レモネードのように。

はる

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ピアノ

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そんなこんなで店は昨日よりも繁盛し、てんやわんやしているうちにランチの時間が終わった。ルナと仕事をするのは楽しかったし、忙しなく動いているうちに昨日の気まずさも吹き飛んでしまった。

夕方の営業まで時間が空き、俺はなんとなく店内をブラブラしていた。

実は、気になっていたものがある。店の奥の方に置いてあるアップライトピアノだ。

「ルナ、このピアノって誰が弾くの?」

「おじいちゃんがたまに弾くよ。でも最近は全然弾かなくて、放置しちゃってる感じ。」

俺は、少し考えてから聞いた。

「弾いてもいい?」

「えっ、リク、ピアノ弾けるの?」

「小さい頃から習ってたんだ。趣味程度だけど。」

「リクって、もしかして元の世界では名家の出身とか?」

「いやまさか!どうしてそうなるの?」

「うーん、こっちの世界だと子供の頃からピアノをやってる人って、貴族みたいなイメージがあるんだよね。」

そうなのか。なんか面白いな。俺はピアノの前に座り、蓋を開けた。確かに暫く使われていなかったようだ。ホコリかぶってる。

少し鍵盤を払うと、息を吸って、弾いてみた。ピアノを弾くのは久しぶりだ。

簡単に弾いてみて、「ふぅ」と一息つく。

「すごい!!!!」

ルナがひときわ大きな声をあげて拍手をしてくれた。俺は、声の大きさにビクッとしながら「あ、ありがとう」と礼を言う。

「リクのピアノすごく良かった。なんて言う曲なの?」

「『美女と野獣』だよ。知らないと思うけど…。」

「知らない。でも、素敵な曲。」

ルナが目を輝かせている。軽い気持ちで弾いたのに、そんなに喜んで貰えるなんて思わなくて胸がいっぱいになる。

「ルナの歌の方が素敵だよ。何から何まで良くしてもらっているから、お礼の意味も込めて弾いてみたんだ。」

「もっと弾いてよ!」

ルナにせがまれ、この後、色んな曲を弾いた。その度にルナは絶賛してくれる。とても嬉しかった。こんな俺のたったひとつの特技が認められた気がして、しかも好きな人にこんなに褒めてもらえて、これ以上嬉しいことは無い。

この時間がずっと続けばいいな、そう思った。
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