クロックワーカーの遺したモノ

✟·̩͙✾叶彩

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二章 共に逝きる

第二十四話 闇に溶け込む

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 ~星の図書館~

 図書館内の全ての本棚に白い布が掛けられる。町中に夜を告げる鐘が鳴り響き青年は立ち上がった

エトアル「ハロスくんもう向かう気?」

ハロス「準備は終わらせましたからね。日も沈みましたし」

リーベリア「焦り過ぎ。俺達も行くから屋敷についてからの動きだけでも最後にもう一回確認するよ」

ハロス「…わかりました」

エトアル「ハロスくんは黒髪の男が目的なんだよね?場所の目星はついてる?」

リーベリア「鴉を使って調べた限りだと結構屋敷広いけど…」

ハロス「妹の方が銃を使っていたしお互い自分の戦闘に干渉されるのを嫌っている感じがしたので離れた位置ですかね…」

エトアル「屋敷に行って誰が最初に出てくるかによるかな」

リーベリア「最初に件の彼が出てきたら俺とエトちゃんが屋敷の奥に向かう感じかな…」

エトアル「逆ならハロスくんだけでも先に進ませる形か…上手く行くといいけど」

ハロス「…とにかく行きましょう。時間は有限ですから」

リーベリア「ちょ…ハロスくん!」

 ハロスが一足先に図書館を飛び出す。残された二人は静かにうなだれた

エトアル「完全に憎悪に飲まれてる…」

リーベリア「エトちゃんはどう動くつもり?」

エトアル「遠距離同士だと私とフシールちゃんじゃ確実に負けるだろうね…リーくんの魔法に執着してるのもあるし私はラルカちゃんの方かな…」

リーベリア「ラルカちゃんの戦い方なら屋敷の中に居るだろうね…」

エトアル「見つけるまでのリミットが心配かな」

リーベリア「なるべく早くフシールちゃんとの戦闘を終わらせて殺気を解除させないとか…」

エトアル「とにかく追いましょう。性格的にフシールちゃんは玄関ホールに居るだろうから今のハロスくんが一人でぶつかれば確実に負けるわ」

リーベリア「そうだね。明日までに帰ってこれるといいけど」

エトアル「生きて帰れれば…だけどね」

 リーベリアは立ち上がるとエトアルの手元に目を落とした

リーベリア「エトちゃん…それ何だったの?話してる間にやってたみたいだけど」

エトアル「正位置で…塔。ハロスくん…」

リーベリア「最近は悪いカードばっかりだね」

エトアル「希望が少しでもあるならそれを掴むだけよ」

 二人は図書館を施錠するとハロスを追い闇の中へ消えていった

 ~森の屋敷 談話室~

 本を読むラルカの前でフィロとフシールは日中の手合わせで使った武器の手入れをしていた

フィロ「雨に打たれたからちゃんとやらないと錆びるな…」

フシール「あちゃぁ…装填用に持ってた弾全部湿気ってるよ…これじゃ使い物にならないな」

ラルカ「なんでわざわざ悪天候の日にやるんですか…」

フィロ「血が流れるから掃除の心配しなくていいんだよな…あ、フシールそっちに置いてある拭い紙取って」

フシール「え?あぁ…これか、はい。ん~…あと雨の日だと匂いが分かりにくくなるからってのもあるかな…」

ラルカ「でもあんなに大雨だったのに夜になる頃には止みましたね。雲が晴れても月は結局見えませんけど…」

フシール「それにしてもフィロ兄その刀いつから使ってるっけ?国出る前からだよね」

フィロ「クソみてぇな家のとはいえ受け継がれてきたものだしな。それにこいつが一番使い慣れてる」

ラルカ「お二人の故郷ってどんな所なんですか?」

 紅茶と茶菓子を準備しながらラルカが尋ねた

フシール「あれ?結局話してこなかったんだっけ…」

フィロ「どんな所か…この国ほど広くはないな。同じように上に立つ人間はいたけどな」

フシール「実力主義だけどみ~んな臆病wでも私は好きだよ?一言で言うなら簡単に人が死ぬ国」

ラルカ「いつか行ってみたいですね」

フィロ「そうかぁ?俺はあんなところに連れて行きたくねぇな。ていうかまず帰りたくない」

ラルカ「そうですか…まぁ私はお兄様の意向に従うだけですから」

 少し残念そうにしながらも静かに微笑みティーカップに口をつける。暫くするとフィロが手を止めた

フィロ「…フシール、ラルカ」

フシール「どうしたの?」

ラルカ「何かありましたか?」

フィロ「客人だ。森の中を真っ直ぐに屋敷へ向かってる」

フシール「いつもの二人じゃないの?」

フィロ「いや…随分と懐かしい気配も一緒に来てるなぁ」

ラルカ「戦闘になりますか?」

フィロ「あぁ…二人とも今日は本気で演じろ」

フシール「久々の舞台か~楽しみぃ」

ラルカ「でしたら私は準備に行かなくては行けませんね」

フィロ「さて…二人の相手は誰になることやら」

フシール「誰が相手でも関係ないよ。観客に待つのはバッドエンドだけだからね」

ラルカ「お二人のお相手が気の毒ですね…」

フシール「それじゃ私は玄関ホールで開幕の合図でもしようかな」

フィロ「俺は道場に行くか…馬鹿の銃声も届かないだろうしあそこが一番落ち着くだろ」

フシール「失礼な…」

ラルカ「でしたら私は地下に行きましょうか」

フィロ「了解。屋敷内には不用意に入らないほうが良さそうだな…それじゃあ二人とも好きに殺れ」

フシール「りょうか~いw」

ラルカ「了解です」

 フィロの合図で三人は敷地内に散った。数分後暗闇に包まれた屋敷に舞台の始まりを告げるカーテンコールが鳴り響いた
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