ポケットに隠した約束

Mari

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第二章

複雑度上昇中

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「お姉ちゃん、これ、どう思う?」

一ヶ月後に結婚式を控えている妹、柚希(ゆずき)。
もちろん担当プランナーは私だ。
今日は席札を手作りすると言って、なぜか私のアパートに来ている。
せっかくの休日なのにと思いながら…
正直ホッとしてた。
一人で居ればどうしても晃平のことを考えてしまいそうだから。

「あ、いいんじゃない?可愛い」
「良かった!全員分付けちゃお」
ワンポイントで天使のモチーフを付ける柚希は、近付く結婚式に胸踊らせてるようだ。


「ちょっとひと休みする?」
そう言って私はキッチンに立つ。
すると、作業をしながら柚希が言った。
「晃平さん、元気?」

ガシャンッ…
動揺して思わずコーヒーカップを落としそうになる。

「ちょ、大丈夫?」
「大丈夫、割れてない」

いきなり、なんて不意打ちなの…

「この前、お姉ちゃんのサロンに行く途中、知らない女の人と歩いてるの見たんだけど」
「あぁ…。結婚するんだって」
「…ふーん…そっか」

そう言って柚希は沈黙する。

コーヒーを二人分煎れて一つ柚希に手渡すと、フゥーと冷ましながら柚希が口を開いた。
「彼女、出来ちゃったんだ…?」
「…うん」
「お姉ちゃんは、この三年ずっと待ってたのに…?」

仕方のないこととはいえ、改めて言われるとヘコむ。


「晃平さんとお姉ちゃん、絶対結婚すると思ってたんだけどな」

温かいコーヒーが身体に染み渡っていく。
返す言葉が見つからず、コーヒーの苦さだけが口の中に広がっていった。



翌日出勤すると、莉奈がコソッと耳打ちしてくる。
「昨日、晃平くんの彼女来てたよ」

ドクンと心臓の音が聞こえた。

「どうして?昨日は打ち合わせの日じゃなかったはずだけど…」
「分かんないけど…、瑞希が居ないって知って〝そうですか、また来ます〟って帰って行ったよ」
「…そう」

この前の雪乃の様子を思い出し、何か言いたいことがあるのではと悟る。


「瑞希…」
バツが悪そうに隼人が口を開いた。
「何?どうしたの?」
「悪い。この前…、晃平さんと話してるの、彼女に聞かれた…」
「え…?…聞かれたって…?」
「…結婚まで約束してたのに…って話」

一瞬、頭の中が真っ白になる。

「なんで…そんな…」
「ごめん…」

雪乃が何か言いたそうにしてたのは、きっとこのことだ。
結婚が決まってるとはいえ、やっぱり面白くないだろう。
しかも結婚式まで一年間、その間数回顔を合わせるわけだから…


どうしよう…
ものすごく…気まずい…




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