クロックワーカーの遺したモノ

✟·̩͙✾叶彩

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二章 共に逝きる

第十九話 雲に隠れる月

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 ~森~

 日が暮れ始め新緑の森はオレンジ色に染まりだしていた。歩き続けてると徐々に風が強くなり森の奥へと抜けていく

ラルカ「…もう夜が来るのか」

 崖の上で海を見下ろす少女は静かにその場に腰掛け歌を口ずさみ始める

ラルカ「…空はまた変わり~Dollは歌い踊る~…破滅の忌み子よ~永遠の愛は消える~…」

フィロ「またその歌?」

ラルカ「お兄様…」

フィロ「昔から歌ってるよね、続きなんだっけ?」

ラルカ「…続きですか?確か…翼広げ逝く~白に染まり出す世界~…終わりに抗うな~主の為に~」

フィロ「ホント残酷な歌詞だよな。なんでその歌好きなの?」

ラルカ「好きではないですよ?」

フィロ「ならなんで歌ってるの…w」

ラルカ「唯一覚えてた歌です」

フィロ「曲名は?」

ラルカ「…【ange restrictionsーアンジュ レストリクシオンー】なんでか忘れられなくて…」

フィロ「天使の束縛ねぇ」

ラルカ「意味わかるんですか?」

フィロ「どこの国の言葉か忘れたけどね。でも聞いたことないな」

ラルカ「私もないです。なんでこれは覚えてるんだろ」

フィロ「…ラルカみたいだな」

ラルカ「え?」

フィロ「ん~ん…なんでもない。そんなとこに座って落ちるなよ?流石に海に落ちたら助けられねぇからな」

ラルカ「まずこの崖から落ちてる時点で死んでますよね?」

フィロ「そりゃな」

ラルカ「まぁ糸で支えてるので問題ないですよ」

フィロ「そうか」

 暫く二人は並んで海を眺めていた。夕陽が完全に沈みあたりが一気に暗くなる

フィロ「ラルカそろそろ戻ろう」

ラルカ「…」

フィロ「ラルカ?って…寝てる?」

 静かに寝息を立てて少女は横たわっていた

フィロ「…ったく、しょうがないな」

 兄に抱き上げられ真っ白な髪が宙へ揺れ落ちる。対極の色を持つ二人は夜の森へと消えていった

 ~屋敷 玄関ホール~

フィロ「ただいま」

フシール「おかえり~遅かったね、お風呂はi…ってあれ?」

フィロ「静かにしろ」

フシール「寝ちゃったの?」

フィロ「うん」

フシール「フィロ兄ズルい…私もラルカちゃん抱っこする~!」

フィロ「お前そんな言い方しといて担ぎ上げるだろ」

フシール「そんな綺麗に姫抱きしてたらなんかあったとき戦えないじゃん」

フィロ「片手で支えてもう片方で戦うくらい簡単だろ」

フシール「なんでアンタ刀なのにそれ出来るの気持ち悪い」

ラルカ「んん…」

フシール「っ!…寝てる?起きてない?」

フィロ「馬鹿女が騒ぎ過ぎて起こす前に部屋に寝かせてくるか」

フシール「おぉい!誰が馬鹿だって?」

フィロ「悪い悪い間違えた。見た目だけは良い馬鹿女だったな」

フシール「酷くなってんじゃん!」

フィロ「はいはいw」

 笑いながら屋敷の奥へ向かうフィロを横目にフシールは浴場へと歩き出す

 ~屋敷 ラルカの部屋~

フィロ「疲れでも溜まってたのか…?何年経っても寝顔は幼いままだなw」

ラルカ「んむぅ…」

 ベッドに寝かせたラルカの頬を突くと少しだけ眉間にシワを寄せて小さく声を上げている。その様子を面白そうに眺めながらフィロは暫くその場にいた

 コンコン…

フィロ「…フシールか」

フシール「フィロ兄もお風呂入りなよ。ラルカちゃんは…起こすの?寝かせたままなら着替えさせちゃうけど」

フィロ「起こすよ、動いたからラルカも汗とか流したいだろうしね。俺は取り敢えず風呂行くからフシール任せたよ?」

フシール「は~い」

 妹達に背を向けてフィロは部屋を後にした

フシール「んふふ~可愛い寝顔」

 カチャ…

ラルカ「ん…何してるんですか」

 フシールが眠っていたラルカに銃を向けるとボーッと目を開きながら少女は銃を掴んだ

フシール「おはよ~ラルカちゃん」

ラルカ「寝起きの景色が最悪ですね…私いつの間に帰ってたんですか?」

フシール「フィロ兄が抱きかかえて帰ってきたよ?」

ラルカ「…え?」

フシール「天使と悪魔見てる気分だったよ~」

ラルカ「お兄様にお礼しないとですね…」

フシール「お!お礼参り行く?」

ラルカ「殺し合いしに行ってどうするんですか」

 顔を見合わせて笑う二人は少しすると部屋を後にし暗い廊下を歩き出した

 ~屋敷 談話室~

フィロ「あ、ラルカ起きたんだ。おはよ」

ラルカ「おはようございます」

フシール「夜だけどね~w」

ラルカ「お兄様が運んでくれたって聞きました。ありがとうございます」

フィロ「流石に妹崖っぷちに置いてくわけ無いでしょ」

 髪を拭きながら談話室にやってきたフィロはソファに腰掛けた

フィロ「ラルカ、髪乾かしてくれない?」

ラルカ「えぇ、良いですよ」

フシール「ラルカちゃんもお風呂入ってきなよ~」

ラルカ「はい」

フィロ「魚食いたいな…」

フシール「焼き?煮?生?」

フィロ「生」

ラルカ「この国だと珍しい食べ方ですよね」

フィロ「まぁ生魚は鮮度命だからな。ちゃんと仕入れてるから問題ないけど」

フシール「んじゃ私先に食堂行ってよ~」

ラルカ「楽しみですね。あっ!そうだ…お兄様、今度またお手合わせお願いしていいですか?」

フィロ「いいよ。明日にでもやるかw」

ラルカ「はい」

…五年間。大きな変化は無く偽物の兄妹達は仲睦まじく暮らしていた。夜も更けて次第に三日月が雲に隠れ屋敷は闇に包まれていく…
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