クロックワーカーの遺したモノ

✟·̩͙✾叶彩

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一章 歪んだ生活

第三話 引き裂かれた兄妹

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 ~森~

 日が暮れても帰ってこない妹を案じ、ハロスは夜の森へ探しに来ていた。入口付近にはどこにも居なかった為少しずつ森の奥へと進んでいた

ハロス「ラルカ居るなら返事しろ!…っ…やっぱり気配すらしない…まさかこれより奥の方に入っていったのか…?」

フィロ「こんな所に客人なんてなぁ…夜の森に何しに来たんだ?」

ハロス「っ!…お前…誰だ?」

フィロ「【この森に住んでる者】…かな?質問に答えてやったんだ。今度はこっちの質問にも答えろよ?」

ハロス「…帰ってこない妹を探しに来た」

 警戒しているハロスを前にしても飄々とした態度のフィロは何か企んでいるように尋ねた

フィロ「妹…白髪の小さな女の子の事か?」

ハロス「そう…だけど…なんで知ってるんだ。まさかお前がラルカに何かしたのか?」

フィロ「あ~やっぱりラルカちゃんの事かw夜の森に迷い込んでる女の子が居たから俺の屋敷に案内したんだよ。狼に食われるよりマシだろ?」

ハロス「それなら今ラルカはお前の屋敷にいるってことか!?」

 フィロの言葉を聞いた瞬間ハロスは殺意を表に出してフィロに詰め寄った

フィロ「落ち着けよw俺を殺したところで意味ねぇだろ?会わせてやるから着いて来い」

 一定の距離を保ちながら二人は森の奥にある屋敷へと向かった

 ~屋敷 談話室~

 屋敷へ戻るとフシールが先程と同じように談話室で銃の手入れをしていたが…ラルカの姿はその場にはなかった

フシール「また出かけてたんだね~おかえり。ところで…後ろの男の子は誰?毎回人を拾ってくる癖でもあるの?」

フィロ「ラルカちゃんを探しに森の奥まで入ってきたお兄さんだよ」

フシール「へ~…こんな夜中に来るなんてよっぽど心配だったんだねw」

ハロス「ラルカは…今どこにいるんだ」

フシール「あ~…お部屋で眠ってるよ~?だから君も落ち着きなって」

ハロス「良いから早く妹に会わせろ!」

フィロ「フシール、案内してやれ」

フシール「フィロ兄がそういうなら…こっちだよ。着いて来な?」

 地下室へ続く暗い廊下を進みながらフィロとフシールは小声で話し始めた

フィロ「それにしても…一人で談話室にいるってことはもう殺しちまったのか?」

フシール「そんな訳無いじゃん。痛みで気絶しちゃったみたいだから置いてきただけ」

ハロス「お前達…今何か言ったか?」

フィロ「いやぁ?何も言ってないさ」

フシール「まぁまぁ…そんなに警戒しないで?ほら着いたよ、ラルカちゃんならこの扉の先にいる」

フィロ「まぁ…あの子も遊び疲れて扉を開けれないだろうから君が開けてやりなよ」

 ~屋敷 地下室~

 ガチャ…キィー

ハロス「ラルカ…ここに居るのか…?」

ラルカ「兄…さん?なんで、ここに…?」

 ハロスが地下室の扉を開けて中に入ると血が飛び散り赤く染まった部屋の真ん中でラルカが倒れていた。傷だらけの少女は今も尚…血を流して苦しんでいる

ハロス「ラルカ!お前その怪我…」

ラルカ「兄…さん…足動かないの…ずっとズキズキする…私…」

ハロス「落ち着け、もう喋らなくていい!なんで…なんでこんな目に…」

フィロ「あぁ…随分と楽しんだみたいだなぁ…目が覚めたんだラルカちゃん」

ラルカ「あぁ…お兄…さん」

ハロス「お前らがラルカをこんな目に合わせたのか!?」

フィロ「…それはラルカちゃんに聞きなよw」

ハロス「ラルカ…」

ラルカ「あ…あぅ…ち…違うよ?だって…私は遊んで…だから…」

ハロス「ラルカ?どうした…おい!」

 フィロに名前を呼ばれ彼の深紅の瞳を見た瞬間ラルカは目の焦点が合わなくなり言葉に詰まった

フィロ「彼女も言ってるだろ?【遊んだだけ】なぁ…まだ何か言うか?少年」

ハロス「なっ…!」

フシール「そんな睨まないでよぉ…あ~…でもその金色の瞳は綺麗だなぁ…」

フィロ「というかフシール?室内で無闇やたらに銃を撃つなって言ってるよな!?」

フシール「え~…別に良いじゃんその方が楽しいんだし」

フィロ「いいわけねぇだろ。壁やら床に穴開けてさぁ…修理すんのにどんだけ時間かかると思ってんの?」

フシール「うるさいなぁ…私の好きなようにさせてよ!私は自分が楽しくないと嫌なの!」

フィロ「お前…少しは言う事を聞け!」

フシール「フィロ兄の言う事聞く道理はありませんから~絶対嫌です~!」

フィロ「ホントにマジで…!」

 キィー…バタン!

フィロ「あ…?」

フシール「あれ…いつの間にか居なくなってる」

フィロ「あ~あ~…フシールが目離したから逃げ出したじゃん」

フシール「目を離したのはフィロ兄もじゃん!というかフィロ兄がわざわざ今話さなければこんな事になってないし…」

フィロ「はいはいwいいから追うぞ?」

 喧嘩を始めた二人の目を盗んでハロスはラルカを連れ部屋を飛び出していた。しかし暗く長い廊下を腕を引かれて走っていたラルカが突如として立ち止まった

 ~屋敷 廊下~

ラルカ「ねぇ…待ってよ兄さん…どこに行くの?」

ハロス「帰るんだよ。とにかくすぐにこの屋敷を出ないと!」

ラルカ「そんな…急がなくても…それにもう…走れないよ」

ハロス「…っ!ごめんわかってる、大丈夫だから。ラルカ、俺の背中に乗れ。足痛いよな俺が背負って走るからもう少し我慢してくれ」

ラルカ「でもっ…あれ…?」

ハロス「ラルカ…どうした?早く!」

ラルカ「お兄さんの声が聞こえる…」

ハロス「声って…駄目だ!ラルカ聞くな!」

フィロ「ラルカちゃ~ん?見つけた…wほら、こっちにおいで?」

ラルカ「あ…」

 後ろからゆっくりと近付いてきたフィロに話し掛けられ、ラルカは片足を引き摺りながらゆっくりとフィロの元へ歩き出した

ハロス「ラルカ行くな!」

 ハロスの叫びも虚しくラルカはフィロの腕の中へ吸い込まれる様に捕まってしまった

フィロ「ん、良い子だね~」

ハロス「お前…ラルカに何をしたんだ!」

フィロ「さぁ…何かしていたとしてもそれを教えるわけねぇだろ?」

ハロス「今すぐ離れろ…」

フィロ「んな事言ったって…この子から俺の方に来たんだよ?なぁ…ラルカちゃんw」

ラルカ「…うん…あれ…?なんで泣いてるの…兄さん」

ハロス「ラルカ…頼む、こっちに来てくれ…!」

フィロ「おっと…それ以上近付くなよ?悪いが俺はフシールと違って遠距離武器は持ってないもんでね…虐める趣味もねぇぞ。大事な妹の首が飛んで目の前で失いたいか?」

 ラルカの首に刃が当てられハロスは身動きが取れなくなってしまった

ハロス「クズが…」

フィロ「ハハハッ!そうだなぁ…お前だけなら見逃してやろうか?」

ハロス「見逃す…?巫山戯んじゃねぇよ…俺一人で帰れるわけねぇだろうが!」

フィロ「大丈夫だよ…ラルカちゃんは俺等と一緒にこの屋敷に居るからさ…永遠にな」

ハロス「どういう意味だテメェ…」

フィロ「それくらい自分で考えられるだろ?だがまぁ…次は無いぞ?」

ハロス「巫山戯んな…待てよ!」

フィロ「行こうか…【ラルカ】?」

ラルカ「はい…お兄…様」

 フィロが名前を呼んだ瞬間ラルカの瞳から光が消えた

ハロス「ラ…ラルカ?」

ラルカ「え…?今…お兄さん私の事…」

フィロ「ラ~ルカ?気にしなくて良いの。それから…フシール!撃つなよ?」

フシール「え~…なんで?話が終わったんなら別にいいでしょ?」

 柱の上からフシールが飛び降りてきてラルカを囲うようにフィロの隣に立つ

フィロ「そこから話聞いてたなら分かってんだろ?」

フシール「わざわざ逃がす理由がなくない?フィロ兄が殺らないなら私が殺るけど」

フィロ「やめろつってんのが聞こえねぇの?俺の玩具だ、手を出すな」

フシール「別に良いじゃん!折角追いかけて来たのにつまんないよ…」

フィロ「とにかく駄目だ、フシールがすぐに玩具を壊すからつまんなくなってんだろうが。それに…放っといた方が面白そうだからな」

フシール「壊れやすいのが悪いんじゃん…ハァ…ホントフィロ兄の考えは理解出来ないわ」

フィロ「それは同感。俺にもフシールの悪趣味は理解出来ねぇから安心しろ」

フシール「悪趣味って酷…」

フィロ「事実じゃねぇか」

フシール「…もういいや、さっさと行こ?フィロ兄と言い合ったところで勝てる気しないし興が冷めた」

フィロ「そうだな…それじゃあな?少年w」

ハロス「待てよ…ラルカを返せ!連れて…行かないでくれ…!」

 この兄妹にはハロスの事など眼中に無いのだろう。フィロの殺気に動けなくなったハロスを置いたままラルカを連れ二人は歩きだした。直前まで言い合いをしてたのが嘘かのようにまた笑って話している

フシール「あ~あ~…惨めだなぁ…可哀想…」

フィロ「1ミリも思ってないだろ」

フシール「そんなことないよ~それで?ラルカちゃんをどうする気なの?」

フィロ「ん~…俺等の妹にでもするか?普通に可愛いしwまぁ…もうこの子はそう思ってるけどなぁ…」

フシール「やっぱもう洗脳終わってたんだwまぁ賛成~妹出来るなんて思わなかったなぁ…それにしてもホント残酷だよね~本当の家族を忘れてすり替えられるなんてさw」

フィロ「別に…記憶を抜いただけだよ」

フシール「それでも精神崩壊起こす方がまだマシだってw」

フィロ「まぁ…不思議な子だし良いんじゃないか?」

フシール「不思議って?」

フィロ「…内緒w面白そうだし良いだろ」

フシール「ホントフィロ兄そればっか」

ラルカ「ねぇ…お兄様…」

フィロ「ん?どうしたの、ラルカ」

フシール「お兄様って…何それ可愛い…」

ラルカ「さっきのお兄さん…また会える?」

フィロ「さぁ…でも会えるんじゃない?」

フシール「ラルカちゃんはあのお兄さんに会いたいの?」

ラルカ「なんだろ…分かんないの…でもまたお話したいなぁって」

フシール「あ~ぁwもう完全に忘れちゃってんだね」

ラルカ「忘れる…?」

フィロ「ラルカは気にしなくていいよ」

ラルカ「分かった…あれ…?そういえばなんであのお兄さん…私の名前知ってたんだろ…」

フィロ「ラルカ、早く行くぞ」

ラルカ「…うん」

 ふと最後のハロスの言葉が気にかかりラルカは足を止め後ろを振り返ったが、すぐに先を歩くフィロに呼ばれ二人を追い掛けて行った

 ~屋敷外の森~

ハロス「明らかにラルカの様子がおかしかった…あの男に何かされたのか…?とにかく絶対に助け出さないと…絶対に…あの兄妹を赦さねぇ…あの男を…殺してやる…!」

 兄の事を今までの日常を…全て忘れてしまったラルカと、一人町へと歩き出したハロス。殺人鬼達に気に入られた不運な兄妹は新しくなる各々の生活へと向かっていった
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