢でも吸血鬼の中ではまだまだ小童らしい。

「紅子。今、私のことを馬鹿にしなかったか?」

「紅子は、若様を馬鹿にした事はございませんよ。下に見ているだけでございます」

「酷い…」
青白い青年の肌が、より一層青白くなった。

「酷いのは、若様でございます。魔王様の三男で実力もございますのにその力を発揮されず勇者に負ける事124回。その結果、7人のご兄弟の中で実績最下位。このボロ屋敷に押し込まれ…こほん。第7魔王城の主だなんて。部下も紅子1人…」

紅子は、タブレットPCを起用に使うと侵略実績の棒グラフを見せた。そのグラフの最後には、0件。第3王子ルークと書いてある。

「私は、出来れば戦いたくない。いや、本当はこの家から出たくない…」

「ちっ」
紅子が、舌打ちをした。

「ねぇ、今舌打ちしなかった?」

「気のせいでございます」

「…正直、戦争なんか止めて皆んなで仲良く暮らせば良いのに…紅子だって私なんかに付かず別の兄弟の所に行って良いんだよ。ほら。ヤマト姉さんは、君の事を…」

「お断り致します。他のご兄弟様に着いたら楽ができなくなりますので」

「楽って君ね…」

「まぁ、でもそろそろ人間の街に行くのも良いかもしれません。若様が弱いと言う情報が伝わりすぎてこの第7魔王城に挑む勇者が全くいなくなりましたから」

「通りでここ50年ぐらい誰も尋ねてこないわけか…」

「はい。第7魔王弱すぎて勇者たちが虐めている気持ちになって辛いと街の方々に話しているそうです。これは、精神攻撃に値すると思い実績報告をしたのですが事務に鼻で笑われました」

「ちょ…紅子さん。それ報告したの?」

紅子は、こくりと頷く。

「私辛くなってきた。よし、こうなったら人間の生態を調べるために街に出てみよう。暫く、人間と生活して見るのもよくないか?」

「そうでございますね。第7王子死亡説ま まで出ていますし戦をせず、人間の生態を観察し人間たちの魔法やらを学ぶのも良いかもしれません」

「死亡説……よし、そうと決まったら早速行こうじゃないか」

「かしこまりました。若様」
こうして、魔王様のへなちょこ王子と部下の紅子は人間の街へ繰り出したのです。





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