40 / 51
リクのレモネード
しおりを挟む
この日は、前日と打って変わって晴天だった。俺とルナはいつも通り「おはよう」と言い、一緒に顔を洗って、一緒に歯を磨く。
「今日さ、おじいちゃんが仕事しなくていいって。二人で遊んでおいでって言ってくれたよ。夜のライブの時間には戻っておいでって。」
「そうなんだ。でも、午前中だけでも働かせてもらおうかな。ルナと一緒に働くの楽しいし、俺が作った渾身のレモネード、飲んで欲しい。」
「可愛い後輩のお願いなら聞くしかありませんね。」
「出た、ルナの謎の先輩風!」
「謎ってなにさー!」
俺とルナは笑いあった。言葉を尽くして、沢山話をした。仕事中もずっと話していたから、「働くならちゃんと働け!」とおじいちゃんに叱られた。
いつも通りの日常。
俺とルナの大切な一日。
「あ、おいしい。」
俺が作ったレモネードを飲んで、ルナが言った。
「本当?」
「うん!すごいよ、リク。」
「ルナの教え方が上手いんだと思うよ。」
「まぁね。」
ルナはちっとも謙遜せずニコッと笑った。
ルナの笑顔が好きだ。
笑うと出来る小さなえくぼが好きだ。
ルナが…好きだ。
俺が作ったレモネードは、外から差し込む日差しを反射して、海のようにキラキラと輝いていた。
スノースマイルでの最後の勤務を終えると、おじいちゃんが「少ないが受け取ってくれ」と給料を渡してくれた。
「居候させて頂いていたのに、給料なんて受け取れませんよ。それに俺、明日の朝には…」
「この金でルナに何か買ってやってくれ。」
そう言われ、俺は少し悩んだが、有難く受け取る事にした。
午後、ルナと街へ出かけた。街へ出るのは、初日に一緒に出かけたとき以来で、恋人同士になってからは、初めてだ。
午後一番の温かく優しい風が頬を切る。夏草の香るストリートをルナと並んで歩く。
少し違う歩幅。俺は、ルナに合わせてゆっくり歩く。
「あ、ねぇリク。僕帽子見たい!」
「おー、いいね。」
通りかかった帽子屋さんに入った。
「ルナ、どんな帽子が欲しいの?」
「なんか可愛いキャップが欲しい!」
「あ、これは?」
帽子のツバがチェックになっているオレンジ色の少し派手目なキャップを手に取った。ルナには明るい色が似合いそうだと思ったんだ。俺は、その帽子をルナの頭に被せた。
「わ、大きい…」
帽子がずり落ちそうなるのを、ルナが抑えながら言った。
「ルナの頭が小さいんだよ。」
俺は、笑いながらサイズを調整した。
「…どう?」
少し照れくさそうにルナは俺に聞く。
「うん、すごく似合う。可愛いよ、ルナ。ほら。」
俺は、ルナの後ろから両肩に手を乗せて、鏡の方を向かせた。
「あ、いい感じかも。」
ルナも気に入ってくれたみたいだ。俺は、その帽子をレジに持っていった。店員に「可愛い彼氏さんですね。」と言われた。
「はい、自慢の恋人です。」
と俺は答えた。嬉しかった。
恋人とデートをして、恋人を褒めてもらえて、恋人の為に何かをしてあげられる事が。
その後は、二人で街を散策し、オシャレなお店のテラス席でご飯を食べて、ルナのオススメのお店でジェラートを食べた。
街は、男性同士、女性同士で手を繋ぐカップルが沢山いた。
俺は、この世界が本当に好きだ。
「ルナ、手を繋ごう。」
「うん。」
俺達は、手を繋いで街を歩いた。これが最後のデートだということ、口には出さなかった。俺達は、今この瞬間だけを、ただ精一杯楽しみたかった。
「今日さ、おじいちゃんが仕事しなくていいって。二人で遊んでおいでって言ってくれたよ。夜のライブの時間には戻っておいでって。」
「そうなんだ。でも、午前中だけでも働かせてもらおうかな。ルナと一緒に働くの楽しいし、俺が作った渾身のレモネード、飲んで欲しい。」
「可愛い後輩のお願いなら聞くしかありませんね。」
「出た、ルナの謎の先輩風!」
「謎ってなにさー!」
俺とルナは笑いあった。言葉を尽くして、沢山話をした。仕事中もずっと話していたから、「働くならちゃんと働け!」とおじいちゃんに叱られた。
いつも通りの日常。
俺とルナの大切な一日。
「あ、おいしい。」
俺が作ったレモネードを飲んで、ルナが言った。
「本当?」
「うん!すごいよ、リク。」
「ルナの教え方が上手いんだと思うよ。」
「まぁね。」
ルナはちっとも謙遜せずニコッと笑った。
ルナの笑顔が好きだ。
笑うと出来る小さなえくぼが好きだ。
ルナが…好きだ。
俺が作ったレモネードは、外から差し込む日差しを反射して、海のようにキラキラと輝いていた。
スノースマイルでの最後の勤務を終えると、おじいちゃんが「少ないが受け取ってくれ」と給料を渡してくれた。
「居候させて頂いていたのに、給料なんて受け取れませんよ。それに俺、明日の朝には…」
「この金でルナに何か買ってやってくれ。」
そう言われ、俺は少し悩んだが、有難く受け取る事にした。
午後、ルナと街へ出かけた。街へ出るのは、初日に一緒に出かけたとき以来で、恋人同士になってからは、初めてだ。
午後一番の温かく優しい風が頬を切る。夏草の香るストリートをルナと並んで歩く。
少し違う歩幅。俺は、ルナに合わせてゆっくり歩く。
「あ、ねぇリク。僕帽子見たい!」
「おー、いいね。」
通りかかった帽子屋さんに入った。
「ルナ、どんな帽子が欲しいの?」
「なんか可愛いキャップが欲しい!」
「あ、これは?」
帽子のツバがチェックになっているオレンジ色の少し派手目なキャップを手に取った。ルナには明るい色が似合いそうだと思ったんだ。俺は、その帽子をルナの頭に被せた。
「わ、大きい…」
帽子がずり落ちそうなるのを、ルナが抑えながら言った。
「ルナの頭が小さいんだよ。」
俺は、笑いながらサイズを調整した。
「…どう?」
少し照れくさそうにルナは俺に聞く。
「うん、すごく似合う。可愛いよ、ルナ。ほら。」
俺は、ルナの後ろから両肩に手を乗せて、鏡の方を向かせた。
「あ、いい感じかも。」
ルナも気に入ってくれたみたいだ。俺は、その帽子をレジに持っていった。店員に「可愛い彼氏さんですね。」と言われた。
「はい、自慢の恋人です。」
と俺は答えた。嬉しかった。
恋人とデートをして、恋人を褒めてもらえて、恋人の為に何かをしてあげられる事が。
その後は、二人で街を散策し、オシャレなお店のテラス席でご飯を食べて、ルナのオススメのお店でジェラートを食べた。
街は、男性同士、女性同士で手を繋ぐカップルが沢山いた。
俺は、この世界が本当に好きだ。
「ルナ、手を繋ごう。」
「うん。」
俺達は、手を繋いで街を歩いた。これが最後のデートだということ、口には出さなかった。俺達は、今この瞬間だけを、ただ精一杯楽しみたかった。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。


幽閉された美しきナズナ
不来方しい
BL
控えめで目立たない准教授と生徒が恋に落ちます。
連れ子として華道の家に入ったのは、大学生の藤裔なずな(ふじすえなずな)。慣れない生活の中、母と新しい父との間に子供ができ、ますます居場所を失っていく。
居場所を求めて始めたアルバイトは、狭い和室で自由恋愛を楽しむという、一風変わったアルバイトだった。
客人としてやってきたのは、挙動不審で恋愛が不慣れな男性。諏訪京介と名乗った。触れようとすれば逃げ、ろくに話もしなかったのに、また来ますと告げて消えた彼。二度と会わないだろうと思っていた矢先、新しく大学の研究グループに加わると紹介されたのは、なずなを買ったあの男性だった。
呆然とする諏訪京介を前に、なずなは知らないふりを貫き通す──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる