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ライブ
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※リク視点
「そうそう、リク。今夜ライブやるんだ。」
夕方からの開店準備をしながらルナが言った。
「ライブ?え、やるって?」
「僕が唄うの。おじいちゃんがギター。」
「そうなの!?すごいじゃん。どこで?」
「ここだよ。たまーにやってるんだ。結構評判いいんだよ?今夜はお客さん多いんじゃないかな。」
そういうイベントもやってるんだ。ていうか、おじいちゃんギターも弾けるのか。
「ルナ歌上手だから、評判いいのも頷けるよ。」
「ありがとう。なんか照れる。あと一時間だから早く準備しちゃお!」
ルナはなんだか嬉しそうだった。人前で歌うのが好きなんだろうなと思った。ルナの嬉しそうな顔は本当に可愛くて、永遠に眺めていてもきっと飽きないだろう。
1時間後。
ルナの言う通り、店内は多くのお客さん(おじいちゃん曰く全員お得意さんらしい)で満席になった。マイクを持ったルナとギターを持ったおじいちゃんは店の中央に立つ。
「皆さん、いつも私達のお店『スノースマイル』をご愛顧頂きまして、ありがとうございます。」
と、おじいちゃんがよく通る低めの声で切り出し、お客さん達がワーッと拍手する。俺は、空いてるカウンター席に座らせてもらっていた。
「今日は新しい曲考えたから、それ唄うね!」
ルナが言った。アイドルみたいだな。なんて思っていると…
「ルナちゃん!!今日も可愛いよ!」
「ルナちゃんの歌声をまた聴けるのを心待ちにしてたぞ!」
「こっち向いて笑ってくれ~!」
客席(ほとんどおじさん)から黄色い声援が飛ぶ。どうやら本当にアイドルだったみたいだ。
「へへ、ありがとう。ちょっと恥ずかしいけど、僕が歌詞を書いて、おじいちゃんがメロディを作ってくれたんだ。じゃあ唄うね。」
ゆったりとしたギターのアルペジオから演奏が始まり、ルナは静かに口ずさみ始めた。
「あ…」
それは、あの日海辺で唄ってくれた歌だった。
男の子にしては高めの声。
透明感があって、美しい声色。
聴いているだけで涙が流れそうになる。
ルナが作ったという歌詞。
『人って悲しい生き物なのかな』
『月だけが僕の心を照らしてくれる』
『僕を幸せに出来るのは、僕だけだ』
そんなワードが続く、なんだか少し切ない歌詞だった。
おじいちゃんが「ルナの心の傷を癒して欲しい」と前に言っていた。
過去、ルナに何があったのか俺は知らない。聞くべきじゃないと思っているから聞いていない。
ただ、いつも笑顔のルナからは想像出来ないような辛い事があったのかもしれない。小さな体に、大きなものを背負っているのかもしれない。
そう思っただけで、今すぐにでもルナを抱き締めたい。そんな気持ちにさせられた。
歌が終わると、店内は拍手の嵐が巻き起こった。
鳴り止まない拍手の中、ルナは嬉しそうな顔をして、俺の方を向いてニコリと笑った。
「そうそう、リク。今夜ライブやるんだ。」
夕方からの開店準備をしながらルナが言った。
「ライブ?え、やるって?」
「僕が唄うの。おじいちゃんがギター。」
「そうなの!?すごいじゃん。どこで?」
「ここだよ。たまーにやってるんだ。結構評判いいんだよ?今夜はお客さん多いんじゃないかな。」
そういうイベントもやってるんだ。ていうか、おじいちゃんギターも弾けるのか。
「ルナ歌上手だから、評判いいのも頷けるよ。」
「ありがとう。なんか照れる。あと一時間だから早く準備しちゃお!」
ルナはなんだか嬉しそうだった。人前で歌うのが好きなんだろうなと思った。ルナの嬉しそうな顔は本当に可愛くて、永遠に眺めていてもきっと飽きないだろう。
1時間後。
ルナの言う通り、店内は多くのお客さん(おじいちゃん曰く全員お得意さんらしい)で満席になった。マイクを持ったルナとギターを持ったおじいちゃんは店の中央に立つ。
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と、おじいちゃんがよく通る低めの声で切り出し、お客さん達がワーッと拍手する。俺は、空いてるカウンター席に座らせてもらっていた。
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「ルナちゃんの歌声をまた聴けるのを心待ちにしてたぞ!」
「こっち向いて笑ってくれ~!」
客席(ほとんどおじさん)から黄色い声援が飛ぶ。どうやら本当にアイドルだったみたいだ。
「へへ、ありがとう。ちょっと恥ずかしいけど、僕が歌詞を書いて、おじいちゃんがメロディを作ってくれたんだ。じゃあ唄うね。」
ゆったりとしたギターのアルペジオから演奏が始まり、ルナは静かに口ずさみ始めた。
「あ…」
それは、あの日海辺で唄ってくれた歌だった。
男の子にしては高めの声。
透明感があって、美しい声色。
聴いているだけで涙が流れそうになる。
ルナが作ったという歌詞。
『人って悲しい生き物なのかな』
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そんなワードが続く、なんだか少し切ない歌詞だった。
おじいちゃんが「ルナの心の傷を癒して欲しい」と前に言っていた。
過去、ルナに何があったのか俺は知らない。聞くべきじゃないと思っているから聞いていない。
ただ、いつも笑顔のルナからは想像出来ないような辛い事があったのかもしれない。小さな体に、大きなものを背負っているのかもしれない。
そう思っただけで、今すぐにでもルナを抱き締めたい。そんな気持ちにさせられた。
歌が終わると、店内は拍手の嵐が巻き起こった。
鳴り止まない拍手の中、ルナは嬉しそうな顔をして、俺の方を向いてニコリと笑った。
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