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最終章
運命の軌道修正
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お気に入りの川原に寝転び、優希はじっと空を見上げていた。
朝から何時間そこに居たか分からない。
「何やってんだ俺…」
ため息混じりにそう呟くが、後悔はなかった。
美咲や隆康、奈都の心に少しでも俺の言葉が残ってくれたらそれでいい。
伝えなければいけないことを、俺はもう10年も記憶の奥に閉じ込めて放置してきたんだ。
その報いだと思えば、なんてことはない。
………んなわけあるか。
やべ、すっげえ悔しい…。
もう少し早く…、気付けたなら…
そんな想いが頭の中でループしていた。
ゆっくり起き上がると、さらさら流れる川が目に入る。
岩や川の幅に沿って、逆らうことなく流れるその様子がまるで今までの自分のことのように見えた。
だけどそれは、さらさらと音を立てるだけで、寂しそうにも見える。
立ち上がった優希は、着物が濡れることも厭わずバシャバシャと川に入っていった。
流れるままに流されていく水が俺なら、それをバシャバシャと流れに逆らって歩くのも、俺だ。
そんな思いで、川に入る。
「優ちゃんっ!」
その声に振り向くと、美咲が心配そうに駆け寄ってくる。
その後ろには、隆康と奈都もいた。
「美咲…」
「何してるのっ?バカな真似は止めて!」
美咲は泣きそうな顔をして、バシャバシャと同じように川に入ってくる。
ん?
バカな真似?
「…は?」
思わず出た言葉に、美咲はキョトンとする。
「バカな真似って、お前何想像したんだよ」
「え…、死のうとしたのかと…」
「…アホか。こんな浅い川で死ねるわけねえだろ」
「…あ…、そっか…」
美咲たちがここに来たってことは、もう祝言は終わったってことだよな…
「優太朗様は、何もかも真っ白にしたかったんですよね?こうして…」
そう言って、奈都も川に入ってくると、両手で水を掬い上げて笑った。
「いや…うん、まぁ…頭をスッキリさせようかと」
流されるままの川が俺に見えたからなんて、説明出来る気がしねえ。
そう苦笑いする。
「そうか、確かに何もかもスッキリしそうだ」
隆康も続けて川に入ってくる。
なんだ、こいつら。
皆、何やってんだ。
目の前で、隆康と奈都がお互いを見つめて微笑み合う。
…ん?
なんだ、この二人の良い雰囲気…
仮にも咲の前で…
「優ちゃん…、あのね、祝言取り止めたんだよ」
「えっ?」
予想外の言葉に目を見開く。
「優太朗殿が言われたのではないか」
「…何」
「今は今しかないと」
隆康がそう言って微笑んだ。
「優太朗様の言葉、心に響きました」
奈都も嬉しそうに微笑む。
こんなことがあるだろうか。
この時代の運命を変えることなんて出来ないと思ってた。
だけどこうして、隆康と奈都、それから俺も美咲も笑い合えてる。
「良かった…」
ホッとしていると、隆康と奈都が声を揃え言った。
「ありがとう、優太朗殿」
「ありがとう」
「これから、奈都を妻に迎えるために自分の素直な気持ちを大事にしようと思う」
隆康の隣で奈都も頷く。
なんだこれ…
もしかして俺、運命の軌道修正出来たのか?
なんか、超嬉しいんですけど。
俺は思いっきり片足を水面から蹴りあげた…
「うりゃっ!」
「わっ!」
「きゃっ!」
美咲、隆康、奈都に思いっきり降りかかった川の水が、キラキラとしぶきを上げる…
ぷっ…と吹き出して笑う美咲も、両手で水を降りかけた。
つられて隆康と奈都も、俺と美咲に水を降りかける。
いい年した大人が四人、川で大はしゃぎだ。
でも、いい顔して笑ってんじゃん。
俺、やっぱりこいつら超好きだな。
どの時代でも…だ!
朝から何時間そこに居たか分からない。
「何やってんだ俺…」
ため息混じりにそう呟くが、後悔はなかった。
美咲や隆康、奈都の心に少しでも俺の言葉が残ってくれたらそれでいい。
伝えなければいけないことを、俺はもう10年も記憶の奥に閉じ込めて放置してきたんだ。
その報いだと思えば、なんてことはない。
………んなわけあるか。
やべ、すっげえ悔しい…。
もう少し早く…、気付けたなら…
そんな想いが頭の中でループしていた。
ゆっくり起き上がると、さらさら流れる川が目に入る。
岩や川の幅に沿って、逆らうことなく流れるその様子がまるで今までの自分のことのように見えた。
だけどそれは、さらさらと音を立てるだけで、寂しそうにも見える。
立ち上がった優希は、着物が濡れることも厭わずバシャバシャと川に入っていった。
流れるままに流されていく水が俺なら、それをバシャバシャと流れに逆らって歩くのも、俺だ。
そんな思いで、川に入る。
「優ちゃんっ!」
その声に振り向くと、美咲が心配そうに駆け寄ってくる。
その後ろには、隆康と奈都もいた。
「美咲…」
「何してるのっ?バカな真似は止めて!」
美咲は泣きそうな顔をして、バシャバシャと同じように川に入ってくる。
ん?
バカな真似?
「…は?」
思わず出た言葉に、美咲はキョトンとする。
「バカな真似って、お前何想像したんだよ」
「え…、死のうとしたのかと…」
「…アホか。こんな浅い川で死ねるわけねえだろ」
「…あ…、そっか…」
美咲たちがここに来たってことは、もう祝言は終わったってことだよな…
「優太朗様は、何もかも真っ白にしたかったんですよね?こうして…」
そう言って、奈都も川に入ってくると、両手で水を掬い上げて笑った。
「いや…うん、まぁ…頭をスッキリさせようかと」
流されるままの川が俺に見えたからなんて、説明出来る気がしねえ。
そう苦笑いする。
「そうか、確かに何もかもスッキリしそうだ」
隆康も続けて川に入ってくる。
なんだ、こいつら。
皆、何やってんだ。
目の前で、隆康と奈都がお互いを見つめて微笑み合う。
…ん?
なんだ、この二人の良い雰囲気…
仮にも咲の前で…
「優ちゃん…、あのね、祝言取り止めたんだよ」
「えっ?」
予想外の言葉に目を見開く。
「優太朗殿が言われたのではないか」
「…何」
「今は今しかないと」
隆康がそう言って微笑んだ。
「優太朗様の言葉、心に響きました」
奈都も嬉しそうに微笑む。
こんなことがあるだろうか。
この時代の運命を変えることなんて出来ないと思ってた。
だけどこうして、隆康と奈都、それから俺も美咲も笑い合えてる。
「良かった…」
ホッとしていると、隆康と奈都が声を揃え言った。
「ありがとう、優太朗殿」
「ありがとう」
「これから、奈都を妻に迎えるために自分の素直な気持ちを大事にしようと思う」
隆康の隣で奈都も頷く。
なんだこれ…
もしかして俺、運命の軌道修正出来たのか?
なんか、超嬉しいんですけど。
俺は思いっきり片足を水面から蹴りあげた…
「うりゃっ!」
「わっ!」
「きゃっ!」
美咲、隆康、奈都に思いっきり降りかかった川の水が、キラキラとしぶきを上げる…
ぷっ…と吹き出して笑う美咲も、両手で水を降りかけた。
つられて隆康と奈都も、俺と美咲に水を降りかける。
いい年した大人が四人、川で大はしゃぎだ。
でも、いい顔して笑ってんじゃん。
俺、やっぱりこいつら超好きだな。
どの時代でも…だ!
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