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第四章
一人きり
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いってー。頭がズキズキする。
そっか、俺さっき木材の下敷きに…
「おい、サボり野郎…」
………………は?
今、俺に言った?
目を開けると…ぼんやり視界に誰かが映り込む。
「なーにやってんだよ、お前。」
「…は? …隆康…?」
こいつ、こんな口調だったっけ?
「…は?じゃねーよ。
ていうか、幼馴染みの名前、間違ってんじゃねーよ。"す"が余計だぞ。
お前、昨日から帰ってこなくて今日1日会社も無断欠勤してるって、おばさんオロオロしてたぞ。」
…なんのことだ?
「幼馴染み?今日?無断欠勤?」
…っ!?
ハッとして起き上がると辺りを見渡した。
近代的な建物、車や街の雑踏や風景、俺は、タイムスリップした時のあの土手にいた。
目の前には、隆也が呆れ顔で立っている。
そして、俺一人が現代に戻ってきたことに気付いた。
「…嘘だろ…?」
「お前なぁ、今日で会社に連絡して謝っとけよー。」
「…ん。」
「あとな、……美咲も昨日から帰ってねぇんだ。」
「………」
「お前、なんか知ってんのか?」
まだ、言えねぇよな…
俺は「いや…」と首を横に振った。
隆也の話で、俺たちがタイムスリップしてた数日が、こっちでは1日しか経ってないことが分かる。
「…なぁ、優希…」
「ん?」
「…お前、本当はずっと…」
隆也が何か言いかけた時…
「優希!」
俺たちを見つけた仕事帰りの奈々が、走ってくるのが見えた。
「奈々…」
隆也は話を止めて呟いた。
「……奈々、ずっと心配してたぞ。」
涙混じりに、駆け寄ってきた奈々。
複雑だった。
……早く、美咲のとこに戻らなきゃ。……
奈々に心配かけてたことより、俺は、美咲を想って焦ってたのだから。
あの時代に、美咲を一人にしてしまったことだけが、気掛かりで仕方なかった。
その頃…
「優ちゃん!…優ちゃん!!」
「…ん………咲…?」
「良かった。怪我してない?大丈夫?」
「私は…」
「…私?……倒れてきた木材の下敷きになって…」
優太朗の口調に違和感を覚えた美咲は、嫌な予感に一気に鼓動が早くなるのを感じた。
「…そうか…大丈夫だ。…咲、もう、私の心配など、隆康殿の前でしてはならない。」
「…優……っ…太朗様…?」
ドクッと一つ大きな音が身体の中から聞こえた。
視線を逸らして俯く優太朗…
美咲にはすぐに分かった。
目の前に居るのは、"優ちゃん"じゃない。
「…嘘………。一人になっちゃった…」
茫然とする美咲…
消え入りそうな声は、心配して駆けつける人々の声にかき消されたのだった。
そっか、俺さっき木材の下敷きに…
「おい、サボり野郎…」
………………は?
今、俺に言った?
目を開けると…ぼんやり視界に誰かが映り込む。
「なーにやってんだよ、お前。」
「…は? …隆康…?」
こいつ、こんな口調だったっけ?
「…は?じゃねーよ。
ていうか、幼馴染みの名前、間違ってんじゃねーよ。"す"が余計だぞ。
お前、昨日から帰ってこなくて今日1日会社も無断欠勤してるって、おばさんオロオロしてたぞ。」
…なんのことだ?
「幼馴染み?今日?無断欠勤?」
…っ!?
ハッとして起き上がると辺りを見渡した。
近代的な建物、車や街の雑踏や風景、俺は、タイムスリップした時のあの土手にいた。
目の前には、隆也が呆れ顔で立っている。
そして、俺一人が現代に戻ってきたことに気付いた。
「…嘘だろ…?」
「お前なぁ、今日で会社に連絡して謝っとけよー。」
「…ん。」
「あとな、……美咲も昨日から帰ってねぇんだ。」
「………」
「お前、なんか知ってんのか?」
まだ、言えねぇよな…
俺は「いや…」と首を横に振った。
隆也の話で、俺たちがタイムスリップしてた数日が、こっちでは1日しか経ってないことが分かる。
「…なぁ、優希…」
「ん?」
「…お前、本当はずっと…」
隆也が何か言いかけた時…
「優希!」
俺たちを見つけた仕事帰りの奈々が、走ってくるのが見えた。
「奈々…」
隆也は話を止めて呟いた。
「……奈々、ずっと心配してたぞ。」
涙混じりに、駆け寄ってきた奈々。
複雑だった。
……早く、美咲のとこに戻らなきゃ。……
奈々に心配かけてたことより、俺は、美咲を想って焦ってたのだから。
あの時代に、美咲を一人にしてしまったことだけが、気掛かりで仕方なかった。
その頃…
「優ちゃん!…優ちゃん!!」
「…ん………咲…?」
「良かった。怪我してない?大丈夫?」
「私は…」
「…私?……倒れてきた木材の下敷きになって…」
優太朗の口調に違和感を覚えた美咲は、嫌な予感に一気に鼓動が早くなるのを感じた。
「…そうか…大丈夫だ。…咲、もう、私の心配など、隆康殿の前でしてはならない。」
「…優……っ…太朗様…?」
ドクッと一つ大きな音が身体の中から聞こえた。
視線を逸らして俯く優太朗…
美咲にはすぐに分かった。
目の前に居るのは、"優ちゃん"じゃない。
「…嘘………。一人になっちゃった…」
茫然とする美咲…
消え入りそうな声は、心配して駆けつける人々の声にかき消されたのだった。
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